毎日通いたくなる、まるでセカンドリビング

長らく東京で暮らしているが、初めて地下鉄千代田線の代々木公園駅に降りた。この辺りは渋谷と新宿の間にある閑静な住宅地だ。うっとおしい霧雨を振り払いながら細い路地裏を歩くこと2分、カフェ『nephew』にたどり着いた。

店頭にオリジナルグッズがあり、アパレルショップに見えるがれっきとしたカフェである。
店頭にオリジナルグッズがあり、アパレルショップに見えるがれっきとしたカフェである。

ベージュの外観に爽やかなブルーが目を引く。ドアの奥を覗いてみると、店頭にはTシャツなどのオリジナルグッズが販売され、天井が高くおしゃれなタイルのカウンターが広がっている。おいしそうな朝食が食べられそうな気がして中に入ってみた。

キッチンと客席を隔てる、曲がりくねったカウンターがまるで小川のようで面白い!
キッチンと客席を隔てる、曲がりくねったカウンターがまるで小川のようで面白い!

店内の隅々に洗練された要素が盛り込まれているけど機能的でもある。ここはいったいどんなお店なんだろう。マネージャーの後藤風花さんに話を聞いた。

「 “通いたい店 Every day All day”をコンセプトに、2021年4月にオープンしました。母体はグラフィックデザインなどの会社なんですよ」

ほほう、どうりでおしゃれなわけだ。戸建て住宅をリノベーションした店舗で、ちょっと路地に行かないと見つけられないという立地も面白い。

大きな窓とベンチシートがまるで電車のボックス席みたい。
大きな窓とベンチシートがまるで電車のボックス席みたい。

「朝8時にモーニングプレートからはじまり、10時からはカフェタイム。焼き菓子とコーヒーが楽しめます。そして、一度お休みを挟んで夜7時からはディナー。小皿料理からメインまでお酒と一緒にしっかり食べられるメニューがあります。それで22時からはバータイムと、1日を通していろいろなシーンで使えるお店なんですよ」

カウンターの青いタイルやテーブルの白いタイルは、昭和の頃のキッチンで一般的に使われていたものだそう。店内の差し色にもなっている。
カウンターの青いタイルやテーブルの白いタイルは、昭和の頃のキッチンで一般的に使われていたものだそう。店内の差し色にもなっている。

地元のお店を大切にしたいという近隣の方の応援もあり、常連さんが多いという。後藤さんは、「店がオープンした2021年は外出しにくい時期だったのでいろいろ大変でしたが、みなさんに支えられてここまでやってこられました」と話す。

おしゃれだけど肩肘を張らないリラックス感は、ゆったりとした空間が持つ雰囲気のおかげかな。

ゆったりとした2階はカフェタイム以降に解禁となる。
ゆったりとした2階はカフェタイム以降に解禁となる。

海外のモーニング文化をこの店から発信したい

オープンから3年経ち、新たな試みとして2024年2月よりモーニングをスタートした。モーニングの発起人はマネージャーの後藤さんだ。「私は海外旅行するとき、朝5時ぐらいに起きてお散歩して朝ごはんを食べ、午後には何もせずのんびり過ごしているんですよ。訪れたいろいろな国で、朝から昼のみ営業しているお店に出合い、各国の朝食カルチャーに憧れを抱いていました」

旅慣れた人はあえて何もしない時間を作り現地のリアルなカルチャーを楽しむのだろう。いいですよね、ビーチで寝そべって1日文庫本を読むとか。

マネージャーの後藤風花さん(中央)、スタッフの渡辺生海さん(左)と荒木海渡さん(右)。
マネージャーの後藤風花さん(中央)、スタッフの渡辺生海さん(左)と荒木海渡さん(右)。

「そういうカルチャーをこの店にも導入したいと思っていたら、実はスタッフの渡辺さんや荒木さんも“モーニングをやってみたい”という思いを持っていたんです」と後藤さん。アルバイトも含めて5名のスタッフがいるが、モーニングタイムは3人が中心になって担当している。

モーニングタイムは1階のみ使用可。窓際に置かれた様々な色のボトルが朝日に照らされてキレイだ。
モーニングタイムは1階のみ使用可。窓際に置かれた様々な色のボトルが朝日に照らされてキレイだ。

