目白は高台、「山の手」なのだ!
駅に着いて左に出て交番を過ぎたらすぐに階段を下る。
「もうすでに坂の街感あるね」
「でしょ。左見て」
坂の下から見上げる擁壁(ようへき)はなかなかの高さ。迫力満点だ。
ちなみに擁壁とは、この界隈のような高低差のある土地で、側面の土が崩れるのを防ぐために設置される壁状の構造物をいうんだけど、こういった擁壁には地中に溜まった水分を排出するための水抜き穴が必要だ。植物を育てる植木鉢とおんなじですね。
ただし、設計によってはどこにあるのかはっきりわかんなかったりする。
東京での高級住宅地というと、ここの目白もそうだけど、渋谷区の広尾や松濤、千代田区の番町、品川区の御殿山(北品川)、池田山(東五反田)とかでしょうか。
いずれも低層戸建ての住宅地なのだが、「高級=地価が高い」というわけです。
ではこれらの街の地形的な共通点はなんでしょうか。
そうです。
いずれも台地。
「山の手」という言い方もありますね。散歩好きのみなさんには言わずもがなですが、東京というのは山の手の台地と、下町の低地でできているんです。
高級住宅地が多い山の手台地なんだけど、今現在の高級住宅地らへんはその昔、江戸時代あたりではどんな町だったかというと、大名屋敷とか武家屋敷とか、いわゆる庶民が住む町ではありませんでした。
なのでかれこれ400年くらい前からずっと「高級な土地」だった、とも言えるかな。
そのあたりの風格というか趣というか、ありますよね。
ナニナニが丘とかホニャララ台という「高台っぽい地名」になっている新興住宅地は数多あるものの、そういった味わいはなかなか醸し出せないっすもんね。
「公示価格」だといくらくらい?
上述のとおり、東京都内でも屈指の高級住宅地というイメージの目白ですが、みなさんに問題です。
地価公示による「公示価格」だといくらくらいでしょうか?
調べるんだったらこちらのサイトが便利です。「不動産情報ライブラリ」という国土交通省のHPだ。面白いのでみなさんも見てみてね。
でね、目白の住宅地の価格だが。1㎡100万円くらいです。
実際の取引価格もこのサイトでわかるんだけど、おなじく100万円くらい。
1㎡100万円ってどれくらい高いのかというと、たとえば全国平均が12万9000円くらいだから、ざっと8倍くらいっすかね。
まぁどこと比べるかで、この手の数値のニュアンスも変わってきます。
ちなみに東京の住宅地平均で比べてみると、都内住宅地の平均が47万6000円くらいだから2倍くらいっすかね。もうちょい絞って豊島区の住宅地平均と比べてれば、豊島区平均が72万9000円だから、20%くらい高いかなという程度になる。
ついでだから高級住宅地の地価公示による「公示価格」対決をしてみよう。
渋谷区の広尾:1㎡150万円くらい
渋谷区の松濤:1㎡160万円くらい(最高で200万円くらい)
千代田区の番町:1㎡300万円くらい
品川区の御殿山(東五反田):1㎡140万円くらい
こうしてみると、目白は高級住宅地のなかでは激安の部類になるのかな?
それでも高いけどね!
