鉄道ライター 伊原 薫(いはら かおる)
1977年大阪府生まれ。京都大学大学院の都市交通政策技術者。雑誌や書籍、Webニュースなどで執筆するほか、テレビ出演や講演など幅広く活躍する。著書に『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』(交通新聞社新書)など。
南国ならではの風景を列車がゆく「日南線」
●南宮崎~志布志(しぶし)間【宮崎県・鹿児島県】
普通列車は全列車がキハ40系で運転され、2024年からは国鉄時代の首都圏色(タラコ色)に戻された車両が登場。昭和62年(1987)の国鉄分割民営化後から走る、写真のJR九州のオリジナル色(白+青ライン)や、太陽をイメージした日南色(黄色)の車両も見られる。
日向(ひゅうが)灘の絶景や「鬼の洗濯板」、飫肥(おび)の城下町など観光名所も多い。終点の志布志駅近くには、かつて活躍したSLや気動車が保存されている。
国鉄型気動車とSLの共演も「山口線」
●新山口~津和野~益田間【山口県・島根県】
SL「やまぐち号」で知られる同線は、すべての普通列車がキハ40系で運転。SL列車でレトロな雰囲気を味わったあと、国鉄車両を堪能するのもよい。
「山陰の小京都」と称される津和野は水路に鯉が泳ぎ、散策に好適。個人的おすすめは和菓子の「源氏巻」で、お店でしか食べられない作りたてのパリッとした食感が最高だ。
快速列車で“健脚”が楽しめる「津山線」
●岡山~津山間【岡山県】
いまや貴重となった、国鉄型車両の快速運用が残る路線。途中までは旭川沿いを走り、そこから山間部へと入るので、さまざまな車窓が見られる。
駅舎が亀の形をした亀甲(かめのこう)駅をはじめ、金川(かながわ)、福渡(ふくわたり)、誕生寺といった縁起のよい駅名もあり、駅めぐりをする人も。終点の津山駅近くには、国鉄型車両が扇形車庫に集う「津山まなびの鉄道館」がある。
国鉄時代の顔! キハ40系ってなに?
老朽化した一般用気動車の置き換え用として、昭和52年(1977)からの6年間で888両が造られた。キハ40系には、幅広の車体にボックスシートを装備し、運転席を両端に設けたキハ40形と片側のみに設けたキハ48形、客扉を車体中央に寄せてデッキをなくしたキハ47形などがある。
運用エリアに応じて暖地形、寒地形、極寒地形があり、全国の非電化路線で幅広い活躍を見せたが、JR東日本とJR東海では全車が引退。他社でも数を減らしている。
異なる車両の乗り継ぎ旅を堪能「播但(ばんたん)線」
●姫路~寺前~和田山間【兵庫県】
姫路~寺前間は103系電車、寺前~和田山間はキハ40系気動車で運転されており、国鉄型車両の乗り継ぎ旅ができる。いずれも大幅なリニューアルが施され、車内の雰囲気は少し変わっているものの、走行音は国鉄時代のまま。目を閉じれば、むかしの記憶が蘇る。
姫路駅付近では姫路城が見えるほか、田畑や山間の風景なども楽しめる。
国鉄通勤型電車の代表・103系
昭和38年(1963)から20年以上にわたり製造された4扉ロングシート車両。形式全体の製造数は3447両で日本最多。山手線や大阪環状線など大都市の通勤輸送で活躍したが、現在はJR西日本の播但線と加古川線、JR九州の筑肥線に残るのみ。
国鉄型車両で関東有数の秘境駅へ「吾妻(あがつま)線」
●渋川~大前間【群馬県】
国鉄時代末期に開発され、東海道本線や東北本線で活躍した211系がいまなお現役。八ッ場(やんば)ダムの建設に伴い新線へと付け替えられた区間があるほか、沿線には温泉地が多く、長野原草津口駅や万座・鹿沢口(かざわぐち)駅は温泉への玄関口として知られる。
終点の大前駅は発着する列車が一日あたり下り4本・上り5本という少なさで、関東有数の訪問難易度が高い“秘境駅”だ。
絶景区間を国鉄型気動車が走る「予讃線」