色とりどりで食欲UP! ヘルシーなオープンサンド

いよいよ本題のモーニングをいただきましょう。メニューを見るとオープンサンド、サラダとスープ、ドリンクが付いたモーニングプレートがお得でいちばん人気らしい。

モーニングはオープンサンドをメインにサラダやドリンクなどを組み合わせられる。
モーニングはオープンサンドをメインにサラダやドリンクなどを組み合わせられる。

「オープンサンドは3種類あって、アボカドスマッシュのオープンサンド 大葉ジェノベーゼソースと、サーモンと彩り野菜のオープンサンド クリームチーズのタルタルソースが定番。あとひとつは月替わりです」と、後藤さんが解説してくれた。

カンパーニュをオーブンで焼く。
カンパーニュをオーブンで焼く。

それを参考に、アボカドスマッシュのオープンサンド 大葉ジェノベーゼソースのモーニングプレート1800円にポーチドエッグ100円をトッピング。

カンパーニュは表面に霧吹きで水を吹きかけてからオーブンに入れる。そうすることでカリッと焼き上がりつつ中はしっとりするのだ。焼き上がるまでに、皿にサラダを盛り付ける。

パンが焼けると大葉のジェノベーゼソースとアボカドをのせる。
パンが焼けると大葉のジェノベーゼソースとアボカドをのせる。

「アボカドを半玉くらい使っているのでけっこうボリュームがありますよ。最初はチーズと相性がいいなと思ったんですが、渡辺さんのアイデアで水切りヨーグルトを入れました」と荒木さん。カンパーニュ、大葉、アボカドにヨーグルト!?  聞いただけでおいしそうだな〜と妄想が膨らんでいく。

さらにポーチドエッグをのせ、砕いたクルミをたっぷり。レモンや水切りヨーグルト、ラディッシュ、ディルを飾って完成だ。
さらにポーチドエッグをのせ、砕いたクルミをたっぷり。レモンや水切りヨーグルト、ラディッシュ、ディルを飾って完成だ。

席に着いて待っていると渡辺さんがモーニングプレートを持ってきてくれた。「ナイフとフォークを用意していますけど、手で食べても大丈夫ですよ!」と聞いて、ちょっとホッとした。リラックスしていただきまーす。

朝食をがっつり食べたい派も満足のボリューム感。卓上が優雅すぎる。
朝食をがっつり食べたい派も満足のボリューム感。卓上が優雅すぎる。
まずはポーチドエッグにナイフを投入!
まずはポーチドエッグにナイフを投入!

ポーチドエッグにナイフを入れると卵の黄身が流れ出す。それを一口大に切ったトーストに軽くつけて食べてみた。アボカドとヨーグルト、卵のそれぞれ違ったコクや味わいがありつつも、そこへレモンなどの酸味が相まって予想以上にあっさりいただける。そればかりかカンパーニュの塩気や香りも引き立てている。ところどころに出現するクルミがコリコリとしていい食感だ。

一方で取材当日の月替わりスープ、カブのポタージュにも着手。すりおろしたカブが入った生クリーム仕立てで、カブ本来の甘みや旨味もありつつも濃厚さがある。ちょっと肌寒い朝はこういうスープがありがたい。

取材当日のスープはカブのポタージュ。ひとさじすくって飲むと、上にかけたオリーブオイルがフワッと香る。
取材当日のスープはカブのポタージュ。ひとさじすくって飲むと、上にかけたオリーブオイルがフワッと香る。

セットドリンクのコーヒーについて後藤さんが解説してくれた。

「広島県の瀬戸田にある『オーバービューコーヒー』のスペシャルティコーヒーを提供しています。モーニングプレートは日替わりのコーヒーかラテ、アメリカーノから選んでいただくのですが、プラス料金でほかのドリンクメニューからも選ぶことができます」

ドリンクはコーヒーをチョイス。フレンチプレスで落としたトゥデイズコーヒーは朝の2時間限定で提供する。
ドリンクはコーヒーをチョイス。フレンチプレスで落としたトゥデイズコーヒーは朝の2時間限定で提供する。

しっかり朝ごはんを食べたら、体温が上がってきて元気が湧いてきた。

朝は忙しい! 時間がない! と思っていたけど、早起きしてステキなカフェで朝食を食べたら心と時間にゆとりが生まれました。

まだ小雨が降っているけど時間に余裕があるから散歩がてら渋谷駅まで歩いちゃおうかな。

住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-7-2/営業時間:8:00〜17:00・19:00~24:00(火は8:00〜17:00 金・土・日は8:00〜17:00・19:00~翌1:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄千代田線代々木公園駅から徒歩2分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