確かな目利きで選んだフルーツや野菜を使ったレストラン

地下鉄表参道駅B3出口から骨董通りに入り、静かな路地を歩くこと4分。『DEK 青山』にたどり着いた。1階にはウッドデッキを備え、自然の風が通り抜けて心地よさそうだ。

通りの延長にあり、店内へ入りやすい。施設の象徴となる白衣を着た恐竜像は写真左の位置に移動している。
通りの延長にあり、店内へ入りやすい。施設の象徴となる白衣を着た恐竜像は写真左の位置に移動している。

店に入ると野菜や果物が保冷ケースに収められている。どれもハリがあって色鮮やか、見るからに食べ頃だ。まじまじと見つめていると、広報の森未来さんが「1階と2階のレストランでここにある青果を使用しているんですよ」と話してくれた。

おいしそうな旬の国産の果物や野菜たち。購入はできないが店内のメニューで思う存分味わえる。
おいしそうな旬の国産の果物や野菜たち。購入はできないが店内のメニューで思う存分味わえる。

『DEK 青山』の母体は100年もの歴史をもつ青果仲卸の老舗『株式会社 船昌』。これまではスーパーなどとの取引を主にしていたが、飲食店を通じて旬の青果のおいしさを伝えたいと2023年2月に『DEK 青山』をオープンさせた。

「近年、国産のフルーツや野菜離れが進んでいるといわれています。消費があっても、ものによっては安い外国産が選ばれていたりもしますから、ここを通じてたくさんの方に国産青果に触れてもらえる機会を増やし、親しんでもらえたら」と、森さんは話す。

天井が高く、大きな窓から自然の風や光が差し込む。
天井が高く、大きな窓から自然の風や光が差し込む。

アジアで最も青果の流通量が多いとされる大田市場から毎日食材を仕入れ、使用する野菜や果物はプロの目利きが新鮮でその時期にもっともおいしいものを選んでいる。それらを専属のパティシエやシェフが最適の方法で調理してくれるという、まさに精鋭たちが強力タッグを組んでいる!

「肉料理やパスタなどもありますが、野菜と果物がおいしいっていう声をいただくことがすごく多いんですよ」と森さん。筆者も新鮮な野菜や果物が大好物なので、どんな創作メニューが出てくるのか楽しみだ。

豪華客船に乗っているかのようなラグジュアリー気分

DEK=甲板を意味するように、ここで食事をしているとまるで豪華客船の旅に来ているような気分になれる。

クルーズダイニングというテーマでデザインされた内装は、インテリアも船卓を意識しています。床、壁、天井、建具や家具も国内でハンドメイド加工された木材を使用しているんですよ」。

1階のカウンターはゆったりとして心地よい。テーブルは大理石で統一されている。
1階のカウンターはゆったりとして心地よい。テーブルは大理石で統一されている。

『DEK 青山』は2階建の構造になっていて、それぞれにちょっとコンセプトが違う。1階はカジュアルな『DEK KITCHEN』で、大きなアイランドキッチンが特徴的。大きなガラス窓からは自然光がたっぷり注ぎ、天気がいい日は開放的なウッドデッキで食事をするのも気持ちがよさそうだ。オープンから通しで提供されるものもあれば、モーニング、ランチ、カフェ、ディナーと時間ごとに展開するメニューもある。

「見上げたらカモメが……」なんて船上と錯覚しそうなほど解放感があるテラス席。ハッ、ここは青山でした。
「見上げたらカモメが……」なんて船上と錯覚しそうなほど解放感があるテラス席。ハッ、ここは青山でした。

一方、ディナーとアフタヌーンティーのみ営業の2階『DEK DINING』。ディナーコースの内容はジャンルレスで、“船旅で世界をまわる”が料理のコンセプト。

シェフズキッチンでは、調理の様子が見られる。壁のタイルはカリフォルニアからわざわざ仕入れたもの。
シェフズキッチンでは、調理の様子が見られる。壁のタイルはカリフォルニアからわざわざ仕入れたもの。

野菜や果物を軸にしたメニュー展開は1階と同様だが、より豪華な食材を盛り込んだフルコース(1人8000円〜/前日10時までに要予約)がメインだ。中央のシェフズキッチンでは、調理中のライブ感を楽しみながら厳選したワインとともに料理を味わえる。