●高松~宇和島間【香川県・愛媛県】
予讃線のうち「愛ある伊予灘線」という愛称がつけられた伊予市~伊予大洲間の海回り区間は、ほぼ全列車が国鉄型のキハ54形・キハ32形で運転。海が見える駅として有名な下灘駅をはじめ、随所で車窓から絶景が見られる。
伊予大洲駅の南側には大洲城があり、周辺の城下町散策もいい。小豆と米粉や餅粉を混ぜ合わせた和菓子「志ぐれ」も人気。
炭坑エリアの集落を結ぶ路線「日田彦山線」
●小倉~田川後藤寺~添田間【福岡県・大分県】
かつて沿線には炭坑や銅の精錬工場があり、それらの集落を結ぶようにして走る路線。ここで使われているキハ140系はキハ40系をパワーアップ改造したもので、車内はほぼ国鉄時代のままだが力強い走りが楽しめる。
大正4年(1915)の開業当初の駅舎がコミュニティー施設として残る採銅所駅、大規模セメント工場がある香春(かわら)駅など、かつての栄華を伝える駅も。
キハ40系から進化を遂げたキハ140系
分割民営化後、JR各社はキハ40系のスピードアップやメンテナンス性の向上などに取り組んだ。このうちJR九州では、出力が約1.6倍のエンジンに換装した車両をキハ140系に区分。福岡近郊の都市圏輸送で威力を発揮した。
昭和38年(1963)登場の115系が最後の活躍を続ける「しなの鉄道」
●軽井沢~篠ノ井間、長野~妙高高原間【長野県】
信越本線のうち、北陸新幹線の開業によってJR東日本から移管された区間を運営する第三セクター鉄道。このうち軽井沢~篠ノ井間のしなの鉄道線では、全国各地の直流電化区間で幅広く活躍した115系が現役で活躍中だ。
湘南色や横須賀色といった国鉄色の車両もいるが、新型車両への置き換えが進んでいるので、早めに訪れたい。
山岳区間で国鉄車両がいまなお現役「中央本線」
●東京~塩尻~名古屋間【山梨県・長野県・岐阜県など】
信州エリアを中心に211系が活躍中で、朝夕には立川駅まで顔を出す。国鉄時代に製造された初期車も残っており、鉄道ファンからも注目の的。
ボックスシートの車両もあるので、小淵沢駅などで売られている駅弁を手に乗れば旅気分がいっそう盛り上がる。ただし、ロングシート車両と共通で使われており、どちらが来るかは運次第だ。
日本最北のキハ40系活躍路線「道南いさりび鉄道」
●五稜郭~木古内(きこない)間【北海道】
北海道新幹線の開業に伴い、JR江差(えさし)線を引き継いだ鉄道で、施設とともに車両もJR北海道のキハ40系を譲受した。
現在は8両が在籍し、そのうち2両はテーブルなどを設置した観光列車「ながまれ海峡号」に。残る6両はすべて異なる塗装で、国鉄色のものもある。JR北海道の同系は定期運行を終了しており、道内では貴重な存在だ。
国鉄車両が私鉄でも走行中!
ここでしか走っていない希少車両形式「水島臨海鉄道」
●倉敷市~三菱自工前間【岡山県】
JR倉敷駅と臨海工業地帯を結ぶ路線で、旅客営業を始めた当初から国鉄の気動車を譲り受けて使用している。
現在は主にオリジナル車両のMRT300形が使われているが、JR東日本から購入したキハ30形・キハ37形(写真)・キハ38形も朝夕ラッシュ時を中心に活躍。各形式とも現役で運行されているのはここだけで、近代的な高架区間をのんびり走る。
全5両のキハ40系が異なる形態で運行中「小湊鐵道」
●五井~上総(かずさ)中野間【千葉県】
2020年から翌年にかけて、JR東日本のキハ40系5両を譲受。首都圏から最も近い場所で活躍するキハ40系で、カラーリングはJR東日本時代のもの、国鉄色のものなど全4パターン。
かつて一部車両が装備していた客扉のタブレット保護柵も1両で再現されるなど、バリエーションに富んでいる。国鉄キハ20形がベースの従来車両も人気だ。
文・写真=伊原 薫
『旅の手帖』2026年4月号より






