夏季もさまざまな商品を展開する『梅屋蒲鉾店』
八王子駅からひとつ隣の西八王子駅。ここからバスで8分ほど進んだ先にマンモス団地として有名な長房団地がある。
1964年に建てられ、現在では多くの棟で建て替えが進んでいる。近くには『カインズ八王子長房店』がオープンし、『スーパーアルプス長房店』も『カインズ』に隣接する敷地へ移動した。古き良き昭和の雰囲気から、すこしずつ若い世帯をターゲットにした場所へと変化している。
『梅屋蒲鉾店』は長房新栄商店街という昔ながらの風情を残す商店街で営業している。初代店主が杉並区高円寺の「愛川屋」(閉業、杉並区高円寺南3-45-15)で修業したあと、1968年に独立した。
現在は初代の息子さんである梅津孝晴さんがお店を引き継いでいる。昔ながらの石臼を使い、日々変化する気温や湿度、原料の状態をみながら手づくりの練り物をつくり続けている。
『梅屋蒲鉾店』は2023年に八王子商工会議所が主催する「八王子お店大賞」を受賞した。エントリー総数547店、投票数は1803票におよび、受賞店は8店のみ。『梅屋蒲鉾店』が地元の人々に愛されていることがよくわかる。
取材時も常連客が次々と訪れていた。なかには『梅屋蒲鉾店』で揚げ蒲鉾を買うのが日課になっているお客さんもいて、注文もせずにお金だけを渡していた。店主も当たり前のように商品を手渡し、阿吽(あうん)の呼吸が生まれていた。
暑くなる時期はおでんの閑散期となり、『梅屋蒲鉾店』でもお休みが多くなる。しかし、2024年からは夏でも楽しめる冷やしおでんを開始し、夏場も販売に力を入れようとしている。
かわいらしいカップのなかに定番のおでん種を入れ、ジュレやコーン、枝豆をトッピングした1日10個の限定商品だ。夏にぴったりの商品で、毎日完売する人気商品になりつつある。
店頭で調理するできたておでんも継続して販売することになった。エアコンで冷えた体をあたためられるだけでなく、夏バテ予防も期待できる。練り物には9種類のアミノ酸をバランスよく含んだ良質なタンパク質が含まれており、免疫力を高めるのだ。
野菜の天ぷらは通年商品だが、手頃な値段で多くの種類を味わえる。そばやそうめんなどと一緒に食べるといいだろう。
『梅屋蒲鉾店』の練り物はお中元にも活用できる。職人がつくる本格的な揚げ蒲鉾を贈り物にするなんて、粋で格好いい。『梅屋蒲鉾店』のECサイトでもオーダーできるので、時間のない方にはおすすめだ。
しっかり味の染みた『梅屋蒲鉾店』の冷やしおでん
さて、ここからは冷やしおでんを詳しく紹介していこう。
カップのなかに入っているおでん種は5種類ほどとなり、それぞれ半分ほどの大きさに切ってある。おやつや晩ごはんのプラス1品として最適なサイズだ。カップは汁が漏れにくい構造になっているが、ジュレをのせているため持ち運ぶ時間を考慮する必要がある。
おでん種はランダムだが、今回は大根、玉子、焼きちくわ、こんにゃく、野菜揚げが入っていた。ジュレのほか、コーンと枝豆が入っており、華やかな印象となっている。
きちんと煮てから冷やしているため、それぞれしっかり味が染みている。すり身は旨味をしっかり残しており、野菜揚げはもやしのしゃきしゃきとした歯触りと人参の甘みがすり身のおいしさを引き立てている。汁も出汁の旨味を感じさせながら、飲み口はふんわりやさしく広がる。
一緒に購入した野菜の天ぷらも紹介しておきたい。こちらも種類はランダムになるが、今回は人参、さつまいも、インゲン、ピーマン、ナス、ちくわの組み合わせだった。
現在は夏野菜が中心のラインアップとなっており、みずみずしさが感じられる。また、焼きちくわがあるのもうれしいところだ。衣はしばらく経ってもからっとしているが、しんなりしても油のしつこさは感じられない。醤油をかけてもいいが、ぜひ天つゆと大根おろしで味わっていただきたい。
ひと口食べれば、店主のやさしさと真摯な姿勢が感じられる
店主の孝晴さんは初代から蒲鉾づくりを教わる機会がほとんどなく、試行錯誤の末に初代がつくる品質に近づけることに成功した。お話をうかがっていると、『梅屋蒲鉾店』を存続させ、お店を手伝ってきたお母様や応援してくれる常連客に報いたいという心やさしい気持ちがひしひしと伝わってくる。
お店の周辺はかつてのにぎわいが失われつつあるが、孝晴さんは多くの人に足を運んでもらえるようにSNS(Instagram:umeyakamabokoten)を駆使してお店の情報を発信し続けている。また、今回紹介した冷やしおでんのほか、魅力的な商品を開発している。
お店に訪れるのはもちろん、ECサイトや楽天市場の八王子市ふるさと納税で商品を手に入れてもいい。一度味わってみれば、孝晴さんのやさしい人柄や練り物に対する真摯な姿勢が伝わってくるはずだ。
夏季の営業時間は『梅屋蒲鉾店』のGoogle Mapsで確認できる。おでかけの前にはご確認いただき、足を運んでもらいたい。
『梅屋蒲鉾店』の基本情報
『梅屋蒲鉾店』
〒193-0824 東京都八王子市長房町551
042-661-7317
定休日:日・月
営業時間:9:30~18:30
Webサイト:https://umeyakamabokoten.raku-uru.jp/、Instagram:umeyakamabokoten
取材・文・撮影=東京おでんだね