下北沢で“パスポートなし”のタイ旅行!?
個性的な飲食店が立ち並ぶミカン下北。そのなかでもひときわ目を引くのが、ど派手なネオンに彩られたこの店だ。『タイ屋台999 下北沢店』は、都内や大阪に店を構えるタイ料理専門店。
入店するまではちょっぴり怪しい雰囲気にドキドキしてしまうが、店に入れば店員さんが明るい笑顔で出迎えてくれる。
店内も外観のイメージと同様、ネオンや看板が飾られたにぎやかでカオスな空間。BGMにはタイポップが流れ、まるで本当にタイに旅行をしに来たような気分にさせてくれる。コンセプトの「パスポートなしでいけるタイ旅行」は本当だったようだ。
店についてお話してくれたのは、スタッフの中村さん。「うちではバンコクの屋台を300店以上食べ歩いた、“タイ大好き”な代表が見つけたおいしい屋台料理を再現しています。現地の味わいを再現しながら、日本人の口に合うようにアレンジされているんです。日本の方以外に、外国人の方からもご好評いただいていますよ」とのこと。
中野に『タイ屋台999』の1号店がオープンした2014年当時は、タイ料理やパクチーブームが日本で起こる前。今ほどタイ料理が世間に知られていなかった時代から、タイ料理のおいしさを知ってもらおうと歩み続けてきた店なのだ。
バンコクの中華料理屋をイメージした空間
『タイ屋台999』の空間づくりのコンセプトは店舗ごとにバラバラで、下北沢店では“バンコクのチャイナタウンにある中華料理屋”をイメージしているのだとか。なんともマニアックなコンセプトだ。言われてみると、どことなく中華の雰囲気も感じられる。
「店にある看板からテーブル、イス、小物まですべてタイの現地から持ってきたものなんです」と中村さん。その言葉に、作りものではなく“本場っぽさ”が伝わってくるのは、現地のものをそのまま使っているからかと納得した。
ほかの店舗を巡って、それぞれの空間の違いを見てみるのも楽しそうだ。
テーブルにあるメニュー表はガイドブックのような仕様になっていて、ワクワクしながら料理を選ぶことができる。こうした至るところに散りばめられた遊びココロも、旅行気分を盛り上げてくれる理由のひとつだろう。
ランチや飲みの〆にも!あっさり醤油のタイラーメン
この日注文したのは、タイの屋台で代表が衝撃を受けたというタイラーメン730円。透き通ったスープに、パクチー、チャーシューといった具材がトッピングされている。ちなみに、タイにある『バミー ギアオクン ギアオムー』という店のラーメンを再現しているそうだ。
一般的なラーメンよりも小ぶりサイズなので、一品料理やスイーツと一緒に注文しても良いかもしれない。
最初にスープを味わってみると、さっぱりとした醤油ベースのスープが、体にやさしく染みわたっていくよう。どちらかというと、塩ラーメンのようなあっさり加減だ。そこにパクチーのエスニックな香りやチャーシュー、ひき肉の旨みが加わることで味に厚みをもたらしている。
食べれば食べるほど、どんどん食べたくなって沼にハマっていくようなラーメンだ。
そして麺は、平たい中華麺。あっさりとしたスープとマッチしするすると食べられる。日本人好みの優しい味わいで、ランチにはもちろん、お酒を飲んだあとの〆にもぴったりの一杯だろう。
さらにタイラーメンは、そのまま味わうだけで終わらない。テーブルには、タイの料理店で定番の調味料セット「クルワンプルーン」が用意されている。
ナムプラー(魚醤)にはじまり、ナムソム(酢)、プリックポン(唐辛子)、ナムターン(砂糖)という4種類の調味料を使って、自分好みの味わいにアレンジできるのだ。筆者は辛いのがやや苦手なので、ナムプラーやナムソムを中心に入れてエスニック感を楽しんでみた。
さっぱりとした味わいなだけに、さまざまなアレンジをして何回でも楽しめるのがタイラーメンの醍醐味といえる。
中村さんが「こんなメニューもあるんです」と教えてくれたのが、バケツに入ったドリンクやパクチー(!)。そう、この店ではバケツ生ビール1099円や、好きなだけ“追いパクチー”ができるバケツパクチー583円も人気なのだ。
さすがに一人で注文する勇気はなかったが、誰かと来たときには楽しんでみたいと秘かに思った。
『タイ屋台 999』に足を運んだら、ランチやディナー、飲み会などさまざまなシチュエーションで本格的なタイ料理を楽しんでみよう。
取材・文・撮影=稲垣恵美