繊細なバランスのタルトと、それを引き立たせるコーヒー

『M_ARBRÉ』のおすすめは手作りのフランス菓子。店頭にはさまざまな種類のお菓子が並んでいる。

今回いただいたのは、金柑と柚子のタルト750円。

見た目にも美しいタルト。黒いお皿とタルトの色のコントランスにも魅了される。
見た目にも美しいタルト。黒いお皿とタルトの色のコントランスにも魅了される。

口に入れると、金柑と柚子のフレッシュな甘酸っぱさが口いっぱいに広がるが、そこにタルト生地の甘みが混ざり合う。果実の酸味と、タルトの甘さがちょうどよいバランス。
「タルトのメニューはきまぐれで、昨日まではイチゴのタルトでした」と語るのは、オーナーの植木さん。

『M_ARBRÉ』は姉妹2人で切り盛りしているお店で、お菓子を作っているのは、妹さんだ。タルトの他にも、シューアラクリーム350円などのケーキを食べることができる。メニューはその時々で変わるので、何度も足を運びたくなる。

コーヒーもいただこう。
コーヒーもいただこう。

コーヒー400円もイチオシだ。甘いタルトにちょうどあうビターな味わいで、ケーキの邪魔をしない。

「当店のお菓子は香辛料や香草を使うことも多いのですが、合わせてもおいしく飲めるコーヒーをご用意しています。様々なコーヒーを探した結果、船橋にある『アダチコーヒー』さんにお願いすることにしました」

たしかに、お菓子の味にも合うように深いコクがある。単体で飲んでもとてもおいしいが、ケーキと合わせると、また別の味わいが生まれる。『アダチコーヒー』のコーヒーはカフェオレ450円にも使われており、店のお菓子とよく合うメニューである。

市川に「安らぎの場所」を

店名の『M_ARBRÉ』の由来は何なのだろうか。

「フランス菓子で、チョコレートのテンパリングをするときに使う大理石にちなんだ名前です。英語では“マーブル”といいますね」

『M_ARBRÉ』のメインがお菓子である、ということがよくわかる店名だ。

市川の住宅地の中にひっそりとたたずむ『M_ARBRÉ』。
市川の住宅地の中にひっそりとたたずむ『M_ARBRÉ』。

店のお菓子を一手に担っている妹さんは、長年都内でパティシエをしていた。

「独立するにあたり、地元である市川で誰もが安らげるようなお店を開きたいと2022年3月に開店しました。ありがたいことに、地元のお客さまを中心にたくさんの方にお越しいただいています」

私が取材をしている時も、奥の席でご近所と思われる方がコーヒーを片手に談笑していた。すでにこの店が居心地の良い空間の一つになっていることがよくわかる。

白を基調とした店内は、どこか落ち着く。
白を基調とした店内は、どこか落ち着く。

「民藝」を意識した温かみのある店内

居心地の良い空間を作ることへのこだわりは、店の空間の随所に現れている。例えば、店で使われているコーヒーカップは、大分の小鹿田焼が使われている。

この砂糖入れも小鹿田焼。
この砂糖入れも小鹿田焼。

「私たちは“民藝(みんげい)”が好きなんです。古くから人々の日常で使われていたものです。店内には世界の民藝をちりばめて、温かみのある空間を作ることを意識しています」

店内のインテリアは、たしかにどれも、どこか懐かしさを感じさせるようなもので、温かみがある。

売り場には、インドの草木染のコースターや小鹿田焼などが並べられている。
売り場には、インドの草木染のコースターや小鹿田焼などが並べられている。

お店の入り口近くには、諸国民藝の品々を販売するコーナーもあり、北海道土産としても有名な木彫りの熊や、お面もある。

どれも不思議な魅力を放つものだが、なぜだかお店の雰囲気にマッチしている。お客さんからの評判もよいという。

「熊の木彫りを置いていると、こういう風に飾ってもいいんだね、とお客さまから驚かれたりします(笑)」

たしかに店内の雰囲気に不思議とマッチしている。
たしかに店内の雰囲気に不思議とマッチしている。

お店の空間全体は、とても家庭的で温かく、何度も来たくなるようなものだった。『M_ARBRÉ』はこれからも市川の人々に、温もりを与え続けていくのだろう。

住所:千葉県市川市新田5-5-27 102/営業時間:9:30~16:30LO/定休日:月/アクセス:JR総武線市川駅から徒歩8分

取材・文・撮影=谷頭和希