大きなおでん鍋が迎えてくれる立ち飲み有名店、『平澤かまぼこ 王子駅前店』

北区の王子駅の目の前にある『平澤かまぼこ 王子駅前店』。25年以上の歴史があり、地元だけでなく立ち飲みマニアにも知られる有名店だ。

北区神谷にある『平澤蒲鉾店』の二代目店主である平澤慶彦さんが平成11年(1999)に始め、現在は以前からお店で働いていたネパール人のラマ・プスカルさんにお店を譲っている。おでんの種は引き続き、平澤さんが作り続けている。

お店の入り口には大きな鍋があり、たっぷりの汁でおでんが煮込まれている。寒い時期には湯気がもうもうと立ち込め、人々は次々と店内に誘い込まれる。

店内は奥に細長く、10名ほどが入れば満席となる。回転は早いので待てばすぐに案内されるが、ゆったり楽しみたいなら開店すぐに訪れるといいだろう。以前は午前10時開店だったが、2024年1月現在は11時に変更されている。

壁には味わいのあるメニューが並んでいる。これらは先代の時代に貼られたものだ。おでんはもとより、かまぼこ、にこごりなど、蒲鉾店らしいラインナップが揃っている。

料理は蒲鉾店ならではラインナップ

席を確保したら、早速飲み物と料理を注文しよう。『平澤かまぼこ』ではオーダーごとに支払いを済ませる都度精算となる。

食べたいおでん種を伝えると、店主が鍋から皿によそってくれる。日本酒は北区の酒造である小山酒造の「丸眞正宗」だ。小山酒造は2018年に廃業したが、現在は遠縁の小山本家酒造が継承している。赤羽の『丸健水産』でも扱っており、おでんによく合う。

どのおでん種もおすすめだが、なかでもはんぺんは必ず味わってほしい。アオザメとヨシキリザメを使った手づくりのもので、東京のおでん種専門店でも作っているお店は限定される。ふわり、ぷちぷちときめ細やかな舌触りだが、すり身のうまみもしっかりしている。

おでん以外の料理も味わっていこう。かまぼこは茹で蒲鉾となっており、一般的な蒸し蒲鉾とは異なり魚のすじのような食感となる。わさびと醤油でいただく、板わさスタイルで提供される。

煮こごりは冬季限定のおつまみだ。サメを原料としており、東京のおでん種専門店では『平澤蒲鉾店』を含め、数軒でしか作られていない。ぷるぷるとしたゼラチン質の喉越しは格別で、とりわけ日本酒との相性は抜群だ。

ネパール人の店主に代替わりしたことで加わったのはチキンカレーだ。さまざまなスパイスの香りに食欲をそそられるが、辛さは控えめで食べやすい。柔らかい鶏肉はうまみと共に口の中でほどけていく。手頃なサイズなので胃にも優しく、ほかの料理と一緒に楽しめる。

東京おでんだねが初めてこのお店を紹介したのは、まだ先代の平澤さんが営業していた2020年だった。そこから店主が代わり、新型コロナウイルスの流行もあって、お店もさまざまな変化があったと思う。しかし、久しぶりに訪れてみると、ほっとする雰囲気や本格的な味はそのまま残っていた。

ネパール人の店主の作るチキンカレーも最高においしかったし、今後も新たなメニューが加わることを期待したい。新旧それぞれの魅力が融合し、いつまでも愛され続けるお店でいてほしいと思う。

『平澤かまぼこ 王子駅前店』の基本情報

平澤かまぼこ 王子駅前店
〒114-0021 東京都北区岸町1-1-10 NUビル1階
03-5924-3773
定休日:月曜
営業時間:火〜金:11:00~22:30(22:00LO)、 土・日・祝:11:00~21:00(20:30LO)
『平澤かまぼこ 王子駅前店』のInstagram

取材・文・撮影=東京おでんだね