ランチの人気は、具だくさんの「づけ丼」

この店でランチを味わうなら、「づけ丼」がおすすめ。イカ、タコにマグロ、タイ、ブリ、卵焼きなどパッと目についたものだけでも8種類の具がひしめき合う。彩りも鮮やかで見ただけでも鮮度の良さを感じられる。

醤油を垂らそうとすると、店主の山本明さんに「かけない方がいいよ、辛くなるよ!」と止められた。イカや玉子以外、しっかりと下味がついた「ヅケ」なので、まずは醤油をかけずにいただいて欲しいとのこと。

づけ丼ランチは、この丼の他、小鉢、茶碗蒸し、おしんこ、味噌汁、フルーツがついて1100円。驚きのコストパフォーマンスの良さだ。柚子が香る茶碗蒸しも、熱々で優しいダシ味が効いている。

ランチは、ホワイトボードでその日のメニューを確認しよう。
ランチは、ホワイトボードでその日のメニューを確認しよう。
お昼の定食「づけ丼」1100円。毎朝、市場から新鮮な食材を仕入れており、づけ丼は毎日10食ほど。
お昼の定食「づけ丼」1100円。毎朝、市場から新鮮な食材を仕入れており、づけ丼は毎日10食ほど。

鯛の煮付け定食も、付け合わせに里芋や、かぼちゃ、大根など旬の野菜がゴロゴロと彩る。それぞれしっかりとした仕事が施されていて、彩りも美しい。小鉢もついて満足感も抜群だ。「づけ丼」は数量限定で提供しているそうなので、店内のホワイトボードから消されていたらその日は終了と諦めてほしい。

お昼の定食「鯛の煮付」1100円。しっかり味の染みた煮魚。
お昼の定食「鯛の煮付」1100円。しっかり味の染みた煮魚。

大将は、この道50年のベテラン料理人

店主の山本明さん。厨房は山本さん一人で切り盛りしている。
店主の山本明さん。厨房は山本さん一人で切り盛りしている。

店主の山本明さんは神奈川県の秦野出身。20歳で料理人の道に入り、2023年で70歳。50年のキャリアの始まりは、偶然にも蒲田だった。蒲田の飲食店で働いた後は、伊豆長岡や修善寺の温泉旅館で料理人として経験を積み、川﨑の結婚式場やホテルを経て、蒲田に戻ってきた。自分の店を構えたのも蒲田だった。

蒲田にどんなご縁があったのですか?と聞くと「どんなご縁ってね〜、なんか縁があったんだろうね」と笑われた。温泉地で料理人をしていたことを聞き、様々な小皿で出される料理にどこか旅情を感じるのも、そのせいなのだろうか。1100円のランチで旅行気分を味わえるなんて、こんなお得なことはない。

テーブル席は3卓、それぞれ6席。
テーブル席は3卓、それぞれ6席。

20年以上の常連さんもいる大人の隠れ家

ランチはほかにも、さばの塩焼きや目鯛の味噌漬けなど魚料理を中心に揃えている。うな重松4400円・竹3300円や、うな丼2200円もメニューに並ぶ。ウナギは愛知県一色産。店内で捌いて鰻重や鰻丼にしている(予約制)。

これだけランチも充実していながら、お店の主軸はやはり夜の会席おまかせコースとのこと。季節感を大切に、趣向を凝らした料理を出して接待や会食の席に喜ばれている。名物料理は店内にも写真を飾っている柿のグラタン。中身をくり抜いた柿の器に牡蠣のグラタンを入れた一品だ。

知り合いのカメラマンに撮影してもらった柿のグラタン。
知り合いのカメラマンに撮影してもらった柿のグラタン。

そんな『お料理やまもと』だが、昨年(2023年)1月に山本さんが膝の人工関節の手術を受けて以来、ランチ営業のみで夜は休業していた。

会社の接待や会食などで長年通っている常連さんには、20年以上の付き合いがある方もいるとのこと。夜の営業を待ち望んでいたお客さんも多いことだろう。昔は座敷席だったスペースも、お客さんの高齢化によりテーブル席になった。

普段のランチでちょっと贅沢したい時に足を運びたい一軒だ。

柱時計風の掛け時計に「福寿」の額。昭和レトロが微かに香る。
柱時計風の掛け時計に「福寿」の額。昭和レトロが微かに香る。
住所:東京都大田区蒲田本町2-1-21/営業時間:11:30~14:00・17:00~21:00/定休日:火・日/アクセス:JR蒲田駅から徒歩10分

取材・⽂・撮影=新井鏡子 構成=アド・グリーン