白みりんを学び、味わい、流山本町を歩く拠点へ

白みりん発祥の地・流山で本格的に製造が始まったのは江戸時代中期のこと。酒造業を営む堀切家の「万上(まんじょう)」と秋山家の「天晴(あっぱれ)」が、二大ブランドとして名をはせた。そしてこの春、「万上」の味を受け継いだ流山キッコーマンの工場のそばに、白みりんと流山の魅力が詰まった体験型ミュージアムが誕生する。

その姿は、本瓦の屋根に黒漆喰をイメージした壁、流山の切り絵作家の作品があしらわれた大きな切り絵行灯(あんどん)が並び、入り口の両脇には「万上」と「天晴」の昔のラベルが揺れる。

容量約5400Lの巨大な仕込み桶で、もろみの攪拌(かくはん)を体験できる。
容量約5400Lの巨大な仕込み桶で、もろみの攪拌(かくはん)を体験できる。

館内は造り酒屋のような梁(はり)が並ぶ迫力ある空間で、流山がみりんの一大産地として発展した歴史の解説や、熟成度合いで変わるみりんの色を比べたり、調味料を嗅ぎ分けたりと、五感で堪能できる仕掛けも多い。

そもそも白みりんとは?という基本から多彩な魅力の解説も。
そもそも白みりんとは?という基本から多彩な魅力の解説も。
純米本みりんや、それをベースに焼酎を加えたリキュールも販売。
純米本みりんや、それをベースに焼酎を加えたリキュールも販売。

要望が多かったみりん工場の見学を模型とデジタル映像でかなえたコーナーのほか、みりんを使ったレシピの紹介やキッチンスタジオで調理体験も実施予定と、生活に生かせる学びがあるのもうれしい。

「『白みりんミュージアム』に集まった人や物の、それぞれの魅力が“醸し合う”場所にできたら」と、館長の川浦智子さん。白みりんを主役に据えて、流山本町エリアの新たな魅力の醸成が今、始まった。

ミュージアム周辺の散策に役立つ案内板。
ミュージアム周辺の散策に役立つ案内板。

流山本町を散歩するなら……

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反射が生むめくるめく世界をのぞきこむ『流山万華鏡ギャラリー&ミュージアム』

緻密に計算された設計で立体的に見える作品も。
緻密に計算された設計で立体的に見える作品も。

「一つ穴をのぞくイメージが強いと思いますが、両目で見るものや大型の作品などさまざまなタイプがあるんです」とスタッフさんが話すように、仕組みやオブジェクトによって模様や光は千差万別。世界的に活躍する流山市在住の万華鏡作家・中里保子さんをはじめ国内外約20人の作家の作品が並び、季節ごとに展示品の入れ替えも。一つ一つのぞいたり回したり、すっかりきらめく世界の虜(とりこ)だ。

住居兼店舗として使われていた明治時代の建物をリノベーション。国登録有形文化財にも 指定されている。
住居兼店舗として使われていた明治時代の建物をリノベーション。国登録有形文化財にも 指定されている。
一部は購入も可能。
一部は購入も可能。
住所:千葉県流山市流山2-101-1/営業時間:10:00~17:00/定休日:月(祝の場合は開館、翌火)
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往時をしのばせる俳句とみりんの出合いの地『一茶双樹記念館』

双樹亭は安政4年(1857)ごろの建物を復元。
双樹亭は安政4年(1857)ごろの建物を復元。

「天晴味醂」で知られる秋元家の5代目・三左衛門は、「双樹」の俳号で俳句もたしなみ、俳人・小林一茶と親交があった。秋元家の新座敷棟を復元した双樹亭は、枯山水の庭園を見渡せる。「縁側に座って静かなひとときを味わってほしいですね」と館長の高橋亨子さん。一茶の句を刻んだ碑や、幕末の商家を再現した建物で白みりんに関する資料も展示。俳句教室やお茶会、邦楽コンサートも開催する。

お抹茶(落雁付き)400円や白玉ぜんざい600円も注文できる。
お抹茶(落雁付き)400円や白玉ぜんざい600円も注文できる。
記念館全体が「小林一茶寄寓の地」として市の指定文化財になっている。
記念館全体が「小林一茶寄寓の地」として市の指定文化財になっている。

取材·文=中村こより 撮影=泉田真人 協力=千葉県観光物産協会