都内の散歩コースには「坂」をテーマにしたものも多い。とくに目白のような「山の手」に位置する街での散歩だと、こうして適度なアップダウンが楽しめる。
どうしてアップダウンが楽しいのかな。
もちろん人それぞれなんだろうけど、オレの場合は目線が変わるから、かな。
「このあたりのマンションはやっぱりおしゃれだね!」
「ん、あれ、耐震工事中だね」
目白台には比較的新しい建物が多いみたいだけど、昔からの住宅地ってこともあって古めの建物もちょこちょこあるようだ。
せっかくだし、最近話題になった「南海トラフ地震臨時情報」に合わせて地震の話もしておこうかな。
「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」
自治体のホームページによると、マグニチュード7程度の首都直下地震の発生確率の予想は30年以内で70%程度とのこと。お察しのとおり、東京のウイークポイントは「過度の人口集中」であり、この状況はこれからも進んでいくらしいんだけど、首都直下地震が起きた場合の被害想定額は1000兆円らしい。なんだか額が大きすぎてピンとこないっす(ちなみに南海トラフの被害想定額はまた別ね)。
ほんとに来るかこないかわかんないけど、でもほら、備えあれば憂い無しっていうやつで、ここ目白もそうなんだけど、都内各地で“耐震改修”が行われていたりします。
最近建てられた建物は「新耐震基準」に基づいているからいいとして、ちょっと前の建物だと若干心配だからね。
ちなみに「『新耐震基準』と『旧耐震基準』ってなんだっけ」という人は根岸・入谷・竜泉編をチェックだ。ラブホの“宅建的知見”について大いに語ったあとにちらっと説明してあるから読んでみてくれたまえ。
そこで、写真にあるとおり「緊急輸送道路の閉塞を防ぎ地震に強い東京を実現するため建築物の耐震化を進めています」なのだ。
これはどういうことかというと、「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」というものが施行されている。緊急輸送道路とは読んで字のとおりで、地震によるビル倒壊で緊急輸送道路を塞がないよう、いまのうちに耐震化しておきましょう、という意味だ。
先日の能登半島地震のときも言われていたけど、やっぱり道路って大事なんですよね。
「緊急輸送道路」で検索してみると、どこの自治体のサイトにも「緊急輸送道路は、震災時の救急救命活動の生命線となり、復旧・復興の大動脈の役割を担います。しかしながら、もしも緊急輸送道路の沿道建築物のうち、1棟でも倒壊し、道路を閉塞してしまうと、緊急輸送道路の通行機能を失わせ、広範囲に大きな影響を与えます。このため、条例では、このように耐震化について特に高い公共性を有する緊急輸送道路の沿道建築物について、耐震化を推進していくこととしています」というようなことが書いてある。
まさに文字通り「道路は生命線」となるわけですが、心配は尽きないわけでして。
実際に大地震がくると、道路は確保されていてもそこが大渋滞になっちゃうかもしれないのだ。
都内にどれくらい自動車があるか(登録されているか)というと440万台だそうで、これが災害時に動き出しちゃうと物流トラックも緊急自動車もへったくれもなくなっちゃう。でもいまのところそういった事態を規制するような条例はないそうだ。
さらにさらに心配なのはタワマンっすかね。目白みたいな「山の手」ではあまり目にしないけど、都内のタワマンは埋め立て地に立地していることが多いんです。
埋め立て地となると、宅建試験でも出題される「液状化のおそれ」というのがある。でもね、地盤が液状化してもタワマン自体は倒れない(らしい)です。
だったらなにが心配なのかというと、道路も液状化しちゃうわけだからそのエリアに緊急自動車も物流トラックも入れないので「やばい」んです。なので港区では「港区マンション震災対策ハンドブック」というのを作成していて、住民のみなさんに備蓄を呼びかけたりしています。
もちろん都内はマンションだらけだから同じような心配はどこにもあるわけで、ここ豊島区でも「マンション防災ハンドブック」というものを作成していますよ。
さっきも言ったけど、備えあれば憂い無し。
ご自身の居住地域の防災ハンドブックも、一度はご覧になっておいてくださいね。
自然の中でアップダウン
「なんか急に自然っぽいとこあるね」
「おとめ山公園だね」
「自然がいっぱいで癒やされる〜!!」
「おとめ山の湧水は東京の名湧水57選にも選定されているみたいだよ」
「上まで行ってみよ!」
都内であるものの、こうして緑豊かなのも目白界隈の魅力だ。
深呼吸してみた。
夏の香りが心地よい。エルボーも深呼吸している。
今回は山の手台地だったらアップダウンがいっぱいあった。
アップもダウンも歩くとたいへんはたいへんだけど、視線が変わったり、歩いてみなければわからない風景に出会えたりもする。
アップダウン。
まさにオレとエルボーの関係も、アップダウンだ。
これからも、こうしてエルボーと人生のアップダウンを一緒に歩む。まずはともにアップしていこうじゃないか!
オレはそう決意してエルボーを見た。
あれ?
いない。
「私、もうおりるね」
これはダウンへのカウントダウンなのか……?
取材・文・撮影=宅建ダイナマイト執筆人