森林浴散歩にはリラックス効果あり!
森の中を歩くと、スッキリと落ち着いた気分になれる……そう感じた経験のある人は多いと思います。
例えば、豊かな葉の色や木漏れ日を見て、鳥のさえずりを聞き、木々に触れ、土の香りをかぐ。そうすることで、視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった四つの感覚が刺激され、リラックス効果が得られるのです。このことは実験でも明らかにされており、リラックス状態を示す副交感神経の活動は、森林を歩いた時、都市に比べて72%高まったと報告されています。
そうはいっても、遠くまで出かけるのは大変……そんな人に訪れてほしいのが東京都江東区にある「海の森公園」です。東京2020オリンピック競技大会で馬術やカヌーの競技会場として注目を集め、その後の整備を経て2025年3月、一般向けにグランドオープン。都心にいながら広々とした森を散歩できると話題のスポットです。
ごみの島から生まれ変わった「海の森公園」
東京湾に浮かぶ自然豊かで広大な面積を誇る森、それが海の森公園です。園内では親子やペットを連れた人たちが散歩を楽しむ姿が見られましたが、実はここ、もともとは“ごみの島”だったのです。
近代化の進んだ明治時代以降、東京湾では港や工場を作るために埋め立てが行われてきました。人口の増加に伴いごみの量も増え新しい処分先が必要になり、ごみの島がつくられたのです。1973年から87年にかけて、東京23区内で発生した1230万トンのごみと建設発生土などを埋め立ててできたごみの山は、高さ30mにも及んだそうです。
その後、埋め立てごみの量が減り少しずつごみの山の問題が解消されていく中で、2007年からごみの島をたくさんの生き物が暮らす森にしようというプロジェクトが始まります。このプロジェクトは都内で暮らす人たちと協力して進められ、多くの子供たちも植樹に参加しました。また、かつてはごみの埋め立て地だったことから、リサイクルの視点を大切にし、肥料は都内の公園や街路樹の剪定した枝や葉から作るなどといった工夫が行われています。
さて、公園を中央口から入るとすぐに広がるのは「風の森」です。ここでは、シイやタブノキなど潮風への抵抗性がある海岸性の樹木が植えられています。私が散歩した日も風が強く吹いていましたが、森の中に入ると不思議と静かに過ごせました。木が強風から守ってくれることで他の植物が育ち、昆虫や鳥も集まる多様性のある森づくりに繋がるのです。
「風の森」を抜けて坂を上っていくと「つどいの草原」が広がります。開放感のある広場ではイベントが行われることもあり、休憩できるスペースもありました。さらに進んでいくと「見晴らし坂」にたどり着きます。ここまで来るのに少し歩き疲れていましたが、目の前に広がる景色に心奪われました。
都内で暮らす人たちと一緒に作っていくというコンセプトのもとで生まれた、海の森公園。散歩していると、鳥の巣箱や樹木の名前を書いたプレートなど、手作りと思われる作品がたくさん。園内には小さな子供が遊べる遊具がいくつかあるものの、まだ設備は少なく若い木々もあり、プロジェクトは現在も進行中だという様子が感じられました。将来はどんな姿へ生まれ変わっていくのか楽しみです。
森林浴散歩におすすめの天気って?
森林浴散歩を楽しむなら、やっぱり安定して晴れる日を選びたいですよね。春から初夏にかけては、移動性高気圧が日本付近を覆うため、おだやかに晴れる日が多くなります。こんな日は青空が広がり風は静かで、南から暖かな空気も流れ込み、過ごしやすい陽気。にわか雨のない安定した晴天は、崩れようがないことから「一円玉天気」と呼ばれることもあり、私も大好きな天気です。
ただし、注意したいのは高気圧の縁に当たる場所。こうした所では海からの湿った空気が流れ込みやすくなるため、雲が広がることがあります。また、この時期は日中に気温が上がっても、朝晩の寒暖差が激しくなりがちです。散歩の行き帰りには薄手の羽織り物などがあると便利です。
暑すぎず寒すぎず、快適な陽気になることが多い季節、時には街を離れてみませんか? 森の中を歩いてリフレッシュすれば、前向きな気分になれるかもしれませんよ。
文・撮影=片山美紀
参考
東京都港湾局 海の森公園
https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/kanko/park/uminomori
林野庁 保健・レクリエーション機能
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/con_2_6.html