丸い窓も船室の雰囲気たっぷり。深海を思わせるシェフズキッチンの青いタイルもムード満点だ。

ボックス席になっていてプライベート感もある。
ボックス席になっていてプライベート感もある。

スイーツのような前菜。甘酸っぱくてジューシーなイチゴとミルキーなブラータチーズ

いよいよ実食。店に入った時から密かにロックオンしていたイチゴを使ったメニューをいただいてみたい。

メニューを見ていてパッと目に入ってきた苺とブラータチーズ2400円をオーダーしてみた。「店側としては前菜のカテゴリーなんですけど、イチゴが甘酸っぱくておいしいのでデザートのようでもあります」という森さんの解説にますます興味をそそられた。

ちなみにブラータチーズとは、モッツァレラチーズを袋状にし、そこへちぎったモッツァレラと生クリームを詰めたイタリア発祥のフレッシュチーズだ。

この日のイチゴは店頭にもあった栃木産のとちあいかを使用。
この日のイチゴは店頭にもあった栃木産のとちあいかを使用。

作り方はごくシンプル。トマトのペーストとイチゴを使ったソースを、カットしたイチゴと和えてお皿に移し、エディブルフラワーをトッピング。真ん中にブラータチーズを乗せ、エキストラバージンオイル、ブラックペッパーと塩をかけて完成だ。

真っ赤に熟し粒が揃ったイチゴがおいしそう。
真っ赤に熟し粒が揃ったイチゴがおいしそう。

目利きが選んだイチゴの味はどれほどおいしいのだろう。日々、スーパーの青果売り場で品質を吟味しながらも、いかにお買い得のものを買おうかと趣味と実益を兼ねて鍛錬を積んでいる筆者。一般的な主婦程度にはモノの見る目があるつもり! さあさあ、お手並拝見です。

みずみずしくキラキラと光るイチゴと丸いブラータチーズが圧倒的な存在感!プランテーションアイスティー800円を従えて登場だ。
みずみずしくキラキラと光るイチゴと丸いブラータチーズが圧倒的な存在感!プランテーションアイスティー800円を従えて登場だ。

まずはプランテーションアイスティーをゴクリ。これは沖縄県産ティダパインを煮詰めて作った自家製パインシロップをたっぷり入れたブラックアイスティーで、ほんのりとした甘酸っぱさがありトロピカルなテイスト。

そしていよいよ! ふぅ〜と息を吐き、心を落ち着かせてからブラータチーズにいざ入刀。すると、中からとろ〜りと生クリームが出てきた。これをイチゴにからめていただきまーす。

ブラータチーズにナイフを入れると、こんこんと生クリームが出てきた! わくわくする瞬間だ。
ブラータチーズにナイフを入れると、こんこんと生クリームが出てきた! わくわくする瞬間だ。
ミルキーなチーズと甘酸っぱいイチゴ、スパイシーなブラックペッパーとやさしい塩味。これらすべてをフルーティーなエキストラバージンオイルが包み込む傑作。
ミルキーなチーズと甘酸っぱいイチゴ、スパイシーなブラックペッパーとやさしい塩味。これらすべてをフルーティーなエキストラバージンオイルが包み込む傑作。

モッツァレラは塩気がほとんどないので、トッピングした少量の塩がイチゴの甘さを引き立てる最高のスパイス。塩が合うのはスイカだけじゃないのね! さらにブラックペッパーの華やかな香りがこの一皿を盛り立てている。デザートだけどサラダのような前菜っぽさもあるから、お茶だけでなくシャンパンや白ワインにも合いそう。

「気に入っていただけてよかったです。ブラータチーズに合わせるフルーツは期間限定で、イチゴは春まで楽しめるんですよ。このメニューは見映えもよくて一番人気なんです。同じイチゴでも季節によって味が変わってくるので、その違いも面白いと思います」。

けっこうな量のイチゴが入っている。一般的に売られているパックの半分以上はありそうだが、ペロリと完食。なんだったらおかわりしたいくらい。イチゴのほかには桃やシャインマスカットなど季節のフルーツが登場するらしい。どんな味になるのかな? ブラータチーズと旬の果物との相性をまた確かめにくるしかないでしょう!

住所:東京都港区南青山5-4-41 グラッセリア青山1・2F/営業時間:1F 9:00〜21:00LO(土・日・祝は8:00〜20:00LO)
2F 18:00〜22:00(土・日・祝は17:00〜21:00)※1時間ごとの3部制。要予約/定休日:無/アクセス:地下鉄表参道駅から徒歩4分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