細部までこだわりをみせる落ち着きの空間
閑静な路地を歩いていると現れる『バーガー喫茶チルトコ』の立て看板。
バーガー喫茶という耳慣れない言葉と、レトロな書体に思わず足が止まる。静かな通りにさりげなくとけ込むも、目をひきつける市松模様のような外観。温かみのある店内の照明に引き寄せられて、思わず入店したくなる。
店内はゆとりある配置と落ち着いたグリーンの壁。カウンターに所狭しと、かつ整然と並ぶお酒や自家製レモネードのボトルに心が躍る。
「壁の色は目に優しくリラックスできる緑色を選びました。店内はあまり広くはありませんが、それでも座席は増やさず、色々なデータに基づいた距離間で人が落ち着けるスペースを確保しています」と店長の寺島新さん。
テーブルにつくとその意味が分かる。圧迫感がまるでなく、店内のこぢんまりとした感じが逆に心地いい。
「音楽もゆったりとしたものを選ぶようにしています。落ち着いて“チル”して過ごせるように雰囲気づくりを大切にしています」寺島さんはそういってやわらかく微笑む。
日本とアメリカの文化を融合させた絶品和風バーガー
メニューを広げると、まず目に飛び込むジャパニーズバーガーズの文字。角煮バーガー1650円、わさびアボバーガー1550円、みそエッグバーガー1500円、照り焼きエッグバーガー1400円。どれも目新しく気になってしまう。他にも定番のオーセンティックバーガーズとして、クラシックハンバーガー1200円や、ベーコンチーズバーガー1550円などが人気だ。迷いに迷って今回はわさびアボバーガー1550円を注文した。
バーガー喫茶と銘打つだけあって喫茶メニューも豊富だ。人気なのはKAMINARIクリィムソーダ650円。なんと十数種類もあり、みどり、きみどり、ピンク、しろ、など色で注文するシステム。
「最近は推しの文化もありますから、推しの色で選んでいただくこともできるんですよ」とのこと。
今回のオーダーはKAMINARIクリィムソーダ650円のむらさきにした。
ちなみに『チルトコ』は完全キャッシュレス制で現金は使えないので注意。
待つことしばし。わさびアボバーガー1550円が到着する。こんがりと香ばしく焼けたバンズにそそり立つように積み上げられたパティとアボカド。その上にはさらに海苔の佃煮とわさびが乗せられている。サイドにはポテトが添えられていてボリュームも申し分なし。
かぶりつくと香ばしくも柔らかいバンズにじゅわっと肉汁溢れるパティ、味に奥深さを与えて後を引く塩気ももたらす海苔の佃煮と、全体を引き締めるわさびの穏やかな辛味、そしてそれらを全て包み込むバンズの香ばしさと甘味。まさに絶品。
ハンバーガーに海苔の佃煮とわさびという異色のとりあわせだが、意外にも「新感覚のおいしさ」というよりは、あくまで一つの調味料としてすんなりと合う。
パティのジューシーさと、それを増幅させるアボカドの旨味。
「料理にはもちろんこだわっています。バンズもオープンにあたって何社も検討してこの店の味に合うものを探しました。パティも、肉々しさは残しつつも、女性のお客様が多いのでガッツリし過ぎない感じを心がけています」と寺島さん。
確かにパティはジューシーさを持ちつつもアボカドのクリーミーな味に寄り添うような優しさがあった。
「メキシカンボロネーゼバーガーのトマトソースなども全て自家製ですし、スリーチーズバーガーも他では考えられないくらいの量のチーズを使っています。チェダー、モッツァレラの他にカマンベールを丸々使っていて、チーズの塩気だけでもおいしいんです」。
KAMINARIクリィムソーダ650円のむらさきは名前のとおり雷型のクッキーが添えられている。むらさきにはシロップが付属していて、それを混ぜると色が変わるという。
ゆっくりとシロップを注いでいくと、徐々に色が変化していく。
紫色だったクリームソーダがグラデーションを伴って美しいピンク色に変化していった。遊び心が楽しく、ワクワクさせてくれる。
さわやかなソーダとシロップの甘みがとてもよく合い、バニラアイスとの相性も抜群。クッキーの微かな塩気がアクセントになって飽きが来ない。
「心をつかむ」接客を目指す『チルトコ』
「他の店では出せない味を目指していて、ジャパニーズバーガーもその一つですが、それでも人には好みはありますから万人受けというのは無理ですよね。ですから差をつけるとしたら接客かなと思うんです」
『チルトコ』では寺島さんも、その他のスタッフさんたちもフレンドリーで温かく接してくれる。おしゃれな外観と内装で少し気が引けるかもしれないけれど、ひとたび入店すればすぐに気が安らいでくつろげる。
「店名のとおり、来てくれた人たちがくつろいでほしい、気持ちよく帰ってほしいと思っています。ハンバーガーのアレンジにも柔軟に対応していて、全てのハンバーガーにトッピングが可能になっています。過去には10段パティのハンバーガーを注文したお客さんもいましたよ。そして、ここはあくまで喫茶店でもありますからドリンクのみの喫茶利用も歓迎です。混んでいなければドリンク片手にパソコンを広げてお仕事をしてもいいですし、好きなように“チル”してください。料理で胃袋もつかみたいけど、なにより接客で心をつかめるように心がけています」
と穏やかに寺島さんは語った。
『バーガー喫茶チルトコ』では、絶品のハンバーガーとユニークなドリンクでお腹を満たし、居心地のいい接客で心も大満足できる。
蔵前に訪れて一息つきたくなったときは『バーガー喫茶チルトコ』に気軽に立ち寄れば間違いない。
取材・文・撮影=かつの こゆき