外はカリカリ、中はジューシーな四日市トンテキ
今回はランチで一番人気の、四日市トンテキ1600円を注文。まずは豚肉を調理するところから見せてもらった。
「中の焼け具合が確認できるのと、豚肉のスジがのこらないよう豚肉をグローブの形にカットしていきます」と調理担当の金村さんが説明してくれた。調理前の豚肉はとても厚い!
フライパンで厚い肉を焼いていく。肉の隅々まで火をいきわたらせるためには火加減がとても重要で、強い火力で焼き上げていくのだそう。ニンニクを丸ごと一緒に炒め、ウスターソースをベースとした特製ソースがたっぷりとかけられる。豚肉は180〜200gとかなりのボリューム。焼きあがったトンテキをみた瞬間、大きさに驚いた。
「肉は最初に切って、ソースを絡めてお箸で召し上がるとさらに食べやすくなりますよ」と妻鳥さんがアドバイスをくれる。
ひと切れ口に入れると……うまい!
豚肉はとても柔らかく、甘みが口の中で広がり溶けてしまうような食感で、独特の脂身のしつこさもない。ニンニクの香ばしさと特製ソースとのコラボで、肉の旨味はさらに大きく広がっていく。そしてなにより、ジューシーでペロリと食べられてしまうのだ。あっという間に完食!ちなみにランチタイムならご飯や味噌汁、キャベツまでおかわり自由だ。
四日市トンテキに使用している豚肉は、千葉県産の林SPFのロースと国産ブランドポーク。脂が甘く、肉は柔らかくきめ細かい。また焼き上げた時の肉のジューシーさも特徴。
お米は長野県産の八重原米(コシヒカリ)、みそ汁に使用している味噌は長野県の武石地域の物を使用しているという。
「どうしても原価があがってしまいますが、おいしい料理を提供したいという思いで、できるだけ価格を抑え提供しています」と妻鳥さん。
四日市トンテキを全国区にしていきたい!
四日市出身で、子供の頃から四日市トンテキを食べていたという金村さんは、四日市のソウルフード、ご当地グルメとして大人気だったトンテキは絶対に東京でも人気になるはず!と確信していた。
「これと決めたら一つのことを愚直にやっていく。技術と経験があるから、あきらめずに続けていく。あきらめてしまうから失敗という結果で終わってしまうんです。トライしつづけていけば、成功に近づいていけるんですよ。僕はそんな思いでお店をつづけていました」
いまは行列ができる人気店だが、オープン当初は閑古鳥が鳴いていた、と妻鳥さん。「オープン当初は暇すぎて本を読んでいたくらいでしたが、トンテキをあきらめようという気持ちはありませんでした」。
2011年にオープンして13年。やっと手ごたえを感じ始めたという。
今は、全国にこの味を届けるための販売方法を構想中だと金村さんが教えてくれた。「四日市トンテキを全国区に、日本のソウルフードとして全国に広めていきたいという夢があるんです。冷凍真空保存することで、どこでも誰でも調理できる形にして、『食堂酒場グラシア』の四日市トンテキの味を誰もが楽しめるような仕組みを作り始めています」
「食材がいいので、冷凍してもおいしい四日市トンテキを提供できるんですよ」と、妻鳥さんの思いも熱い。
たしかに三重県の地元では有名でも、まだその名は浸透していない四日市トンテキ。
しかし、二人の思いが形になって『食堂酒場グラシア』の四日市トンテキが全国で食べられるようになる、そんな日も近いのかもしれない。
取材・文・撮影=アサノカツヒト