木目調を活かした温かみと海外感のある、おしゃれな空間

オフィスビルが立ち並ぶビジネス街であると同時に、大学のキャンパスが点在する学生街でもある港区芝エリア。田町駅や三田駅の周辺には、ビジネスパーソンや学生が行き交い、昼も夜も活気に満ちている。

田町駅と三田駅からほど近い第一京浜道路沿い、札の辻交差点の付近に位置するオフィスビル『G-BASE 田町』。建物の周辺には木々が植えられており、ちょっとした庭園になっている。このビルの1階にある『Jaho Coffee Roaster & Wine Bar』は、7時半(土・日・祝は8時)から営業しているカフェだ。

通りに面したガラス張りの壁に、店舗のスタイリッシュなロゴがあしらわれている。
通りに面したガラス張りの壁に、店舗のスタイリッシュなロゴがあしらわれている。

外観からもわかるように、店内の壁のほとんどはガラス張りで、スタイリッシュな雰囲気。またレジの上に掲げられたメニューのボードをはじめ、内装は海外のカフェを思わせる。それもそのはず、オーナーの木下さんによると、同店はいわばアメリカ発祥のカフェなのだ。

店内に入ってすぐのレジ周り。メニューが英語で記されたボードが、海外感を演出する。
店内に入ってすぐのレジ周り。メニューが英語で記されたボードが、海外感を演出する。

「もともとアメリカのセーラムっていう街で、ビジネスパートナーのアニル・メッツィーニくんが『Jaho Coffee』をつくったんです。そのカフェがすごく素敵で、私も『Jaho』で働きたいなと思ったんですよ。でもアメリカで働くのはビザの関係で難しかったので、私が日本で『Jaho』をやることになりました」

レジ横のカウンター席をはじめ、出入り口付近の座席は1人掛けのカウンターが多い。
レジ横のカウンター席をはじめ、出入り口付近の座席は1人掛けのカウンターが多い。

現在アメリカの『Jaho』は、セーラムに3店舗、ボストンに3店舗、ケンブリッジに1店舗あり、店ごとに特色があるという。日本の店舗も例外ではない。

店内の奥には2~3名掛けのテーブル席あり。写真はいちばん奥にあるボックス席の一つ。
店内の奥には2~3名掛けのテーブル席あり。写真はいちばん奥にあるボックス席の一つ。

「内装はアニルくんのアイデアです。ボストンの『Jaho』の内装をアレンジして、柱とかテーブルが木目調だと温かくてウェルカムな感じがするよね、っていうイメージを日本のデザイン会社さんに伝えて、つくってもらいました」

そこでボストンの店舗の写真を見せてもらうと、広さはだいぶ違うものの、内装の雰囲気はよく似ている。ボストンの『Jaho』らしさを踏襲しつつ、アレンジを加えたのが日本の店舗というわけだ。

日本のために作った手作りメニュー

内装は、ボストンの店舗がベース。一方でメニューはというと、日本限定のものが多い、と木下さんは語る。

「アニルくんのお母さん、ニコラータさんのレシピを使っているメニューもあって、これはボストンの店でも出しているんですけど、ほとんどは日本オリジナル。サンドイッチとかブレックファーストのメニューは、メッツィーニ親子と一緒に、日本のために作りました。フードはほぼ全部手作りです」

そんなブレックファーストメニューの中でも人気ナンバーワンだという、エッグフランベーグルサンド935円をオーダー。厨房にお邪魔して、調理工程を見せてもらった。

ベーグルをカットするところ。北海道の材料で作られており、モチモチとした食感が特徴だ。
ベーグルをカットするところ。北海道の材料で作られており、モチモチとした食感が特徴だ。

まずはベーグルをカットして、ハンバーガーのバンズのような状態に。そこへバターではなく辛子マヨネーズを塗っていく。

「アニルくんは辛子マヨが好きみたいで(笑)。アメリカには辛子マヨがないから、彼にとっては新しいものなんですよ。日本が大好きな彼が『これを使いたい』って言うから、アメリカンテイストって謳っているわりに、和の食材や調味料を使うメニューが多いんです」

ベーグルに辛子マヨネーズを塗り、エッグフランやハムといった具材を盛り付けていく。
ベーグルに辛子マヨネーズを塗り、エッグフランやハムといった具材を盛り付けていく。

一度は食べてみてほしい、卵料理エッグフランにハマる

続いてエッグフラン、ハム、自家製のドライトマト、そしてチェダーチーズを盛り付けて、オーブンにIN。ところでエッグフランとは、どんなものなのか。

「オムレツの材料を低温調理した卵料理です。プリンとか茶碗蒸しみたいな、プルプルした食感のオムレツなんですよ。卵は鶏を大事に育てている光永ファームさんの“永光卵”を使っています」

