中華×スパニッシュの独創的な料理で新しい味覚の扉が開かれる
JR有楽町駅からホテル『ザ・ペニンシュラ東京』に向かって歩くこと3分。「有楽町電気ビル」1階の、ナチュラルな雰囲気がありながら洗練されたレストランに到着した。取材当日は真夏の暑さでじんわりと汗をかいていたが、日陰に入れば爽やかな風が吹いて心地いい。
風が吹き抜けるテラス席が気に入ったのだが、まずはどんなお店なのかが気になる。店内に入り、サブマネージャーの柴田一人さんに話を聞いた。
「オープンは2019年です。有楽町は多様性の街ということで、新しい食文化を提供すべく、中華とスパニッシュ、フレンチなどさまざまな料理人たちがひとつの厨房で料理を作り出しているんですよ」
有楽町は、実は中華料理の激戦区。『TexturA』はそんなこの地で個性を発揮している。でも、中華とスパニッシュを掛け合わせた料理がどんな味か想像できない……。
「それが、中華とスパニッシュはよく動物性の油を使用することや、旨味に対する考え方など、共通点がいっぱいあるんですよね。とくに奇抜なことを目指したわけではなくて、中華料理とスペイン料理でそれぞれおいしいと思うメニューを作っていったら面白いものができてしまった、ということなんです。特にディナーのコースを食べていただくとわかるんですけど、意外と違和感なく召し上がっていただけると思いますよ」
柴田さんの話を聞いたら、今日は新しい味覚に出合えそうな気がしてきた。後日ディナーコースをいただきに来るとして、ランチはどんなものがあるのかな。
最初はマイルド、ジワジワと辛味&痺れが利いてくる麻婆豆腐
ランチはランチコース6600円〜やプリフィックスコース3500円、ランチプレート1650円がある。バリエーション豊富なランチプレートは、黒豚のカツサンド、麻婆豆腐、海老のアヒージョのほか限定10食のよだれ鶏冷麺などが人気だ。
まだ散歩の途中だから満腹にしないほうがいいかもしれないと思い、ランチプレートの麻婆豆腐をオーダーした。
「ランチの中でも麻婆豆腐は圧倒的な人気なんです。自家製のラー油と山椒油を使っているんですよ」と、柴田さんが使用しているものを見せてくれた。
「ウチの麻婆豆腐は四川風なのですが、スタンダードな作り方だと花山椒のシビレ(麻)や唐辛子(辣)の刺激が強すぎてしまう。食べ進めてから穏やかに刺激が来るようにしたいので、数種類の油を合わせています。そうすると麻、辣だけでなく全体的にバランスがいい味付けになるんです」
早く食べたいです!
柴田さんの話を聞いているうちに料理が出来あがり、外のテラスに運ばれてきた。
まずは麻婆豆腐から。いかにも辛そうに見えるが食べてみるとマイルドな口当たり。唐辛子や花山椒がいい香りだ。だが、食べ進めていくうちに辛さやシビレが利いてきて汗が吹き出してくる。シャキシャキとしたネギや葉ニンニク、酸味と旨味を醸し出す豆鼓が豆腐によく絡んでご飯がすすむ。
自家製ラー油をたっぷり使ったよだれ鶏は、柔らかい鶏肉とゴマやピーナッツ、香菜を酸っぱ辛いタレに和えていただく。ああ、スコーンと抜ける辛さがいい。
「唯一、スペイン風のエッセンスがあるのはサラダですね」と柴田さん。ナスを直火で焼いているから燻感があり、少し酸味のある味付けが口の中をさっぱりさせてくれる。
ボリューム満点なだけでなく、ひとつひとつに工夫が凝らしてあって楽しいランチだった。これは価値ある1650円だなあ。
さまざまなテーマの客席でカジュアルに、ラグジュアリーに
麻婆豆腐を食べて吹き出す汗をハンカチで抑えながら店内に入ると、今更ながら入り口と奥では雰囲気が違うことに気がついた。
すると「入り口からすぐのところにあるのがカジュアルダイニングエリア、奥のテーブルやソファがあるのがレストランエリアです」と柴田さんが説明してくれた。
ランチプリフィックスコースやランチプレートがいただけるカジュアルダイニングは、スペインバルをイメージしたものだそう。
「スペインに行くと、よく入り口辺りが立ち飲みみたいになっていて、奥にはギャルソンがいてコース料理を提供する席が用意されているようなお店があるんですよ。それを日本でやったら面白いんじゃないかな、と」
ほうほう、お店の構成はスペインの色が濃いんですね。
一方、ランチコース6600円〜がいただけるレストランエリアは、床に絨毯が敷かれテーブルにはクロスがかけられてさらにラグジュアリーな雰囲気。特別な日に大切な人との食事を楽しむのにうってつけだ。
ランチプレートの麻婆豆腐がとてもおいしかったし、コース料理はもっと品数が多いからきっと驚く料理がたくさん出てくるのだろう。新しい味覚を見つけに再びこの店を訪れたい。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