ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は「ピエール瀧の23区23時 2020-2022」(産業編集センター)。

インパクトがあるオニができたわけ

さっきからずっとこのオニの遊具を見てて、「実はこの下に胴体が埋まってるんじゃないか?」っていう妄想が止まらない(笑)。猫の額は言い過ぎかもだけど、そんなに広くない公園だな。公園の敷地から線路の貨物とかも見えるし、JR立川駅の端っこ辺りって感じか。

―― はい。錦第二公園、通称・オニ公園。ここはこういう東京の変わった公園を特集する企画に、必ずと言っていいほど登場する場所なんですが、我々は初めましてですね。今回は撮影の立会人として、立川市内でのロケを行政から委託されております、立川ロケーションサービスの中原さんと三井さんも同行してくださっています。よろしくお願いします。

中原&三井 よろしくお願いします。

ピエール瀧です。よろしくお願いします。お二人は地元の方なんですよね? 後で少しお話を聞かせてください。しかしこの公園がある辺りは完全に立川の夜の街サイドだね。歌舞伎町にある感じなのかも。

―― ここはやっぱりこのオニの画力が強いからか、いろんな作品で使用されておりまして。ドラマ『ごくせん』とか、漫画『聖☆おにいさん』にも登場します。瀧さんご覧になったことありますか?

作品のタイトルは知ってる。でもドラマはまったく観たことない。『聖☆おにいさん』は数話読んだことあるくらいかな。ドラマや漫画にも登場してるのか、まあでも分かるかも。インパクトあるもんね。このオニは遊具としては滑り台なんだな。そもそもさ、なんでここにこんなコンクリート製のオニが作られる事になったの?

―― 立川市に問い合わせたところ、「まずこの場所が風水における“鬼門”に該当する」と。その上で、1981年9月に開園した際に、この公園の設計者が「街の鬼門を守り、災いを防ぐことを意図してつくられた」とのことです。このオニ公園のグッズとかも作られてるみたいですね。

なるほど。この辺のシンボルにはなってるっていうことか。ちょっと愛らしいもんね。これに金棒的なものも添えてくれたらさらにいいのにな。しかしやっぱりあの鼻の部分になんかのっけたくなるんだな(笑)。

―― 中原さんたちは「ハナクソ」と表されていました(笑)。

今日はハナクソ結構溜まってるね。しかしこの砂場に落ちてるゴミもいい趣だわ。ストロングゼロとレッドブルだもん。あんま見ない組み合わせだよ。「もうひと頑張りしなきゃ」って人と、「シラフでやってられるか」って人。そのどちらもがここに来て過ごしてるってことでしょ(笑)。

ヤンキーの溜まり場から子供たちの憩いの場へ

―― さっき、肉体労働のお兄さんたちとおぼしき集団が入り口付近に集まっていたんですけど、ハイエースでピックアップされていったので、いろんな人たちの集合場所になってるんでしょうね。

そうかもね。夜もさ、そこのブランコとかベンチに座って、ホステスやホストのアフターを待ってる人とかいそうだもん。

想像だけどさ、夜の街で待ち合わせる場所としてはすごく役に立ちそう。「オニのとこで待ってるね♡」的な。でも今もこんな風に、明るい時間帯は保育園児たちが遊びに来たりもするわけじゃん。人懐っこさはあるんだから、このオニの滑り台を有効活用した地域の楽しげなイベントとかできそうだよね。これもう滑ってみた?

―― 滑りました、一回フワッてなりますよ(笑)。

マジで? じゃあ俺も一回やってみよう。

うわ! 本当だ、ちょっと声出ちゃう!(笑) やっぱコンクリートで作った滑り台はいいんだな。あとさ、このオニちゃんと手入れされてるよね。定期的にキレイに塗り直されてる感じがするもん。愛されてんね。もし俺が地元のヤンキーだったら、ここをホームとして溜まっちゃう気はするな。多目的トイレだけだけど、一応トイレもあるしね。

―― その辺の事情を、地元の中原さんたちに聞いてみましょうか。

ここってやっぱり地元のヤンチャな子たちがこぞって集まるような公園なんですかね?

中原 今はかなり落ち着きましたけど、昔はそうでしたね。立川駅の南口側っていうのが、少し足を向けづらい場所ではありました。特に『ごくせん』のロケ地になって知名度が上がってからは、ドラマ自体がちょっとヤンチャな子たちが出てくる内容だったので、そういう聖地みたいになっちゃって。

ここが俺たちの居場所なんだ!って立川のヤンキーたちが、なるほど。でも昔と比べたら、ポップな印象にもなってきてるってことなんですね。今は周りが新しくて綺麗なマンションばかりですけど、昔はそうでもなかったでしょうから。でも、夜の街にある公園なのに、こうして昼間は園児達も遊びに来てるし、二面性がある公園なんだなと思いました。

このオニを使って町おこしとか、何かイベントはやってないんですか? 立川の名産を食べよう!みたいな(笑)。

三井 立川の名産だと、ウドが都内1位の生産量を誇ってますね! 東京ウドという品種があるんですけど。

ウド⁉ 立川ってウドが名産品なんですか? 全然知らなかった(笑)。全国順位ではどうなんですか? 上の方?

―― 今調べてみたら、ウドの生産量は全国6位ですね。

6位か、微妙だな〜(笑)。それこそ鬼まんじゅう作ったりすれば盛り上がりそうだな、とか思ったんですけど。

中原 節分の時は、豆まき大会をやってますね。

ああ、節分! そうか、豆まきは絶対盛り上がるでしょうね! 俺が子供だったら、ここでの豆まきイベントは異常にテンション上がると思うわ。それは盲点だった。豆を軽々跳ね返しそうな鬼のコンクリート感も、強靭さを感じさせていいかも。うわ〜、豆まきのときに来てみたい。鬼のコスプレとかで(笑)。

立川市・錦第二公園(オニ公園) Data

夜の街役立ち度:★★★★☆
ウ度:★★★☆☆
節分盛り上がり度:★★★★★

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:なし  灰皿:なし

住所:東京都立川市錦町1-5-13/営業時間:入園自由/定休日:入園自由/アクセス:JR・私鉄立川駅から徒歩6分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2023年12月号より

――毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!第2回は八王子市の秋葉台公園です。斜面を利用した、高さ15mの巨大ピラミッドがあるそうです。
――毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!第5回は調布市・「鬼太郎ひろば」に来ました。2015年に亡くなった、調布市名誉市民の漫画家・水木しげるさんの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するキャラクターのオブジェや遊具が楽しめる公園で、2019年に開園しました。かなり新しい公園です。(C)水木プロ