どれもエース級の個性的な3色のつけ汁
JRの高架下には色とりどりの飲食店が立ち並ぶが、それらとは一線を引くかのように真っ黒な外観と『麺屋武蔵 武骨相伝』と書かれた提灯が掲げられている。店頭の看板には「つけ麺 特盛1㎏まで同料金!!」「スープ一杯までおかわりできます」という文字が。大食漢にはたまらない。
入り口にある券売機で購入をするのだが、つけ汁は3色用意されていて迷ってしまう。黒はラードでニンニクや玉ネギをじっくりと揚げたマー油にイカスミを加えたもの。赤はエビの頭を使用した特製辛醤の刺激的な味わいが特徴。白は豚骨の旨みが凝縮し、背脂たっぷり。どれもほかの店ならばエースを張れるようなメニューがそろう。
今回はその中でも特に名物だという濃厚黒厚切りローストポークつけ麺1900円を注文することにする。
モチツルの極太麺。つけ汁は2種楽しめる
濃厚黒厚切りローストポークつけ麺が着丼すると、麺が隠れるほどの厚切りのローストポークに目を奪われるが、まずはつけ麺から。
自慢の麺は、モッチリとしていながらツルツルとのど越しがいい。この特注麺は、加水率が高く、他店の麺より多く練っているので、この食感が生まれるという。麺の量は茹で前で、並は180g、大盛りは370g、超大盛りの3.5倍盛りは1㎏もあり、同一料金で選ぶことができる。茹でると約1.5倍になるので、自分の食べられる量を選択しよう。
基本のスープは豚骨と鶏ガラなどを12時間以上煮込んだスープを寝かせてから、さらに煮込んで濃度を上げている。濃厚つけ汁の場合はそこに魚介系を加えて、より濃厚な味わいを生んでいる。黒のつけ汁は、乳白色のスープに映えるようにマー油にイカスミを加えた「黒ダレ」が浮かんでいる。特製麺を濃厚なつけ汁につけて食べれば、麺の甘みを感じられ、動物系のスープにニンニクの香ばしさやイカスミの旨みなどが加わる。
これならば1㎏でもいけそうだが、つけ汁が濃厚なだけに麺によく絡んですぐになくなってしまいそう。
「つけ汁は1回おかわりができます。例えば黒を注文して場合、もう一度黒をおかわりすることもできますし、赤や白に変更することもできます」と店長の樋口周作さんが教えてくれた。卓上の調味料を使っての味変はよくあるが、つけ汁の味自体を変えることができるとは……。お得感が満載で、これなら麺の量が多くてもいいかもしれない。
2日間かけて作る超特大のローストポークは味わい深い
主役にも感じられるローストポークは、樋口さんによると「豚肩ロースに塩や麹、ハーブなどの特製ダレに2日間漬け込んで下味を付け、スチームコンペクション(蒸気と熱風で仕上げるオーブン)で約2時間焼いています。そうすることによって、味がしっかりと染み込み、柔らかくて臭みがないローストポークになります。そこに、タイムやオレガノ、ガーリックなどが入ったオリジナルハーブソルトと、醤油ベースのローストポークダレをかけています」と話す。
分厚く、しっかりと噛み応えがあるが、意外にもすっと歯切れがいい。肉汁が口の中に広がっていき、噛むごとに旨みを感じられる。甘辛いタレと、オリジナルハーブソルトで、より味わい深くなり、さらに箸が進んでしまう。
スッキリとして食べやすいスタンダード。プラス料金で濃厚つけ汁も
スタンダードもおすすめ。濃厚よりもつけ汁がさらさらしてスッキリと食べやすいと、スタンダードが好きだという常連も多いという。
相傳つけ麺1330円は、大きなローストポークが2枚に、味玉がトッピングされている。つけ汁は濃厚つけ麺同様に、黒・赤・白のつけ汁から選ぶことができ、さらに1杯おかわりも可能だ。「スタンダードを注文の方は、濃厚のつけ汁をおかわりに選ぶと+100円になります」と樋口さんが教えてくれた。
行列してでも食べたい
樋口さんは「つけ汁をおかわりできる店舗もあると思いますが、味の異なるつけ汁をおかわりできるのは珍しいと思います。さらに、濃厚とスタンダードの両方が楽しめるのも、ここの特徴です。冬期限定の味噌といった季節限定もご用意しています。明るいスタッフがお待ちしていますので、何度でも足を運んで下さい」と話す。
モッチリとしてツルツルとした麺は1㎏まで、さらにはつけ汁もおかわりできて同一料金など、お得感満載。長い行列ができることもあるが、並んでも一度は食べてみたいつけ麺だ。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン