新大久保のコリアンタウンにおもしろ新スイーツ現る!
JR新大久保駅から徒歩5分ほど。異国情緒漂うコリアンタウンで不思議なオブジェが目に留まり、思わず足を止めた。このくるくるした円筒状のものはなんだろう?
店頭の看板を見ると、“煙突パン”と書いてある。なるほど、くるくるオブジェは煙突に見立てたパンだったのか!
店名の『Trdlo』はチェコ語で“煙突パン”という意味。チェコでは“トゥルデルニーク”、ハンガリーでは“クルトシュカラーチ”と呼ばれている定番スイーツだ。専用の棒にパン生地を巻きつけ、電熱器の上で回転させながら焼き上げる。
この菓子パンの形とおいしさに魅了された、オーナーの許禎尹(ホジョンユン)さん。トルドロは韓国で人気だそうで、「日本にも紹介したい」と思い、トルドロ専門店をオープンした。
「新大久保のコリアンタウンには、おいしくて見た目もかわいいデザートを出すカフェがたくさんあります。ただ、温かいデザートを提供している店はなかなかないので、この焼きたての甘いパンはきっと、お客さまに喜んでいただけるだろうと思いました。トルドロは見た目だけでなく、食べ方もユニークなんですよ」と許さん。
へえ~、どんなふうに食べるものなのか楽しみだ♪
ほんのりスイート&ビターな奇想天外の組み合わせ
今回いただくのは、カラフルなレインボーのトルドロ。カラースプレーチョコがた~っぷりまぶしてあり、どことなく懐かしさを感じて童心に帰ったような気分になる。
ドリンクは、許さんのおすすめをチョイス。この真っ黒な液体……、実は黒ビールなんです!
トルドロといっしょに手渡されたのは、3本の指に装着するビニール手袋。これで手を汚さずに食べられる。チョコレートがまぶしてあるものは両手にはめて食べるといいそうだ。
トルドロの食べ方を許さんに教えていただき、パン生地をつまんで引っぱり上げると、くるくる~っとおもしろいように生地がほどけはじめた。この感触、なんか気持ちいいカモ♪
木製のキッチンペーパーホルダーに立てられたトルドロはなんだか煙突みたいで、くるくる引っぱり上げたパン生地が煙のようにも思えてくる。
そして、ニョロニョロとのびたパン生地を食べやすい大きさにちぎって、パクッとひと口。焼きたてのトルドロはふわっと温かく、パン生地自体にほんのり甘みが感じられる。外側はサクッ、内側はモチッとしていてとってもおいしい!
生クリームたっぷりのデザート風黒ビールとの相性もバツグンで、甘いパンをつまみにお酒がぐいぐいすすむ。シナモンが苦手な筆者なのだが、このシナモン黒ビールはめちゃくちゃおいしくて驚いた。
「実は、私もシナモンが得意ではないんですよ(笑)」と許さん。シナモンパウダーと黒砂糖を独自に配合して毎日混ぜ合わせ、2週間ほど熟成させることで香りをおさえて、シナモンが苦手な人の口にも合うように仕上げているそうだ。黒砂糖の甘みがほんのり感じられ、ジャリジャリした食感もまたいい。
「韓国のカフェでシナモンパウダーをふりかけた黒ビールを飲んだ時に、『これはおいしい!』とハマってしまって。煙突型をした甘いパンと、シナモン入りのほろ苦い黒ビールの組み合わせは、見た目も味もおもしろいだろうと思って看板メニューにしました」。
できたて熱々パンを堪能できる居心地のいい店
「本場の味に近づくように、トルドロ専用の小麦粉を特注しています。ハンガリー人のお客さまが『地元の味がして懐かしい』と喜んでくださったのはうれしかったですね」と許さん。
店の2階に工房があり、職人さんがパン生地をこねている。毎日つくりたて&焼きたてだからこそのおいしさだ。
「おいしいパンが食べられて、昼も夜もゆったりくつろげる店をつくりたかった」という許さん。『Trdlo』は23時まで営業しており、夜カフェとしてもにぎわっている。ワインやシャンパンなどアルコールメニューも豊富にあり、この煙突パンはいろんなお酒に合いそう。日が暮れると1階のテラス席がライトアップされ、店内もムードある空間に様変わりする。
1人で勉強をしに来る客や、複数人で会議をする客の姿もよく見られるそうで、使い勝手が良く居心地がいいのだろう。
「お客さまが見たことのないおもしろいもの、食べたことのないおいしいものをお出しして、それを楽しんでもらえたらうれしいですね」。彼女の遊び心があちこちに散りばめられた『Trdlo』は、韓国好きのみならず、パン好きやお酒好き、新しもの好きたちの心もとりこにするだろう。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