ニューヨークスタイルを踏襲したフレンチトーストのブランチ専門店

JR恵比寿駅東口から恵比寿ガーデンプレイスへ向かっていたが、動く歩道を出てすぐの、並木道が美しいくすの木通りを歩いてみたくなった。小学校や広場などがあるせいか緑が多くて心地よく、飲食店やショップがあっても洗練されていて自然と調和している。テクテクと歩き恵比寿4丁目交番の角からビール坂に入ると、レストラン『MERCER BRUNCH EBISU』が見えて足を止めた。恵比寿らしいたたずまいのオシャレなレストランだが、カフェ利用もできる。

格式が高そうな雰囲気に少し緊張しながらドアを開けて中に入ってみた。

外観はモノトーンで統一されたおしゃれなビル。1、2階はレストラン、3階は貸切フロアとなっている(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。
外観はモノトーンで統一されたおしゃれなビル。1、2階はレストラン、3階は貸切フロアとなっている(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。

店内に入ると、それぞれのテーブルで女性たちがフレンチトーストを食べながら楽しそうにおしゃべりをしている。オープンから17時までは、フレンチトーストのブランチがいただけるのだ。ちなみに店名にも含まれている「BRUNCH(ブランチ)」とは、朝食と昼食を兼ね備えた食事のことで、英語Breakfast(朝食)とLunch(昼食)を合わせた言葉だ。

天井が高い1階のメインダイニングは自然光がたっぷり注ぎ込む。大理石のテーブルやベロアのソファなどが置かれ洗練された店内(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。
天井が高い1階のメインダイニングは自然光がたっぷり注ぎ込む。大理石のテーブルやベロアのソファなどが置かれ洗練された店内(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。

それにしても、フレンチトーストを提供するのにどうして“ブランチ”を選んだのだろう。広報の青池さんに聞いてみた。

「私たちは、ロサンゼルスやニューヨークに実際に滞在し“ブランチ”という食文化に触れ、開放的な空間やゆったりとした広々ソファで過ごした体験から、『こんなに素敵なライフスタイルをぜひとも日本にも定着させたい』と強く感じました。それで2014年1月にここ恵比寿にレストランをオープンさせたんです」

“Room to Room”をコンセプトにした2階は、さまざまなコンセプトで構成された部屋がいくつも用意されている(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。
“Room to Room”をコンセプトにした2階は、さまざまなコンセプトで構成された部屋がいくつも用意されている(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。

現地では平日の昼間からシャンパンを飲んでゆっくりとブランチを楽しむそう。そんなライフスタイルを広め、“日本の食事シーンに新たな文化を根付かせたい”という思いは、食事だけではなく空間や雰囲気などにもこだわり、力を入れたお店づくりにも表れている。

食事+フレンチトーストで甘じょっぱの無限ループに陥る

時計を見るとちょうどカフェタイム。さっそくメニューを見せていただくと、卵料理を中心にした10種から選べるメインの食事とブリオッシュフレンチトーストが2枚つくブリオッシュフレンチトーストブランチ2200円〜と、ブリオッシュフレンチトーストのみ(3枚)1700円、それから前菜やメイン、ドリンクも付いたブリオッシュフレンチトーストブランチコース3000円、自家製パンとメイン料理を味わえるホームメイドブレッドブランチ2000円がある。

おしゃべりしながらゆっくりと楽しめるブランチメニュー。
おしゃべりしながらゆっくりと楽しめるブランチメニュー。

「フレンチトーストは特製のブリオッシュを使っているんですよ。コーヒーやソフトドリンク、シャンパンやワインなどお酒と一緒に召し上がる方も多いです。また、旬のフルーツや食材、季節によって変わるアフタヌーンティー(予約制5800円〜)も好評です」と青池さん。

個人的には塩気のあるメインの料理とほんのり甘いフレンチトーストは合わないんじゃないかと思ったが、メニューを見るとどれもおいしそうだ。

Brioche French Toast Brunchのサーモンのタルタルとアボカドとポーチドエッグ ディルソース2200円(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。
Brioche French Toast Brunchのサーモンのタルタルとアボカドとポーチドエッグ ディルソース2200円(写真提供=MERCER BRUNCH EBISU)。

