原宿はスナップ撮影が楽しい街
表参道から明治通りを南に下ること数分、1本脇に入った小道にガラス張りの施設が見えてきた。中をのぞいてみると、奥行きのある空間にソファと本棚、一面の壁には写真が展示され、奥のテーブルには黒いコンパクトカメラが並んでいる。散歩のお供にぴったりな、RICOH GRシリーズだ。
「GRはスナップを撮るカメラとして訴求してきました。その根底にあるのは、写真の価値訴求と共に、カメラで写真を撮るという文化を絶やさず広めていきたい、という思いなんです」と話すのは、GR事業部 企画マーケティンググループの市川益子さん。
「この界隈は古い文化と新しい文化が入り混じっていて、ストリートスナップを撮るにもいい場所。写真家の方々はもちろん、デザイナーやアーティスト、作家の方々など、クリエイティブマインドを持った人が多く使ってくださっているGRのコンセプトにも合うのが、ここ原宿でした」
メインストリートから一歩踏み入れれば、ゆったりと時間が流れ、小さな発見がいくつもありそうな原宿の路地裏。カメラ片手に歩いている人もちらほら見かけるエリアだ。
ここでは、GRシリーズの使用感を試したりアクセサリーを購入したりできるほか、GRの修理も受け付けている(現行品のみ)。オンラインでしか購入できない商品もあるため、ここで実際に触れることができるのはありがたい。
また、GRのみならず写真そのものに触れて楽しめるのが『GR SPACE TOKYO』という場所。オープン記念企画展示「森山大道展」では、写真家・森山大道さんの代表作品ほか東京のストリートスナップが展示されている。
写真をじっくりと“観る”ひととき
本棚にある写真集は、吉祥寺の写真集専門書店『book obscura(ブックオブスキュラ)』の店主・黒崎さんが選書したもの。棚ごとにテーマも分かれていて、時代ごとのスナップの歴史や流れがわかるようなラインアップになっている。また、展示中の森山大道さんの写真集の一部は購入することも可能だ。
「写真集ってなじみがない方にはとっつきにくいし、見たい写真があるから1冊買うというのもなかなか難しい。こういう場で気軽に見てもらって、お気に入りの写真や写真集を見つけてもらえたら」と市川さん。
スマートフォンの小さな画面で写真を見ることにすっかり慣れてしまったが、大判の本を広げて眺める写真は全く別物。情報としてではなく作品として写真を観るのはこうもおもしろいのか、ということに改めて気付かされる。
メーカーギャラリーというと少し敷居が高そうに感じてしまうかもしれないが、ここは“写真”という切り口で誰でも入りやすい。ギャラリーとブックカフェ、それぞれのスペースが緩やかにつながっていて、自分の興味の赴くままに写真集をめくったりカメラを試したり……カウンターでドリンクを注文してゆっくり飲みながら過ごせることも相まって、居心地よく落ち着く空間だ。
実際、来場者はGRユーザーからカメラを携えた写真好き、通りかかってふらりと立ち寄る人まで幅広いという。取材日は平日だったが、年齢・性別問わずさまざまな人が足を踏み入れては思い思いに過ごす様子が見られた。
「GRはフィルム時代からのコンセプトがあり、こだわりを持って作っているカメラなので、そういう部分で共通するブランドさんと日本のものづくりを一緒に考えるようなイベント企画などもできたらいいなと考えています」と市川さん。カメラ、写真、アート、ものづくり……可能性はどんどん広がりそうだ。
取材を終え、駅に向かって街を歩き始めると、見える景色が行きとは一味違う気がする。ちょっと立ち止まって、今日の帰り道を写真に収めてみようかな……そんなことを思わせてくれるひとときだった。
『GR SPACE TOKYO』スポット詳細
取材・文・撮影=中村こより