ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は「ピエール瀧の23区23時 2020-2022」(産業編集センター)。

「交通公園なんで、青信号になってから渡ってください!」

パッと見は交通公園なんだけど、恐竜の像とかも置いてあって、ファンキーな匂いするね。ここはいつ頃にできた公園なの?

―― 1968年12月開園だそうです。

じゃあ、俺の一個下だ。当時の葛飾区の公園担当に面白い人がいたんだろうな。「どうせ作るんなら、他の公園と似たようなもんじゃなくしましょう!」っていう発想の大人が。

―― 真ん中のエリアに行くと「宇宙ゾーン」もあります。NASAが宇宙飛行士の訓練で使用した「ムーンウォーカー」という機材が子供用の遊具になっているそうです。

へー。こっちのエリアは石板にルーンとか錯覚クイズみたいな小ネタが刻まれてる。きっと不思議ゾーン扱いなんだろうな。この地面の金属パイプもさ、叩くと音が鳴るんじゃないの? 長さが不揃いだからさ。叩いてみよう。
♪ポンポコポコポコ
ほらね! 音は合ってないけど、昔は綺麗に鳴ってたんだろうな。

―― ここは交通公園としての側面もあるので、園内に道路が作られてますね。おなじみの小さい信号機もあります。

ちらほらと何人か立ってるおじさんは交通指導員的な役割なんだろうね。

―― あそこの信号機を渡って橋を越えると、向こう側は宇宙ゾーンです。

じゃあ、横断歩道渡って行ってみよう。(瀧、渡ろうとする)

交通指導員のおじさん「すいませーん! 交通公園なんで、青信号になってから渡ってください!」

あ、本当だ! 信号赤だった。すいません、失礼しました〜! すごい。公園内にいる人たちのことをちゃんと見てるんだな。確かに、子供が見てるもんな。公園内とは言え、大人が赤信号で横断歩道を渡るのは良くなかったわ。公園内ルールに従おう。こっちのエリアは時計塔もなんか宇宙っぽくていい感じ。

―― 大きな建物が管理棟です。隣の建物にムーンウォーカーがあります。

「宇宙飛行士になって宇宙遊泳を体験しよう!」って書いてある。なんたる魅力的な一文。「アメリカのアストロキャンプにある宇宙飛行士訓練機の中の一つで、本物のNASAの宇宙飛行士の月面歩行訓練用として開発されたものです。アメリカ・カンザス州航空宇宙博物館が、子供用のミニサイズに設計したもので、6分の1の重力を体験できます」だってさ。子供専用なのか。後で写真だけ撮らせてもらおう。さっきあった時計のデザインもそうだけど、やっぱアポロの時代感なんだね。

―― 複合型遊具も、なんとなく宇宙ステーションっぽい感じですよね。

おお! これはテンション上がる複雑さだわ! でもここもなんとなくアポロの時代っぽいデザインだなあ。遊具としてはかなり古いけど、ちゃんとちっちゃい子向けにケアされてんのね。ほら、あそこの高いところにある通路。うんていみたいになってるとこが、怖くないように床があるところとないところと半々になってる。昭和に作られた割には細かいところまで意識されてるなあ。

滑り台すらも宇宙を感じさせる?

―― 子供の目線で考えたら、宇宙ステーションとかロケットの中ってこんなイメージなのかもしれませんね。

そんな気がするね。いやでも、この遊具は独特でいいな。バカデカいし。すべり台は、えらい角度が急だな〜。俺みたいなおっさんがやって大丈夫か分かんないから、ちょっと一回、矢吹くんやってみてくんない? 安全のリサーチとして。

―― 分かりました、やってみましょう。うわっ、これフワッてなります! 真ん中のところで!

(笑)。本当に? じゃあ俺もやってみよう。じゃあ行くよ〜。おおっ! 確かに1回フワッてなるわ! 一瞬ヤバい感覚あるよね。面白〜。でもこの角度だと、多分子供は寝っ転がってすべってると思うな。

―― ここは休日になると、結構混むでしょうね。

ああ、そんな感じするね。あっちの広場みたいなとこも行ってみよう。これは何だろ? 日時計かな? 「アナレンマ式日時計」って書いてある。今は8月だから、ここに立てばいいのかな。ちょうど影が伸びた先が現在時刻ってことか。今何時何分?

―― 今、10時50分くらいですね。

うわ! ほぼ一緒だ。ちゃんと合ってるのすげぇ! ここは科学の学びが散らばってるな。好きだわ。隣のこの茂みは何なの?

―― 「鳴く虫の女王カンタンの里」とありますね。

「ここはカンタンの生息地です」だって。カンタンっていう虫がいるんだな。「その鳴き声は高く澄んでおり、『ルルルル……』と人間の耳に快く聞こえるため、『鳴く虫の女王』と呼ばれます。」だってさ。へえ、知らなかったな。

―― 生物の分野も学べるってことですよね。管理事務所の裏側に、子供が入れるジャブジャブ池があるんで、そっちも見てみましょう。

おお! ここもう半分プールじゃん! 水遊びしてる子供がいる。この深さは子供用の水遊びプールだよ。ここさ、幼稚園児くらいまでの子にとっては最高だろうね。

―― さっき気づいたんですけど、外にある「北沼公園」って書いてあるモニュメント。中がタイムカプセルになってるんですよね。

そうなの? あ、でも2021年にもう開けられてちゃってるな。

―― 何が入ってたんでしょうかね。

やっぱ未来の自分に向けての手紙とかじゃないの。しかし恐竜といい、宇宙といい、タイムカプセルといい、何か悠久なタイム感を覚えるな。常に交通指導員のおじさんたちが見てくれてるという安全面の信頼感もあるし、夏用の水場もあるし。俺はここかなり好きだな。

―― 公園を出たら、目の前には駄菓子屋もありますしね。なんかオールドスクールな公園の楽しみが全部揃ってますね。

この環境に駄菓子屋併設はありがたいよね。せっかくだから最後に寄って行こう。アイス買って食べよう。

葛飾区・北沼公園 Data

おもしろ科学度:★★★★★
水親しみ度:★★★★☆
オールドスクール公園度:★★★★★

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:あり  灰皿:なし

※駐車場あり

住所:東京都葛飾区奥戸8-17-1/営業時間:入園自由
交通遊具は9:00~16:00最終受付。ムーンウォーカーは10:00~11:30・13:00~16:00、土・日・祝開館/定休日:入園自由/アクセス:JR総武線新小岩駅から京成タウンバス細田循環線約6分の「北沼公園」下車、徒歩1分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2023年11月号より

――毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!第5回は調布市・「鬼太郎ひろば」に来ました。2015年に亡くなった、調布市名誉市民の漫画家・水木しげるさんの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するキャラクターのオブジェや遊具が楽しめる公園で、2019年に開園しました。かなり新しい公園です。(C)水木プロ