青池さんがメニューを指差し「なかでもサーモンのタルタルとアボカドとポーチドエッグ ディルソースが1番人気です。ナイフを入れると黄身があふれ出すポーチドエッグと、サーモン、アボカドの王道の組み合わせがフレンチトーストと相性抜群なんです」と話す。

これはおいしそう! 青池さんによれば、塩気のあるメイン料理と甘めのフレンチトーストで甘じょっぱい無限ループに陥るのだそう。

繊維の隅々まで卵液が染み込んだブリオッシュをじっくり中まで焼き上げる

よーく考えた末、初来店ならフレンチトーストのおいしさを十二分に堪能すべし、とブリオッシュフレンチトースト1700円をオーダーした。

特別に厨房に入らせていただくと、シェフが「当店のフレンチトーストは特製のブリオッシュを牛乳、卵黄、砂糖、生クリームなどを加えた卵液に1日以上浸しておきます。それをバターを熱した鉄板の上で焼いたら、次にオーブンに入れてじっくり中まで火を通して焼き上げます」と作り方を教えてくれた。

バットにひたひたになっていた卵液が、ブリオッシュの隅々まで染み渡っている。
バットにひたひたになっていた卵液が、ブリオッシュの隅々まで染み渡っている。
押しつけながらブリオッシュを焼き、均等にこんがりとした焼き色をつけている。
押しつけながらブリオッシュを焼き、均等にこんがりとした焼き色をつけている。

2cmはありそうな分厚いブリオッシュが鉄板にのると、15〜30秒ほどで焼き上がる。ぷ〜んとバターが焦げるにおいがしてきておなかが減ってきた。表面を焼いたらオーブンでじっくり中まで火を通すのだ。

オーブンで焼き上がったフレンチトーストはややふっくらと大きくなっている。
オーブンで焼き上がったフレンチトーストはややふっくらと大きくなっている。
最後に粉糖をかけて出来上がり!
最後に粉糖をかけて出来上がり!

ほどなくしてやってきたブリオッシュフレンチトースト。出来上がりまでを追っていただけに、目の前に運ばれてきたときの感激ったら。まるでレッスン生から見守ってきた推しが武道館のステージに立ったかのようです。

粉糖でナチュラルメイクを施したブリオッシュフレンチトーストさんがついに客席デビュー。
粉糖でナチュラルメイクを施したブリオッシュフレンチトーストさんがついに客席デビュー。

「まずは何もつけずに召し上がってください。次にたっぷりハチミツをかけて、最後に生クリームをつけて食べていただくのがおすすめです」とは、運んできてくれたスタッフの方のアドバイス。では、いざ入刀だ!

弾力があり、軽くナイフを当てただけでは切れない。
弾力があり、軽くナイフを当てただけでは切れない。
ブリオッシュの隅々にまで卵液が染み込んでいる。
ブリオッシュの隅々にまで卵液が染み込んでいる。

フレンチトーストの耳や表面はカリッとしていて、中はふんわり&もっちり。中心部はプリンのようななめらかさもある。続いて濃厚な卵やミルキーな味わいのフレンチトーストにたっぷりハチミツをかけて食べれば夢心地だ。

ミツバチに怒られそうなくらいたっぷりハチミツをかけてみました。
ミツバチに怒られそうなくらいたっぷりハチミツをかけてみました。

口いっぱいに広がるおいしさに頬を抑えながら、さらに生クリームをのせて食べたらもう幸せを通り越して罪悪感が湧いてきた。だけど食べる手は止まらない。脂肪分の違う2種類の生クリームを合わせているので濃厚すぎず、フレンチトーストの味わいとバッチリ調和している。

小ぶりだが厚みがあるので、3枚のフレンチトーストを完食するとおなかにずっしりと来ていた。今回は有意義なカフェタイムが過ごせた。カフェタイムハチミツや生クリームで味変しながらあっという間に食べ切ったから、次はメイン料理との相性を確かめに来よう。

『MERCER BRUNCH EBISU(まーさー ぶらんち えびす)』店舗詳細

住所:東京都渋谷区恵比寿4-23-13 MERCER BLDG.1F/営業時間:11:00〜16:30LO・18:00〜21:30LO(金夜は〜22:00LO、土は11:00〜23:00、日は11:00〜22:30)/定休日:なし/アクセス:JR・地下鉄恵比寿駅から徒歩5分

取材・文・撮影=パンチ広沢