さらにドライトマトやチェダーチーズを盛り付けたら、オーブンで数分加熱する。
さらにドライトマトやチェダーチーズを盛り付けたら、オーブンで数分加熱する。

ベーグルにほんのり焼き色がつき、チーズがトロトロになったところで、オーブンから取り出して仕上げの工程へ。レタスやわさび菜など(時季によって変化あり)のミックスリーフをたっぷり盛り、その上にベーグルを添えるようにのせて完成。

チーズがとろけたら、仕上げにミックスリーフを加えてサンドすれば出来あがり。
チーズがとろけたら、仕上げにミックスリーフを加えてサンドすれば出来あがり。

さっそく実食といきたいところだが、忘れてはならないのが自家焙煎のスペシャルティコーヒーだ。

スペシャルティコーヒーとは、豆の品質が高く、その風味特性がカップの中に表現されたコーヒーのこと。また農園からカップまでの道筋が管理されている点も欠かせない。今回はカプチーノ660円を用意してもらった。

カプチーノを淹れてもらう。泡立てたミルクを注ぎながら、ラテアートを描いていく。
カプチーノを淹れてもらう。泡立てたミルクを注ぎながら、ラテアートを描いていく。

「みんなエスプレッソが好きなので、エスプレッソメニューに力を入れています。豆はブラジルにあるダテーラ農園さんのものです。ダブルショットを使って淹れているので、コーヒー感が強めなのが『Jaho』の特徴ですね」

エッグフランベーグルサンドに負けず劣らず、カプチーノも早く味わってみたい。店舗の外にあるテラス席へ移動して、いざ実食。

エッグフランベーグルサンドの具材は、ベーグルからはみ出すほどのボリュームで、食べ応えあり。
エッグフランベーグルサンドの具材は、ベーグルからはみ出すほどのボリュームで、食べ応えあり。

具材がはみ出し放題のエッグフランベーグルサンドにかぶりつく。プルプル&フワフワ食感のエッグフランは、厚焼き玉子のようなやさしい味わい。そこにオリーブオイルがほんのり香る甘酸っぱいドライトマト、クリーミーでコクのあるチェダーチーズといった具材が調和する。もっちりしたベーグルに塗られた、辛子マヨのピリッとした風味とマイルドな酸味もたまらない。

初めて食べたエッグフランに感激しつつ、中煎りのカプチーノをひと口。

キュートなラテアートが目を引くカプチーノ。コーヒー豆のブレンドは、日によって変わることも。
キュートなラテアートが目を引くカプチーノ。コーヒー豆のブレンドは、日によって変わることも。

苦味はなく、かといって物足りなさもまったくない、香り高くて華やかな味わいだ。木下さんが言っていた「深煎りになると苦味が増えていくんですけど、中煎りだと苦いっていう要素にならない」とはこういうことか。そして「コーヒー感が強め」という言葉の意味もよくわかった。

日常に彩りを添える、街に根付いたカフェを目指して

木下さんが田町に『Jaho Coffee Roaster & Wine Bar』をオープンしたのは2018年12月のこと。木下さんに田町という街を選んだ理由を聞いた。

「学生とオフィスで働く人と地元の人が入り混じっていて、セーラムやボストンと似ているなと思ったんです。地元の人とか働く人とか学生さんとか、その街にゆかりのある人に愛されるお店っていうのがテーマなので」

ブレックファーストメニューは、何時でも注文OK。ランチにエッグフランベーグルサンドを食べる人も多い。
ブレックファーストメニューは、何時でも注文OK。ランチにエッグフランベーグルサンドを食べる人も多い。

街に根付いたカフェを目指しているからこそ、ここは「おしゃれして行くレストランみたいな感じではなくて、日常に彩りを添えるぐらいのカフェ」。木下さんがそうおっしゃるとおり、『Jaho Coffee Roaster & Wine Bar』の手作りのフードや自家焙煎のコーヒーは、何気ない1日をちょっぴり豊かにしてくれる。

笑顔で撮影に協力してくれた、スタッフの内田さん。職場のムードメーカー的な存在だ。
笑顔で撮影に協力してくれた、スタッフの内田さん。職場のムードメーカー的な存在だ。
住所:東京都港区芝5-29-11 G-BASE田町1F/営業時間:月~金7:30~21:30LO(フード21:00LO)、土・日8:00~20:30LO (フード20:00LO)/定休日:不定/アクセス:都営浅草線三田駅から徒歩3分、JR田町駅から徒歩4分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=上原純