松陰神社前にリニューアルオープンした『や亀や』

『や亀や』の新店舗は移転前と同じ、東急世田谷線の松陰神社前駅にある。駅前の松陰神社商店街から東の路地に入り、住宅街を歩いて1、2分の距離となる。

新店舗の外観は住宅となっているが『や亀や』の大きな看板が掲げられているのですぐに見つかるだろう。

基本は電話やWebサイトからの注文になるが、複数のさつま揚げを詰め合わせたおまかせセットは在庫があるかぎり店舗で直売している。

店主のご自宅の1階を工場(こうば)に改装し、擂潰機(らいかいき)や揚げ釜などさつま揚げ作りに必要な旧店舗の機材を設置している。すでにクラウドファンディングの返礼品としてさつま揚げを製造しており、以前と変わらぬ品質で提供している。

まだ本格的に情報を発信していないにもかかわらず、噂を聞きつけてお客さんがやってくるという。以前から足繁く通う常連客は近くに住んでおり、「近所に移転してくれてうれしい」と喜んでいたという。

クラウドファンディングでもたくさんの人々が参加したといい、『や亀や』の復活を待ち望む声が多かったことがわかる。

店主の八亀さんにとって旧店舗の即時退去は青天の霹靂(へきれき)だったといい、新店舗が完成したとはいえ、いまだ多くの課題が残るという。しかし、今回の移転で『や亀や』が多くの人々に愛されていることを知り、非常に勇気づけられているそうだ。

八亀さんが現在取り組もうとしているもののひとつに「高級おでんセット」がある。具材から出汁までこだわりつつ、手軽に調理できるおでんセットを年末あたりに発表したいそうだ(2023年11月現在)。詳細はまだ明かせないが、続報を楽しみにしていてほしい。

『100人の本屋さん』の入り口に設置されている『や亀や』の無人販売。
『100人の本屋さん』の入り口に設置されている『や亀や』の無人販売。

Webサイト、電話での注文と店舗直売はすでに開始している。また、松陰神社前駅の目の前にある『100人の本屋さん』(東京都世田谷区若林4-25-14)の1階で無人販売も行っている。

『100人の本屋さん』の入り口に設置されている『や亀や』の無人販売。
『100人の本屋さん』の入り口に設置されている『や亀や』の無人販売。

各商品1個から注文できるが、おまかせセットやお土産用箱詰めなどのセットも用意している。

商品の受け取りは店舗と配送が選べ、地方発送も可能だ(箱詰、個別注文も可)。また、店舗の近隣地域に住む高齢客や多忙なお客さんに向けて配達も行う。

店舗受け取り、配達では現金のほか「PayPay」と「せたがやPay(せたPay)」が利用できる。Webで受け取りと配達の注文をした場合も同様で、配送のみクレジットでの決済となる。

以前と変わらぬ味を守り続ける『や亀や』のさつま揚げ

新たなスタートを切った『や亀や』だが、その味は以前と変わらぬ素晴らしいものだ。ここでは店舗直売となるおまかせセットを少しだけ紹介しよう。

おまかせなので日によって種類は多少異なるが、10種類以上のさつま揚げがセットになっている。旧店舗でも個性豊かなさつま揚げを揃えていたが、新店舗でもそれは変わらない。旬の具材を用いた変わり種もあるので、毎回異なる味を楽しめる。

『や亀や』では魚のすり身を日々の変化に合わせて調整し、塩の加減も0.1グラム単位までこだわっている。職人の心意気をじかに味わうなら、そのまま味わってみるといい。もちろんおでんにしてもおいしいが、できたての場合は1日冷蔵庫ですり身を落ち着かせるといいという。

『や亀や』のおすすめはさつま揚げをトースターで温め、おろしポン酢をつける食べ方だ。ただし、八亀さんは好きな食べ方があるのなら、どんな食べ方でも自由だとおっしゃっていた。炙っても、煮ても、異なるおいしさを楽しめるという理由もあるが、なによりもお客さんがおいしいと喜んでくれることがいちばんうれしいそうだ。

『や亀や』は2023年で10周年を迎えたが、創業以来の試練の年でもあった。しかし、誠実に仕事を続けてきた10年があればこそ、多くの人々に支えられて復活を遂げられたといえるだろう。これからも変わらず地元のお客さんを中心に心を配り、さつま揚げづくりに励まれることで、20年、30年と愛されていくに違いない。

『や亀や』の基本情報

『や亀や』
〒154-0023 東京都世田谷区若林3-24-3
03-3411-6699(予約・注文)
定休日:日曜、第1・3・5月曜、月曜の祝日
営業時間:15:00~19:00(売切り次第閉店)
や亀やのWebサイト

取材・文・撮影=東京おでんだね