JR両国駅からは徒歩7分、大江戸線の両国駅からは徒歩3分。すみだ北斎美術館のすぐ近くにある、爽やかなブルーの扉が目を惹く店が『地球屋』だ。フランス料理のシェフ宮脇大雅さんと、有名スパイスカレー店の勤務経験がある松尾一輝さんの二人で営業している。
料理にワインを合わせるようにスパイスを配合
『地球屋』のスパイスカレーは、シェフの宮脇さんと松尾さんの二人三脚でつくられる。最初に宮脇さんが食材と調理法を決め、それに合わせて、ソムリエ資格をもつ松尾さんが“料理にワインを合わせるようなイメージで”スパイスを配合する。
このお店のベースはフランス料理。フランス料理の煮込み料理をつくるように、他では味わえない複雑で深い味わいのスパイスカレーを生み出していく。
例えば、塊の牛肉を使うなら赤ワインに2日間漬け込んでから焼き、それを煮込む。ひき肉はすべて自家挽き。塊の肉を自らカットし、塩胡椒や酒を使ってマリネしたものを挽くため市販のひき肉とは旨味が違う。
贅沢の極み!あいがけカレーをいただいた
ランチメニューのカレーは、お肉のカレーと魚介のカレーの2種類。10日前後を目安に食材に合わせてメニューが変わる。辛いものが苦手な人のためにリゾットも用意されている。
この日は、お肉と魚介の両方が楽しめるあいがけカレー1400円をいただいた。お肉はチキンカレー、魚介は自家挽きカジキマグロのトマトクリームキーマだ。
まずは、チキンカレーを一口。チキンの旨味とスパイスの力強い風味を感じて止まらなくなる。ただ辛いだけではない、スパイスの深い味わいが口の中に広がってゆく。
続いて、自家挽カジキマグロのトマトクリームキーマを口に運ぶ。まろやかな味わいかと思って油断していると、飲み込んだあとに口の中が複雑に絡み合ったスパイスの香りと辛さに包まれる。
ただ、ただ、うまい!
皿の中央にはライスが見えなくなるほどのサラダがたっぷりとのせられて、視覚と味覚の両面から魅了された。三浦市直送の野菜は新鮮で瑞々しく、スパイシーなカレーとほどよく調和する。
最初に見た時は、あまりのボリュームに食べ切れるか心配になったが、食べ進めるほどに、スパイスの芳醇な香りと複雑な旨味の虜になり、食べ終わってしまうのが残念な気持ちになるほどだ。
「『地球屋』のカレーは水をほぼ使ってません。ワインと乳製品、トマトと食材のもつ水分とスパイスだけで構成されています。他にも、肉を焼いたフライパンについた旨味をワインを入れて煮溶かす、フランス料理のデグラッセという技法なども使って、旨味の濃さを出しています」
十分に引き出された素材の風味とスパイスの絶妙な調和。最後の一口を食べ終わっても口の中に残る余韻で幸せな気分が続く一皿だった。
地球規模でなんでも取り入れてやろう
フランス料理とスパイスカレーの融合、これはまさに驚きのおいしさだった。この発想の柔軟さは『地球屋』という名前にも現れている。
「和食でもイタリアンでも、面白いものは地球規模でなんでも取り入れてやろうと思っています。ジブリの映画『耳をすませば』に登場するアンティークショップの地球屋みたいに、いろんなものがごちゃごちゃとたくさん置いてあるイメージです」
『地球屋』のスパイスカレーは、「今まで食べたカレーの中で一番おいしい」と言われることが多いという。筆者もこの意見に大賛成だ。もしカレー好きを自認するなら、これを食べないと後悔する。他に類を見ない唯一無二の極上のカレーを味わいに、両国へ足を運んでみてはいかがだろう。
/定休日:火(祝日の場合は翌日)/アクセス:JR総武線両国駅から徒歩7分
取材・文・撮影=村田幸音