お花と空間のコーディネーターが開いた花屋兼カフェ
ガラス戸の外からちらっと見た印象と店内はずいぶん違うので、驚くかもしれない。お店に足を踏み入れるとパステルカラーが印象的に使われていて、お菓子やお花がディスプレイされ、店内奥にはシュガーケーキも。オープンしたのは2015年。ブライダル業界で花を中心に据えたディレクションを行った経験を持ち、インテリアコーディネーターでもある川本幸代(ゆきよ)さんが開いた。
川本さんは花やガーデニングを中心とした仕事で独立を考えていた。そのとき出合った物件が目黒銀座商店街に面していた今の場所だ。事務所として使うには少し広いと、カフェを併設することになったのだ。
「カフェをやろうと意気込んだわけではなく、みんなが休んだり、集合できたりする場所になればという感じで始めました」と川本さん。フランス語で“蝶結び”という意味を持つ店名には、人と人とを縁で結ぶという願いが込められている。
席数は10席とこぢんまりしているが、ウェディングを中心に空間ごと演出してきた川本さんらしいアイデアが溢れている。まずはテーブル。ガラスの下に季節に応じて花やグリーン、そしてジオラマ用の動物たちが点在。中身が季節ごとに入れ替わって、訪れるたびに楽しい気持ちになる。天井からはドライフラワーなどが吊り下げられている。
花屋を兼ねていることから生花用の冷蔵ケースもあれば、リボンの棚もある。ただし、冷蔵ケースが奥まったところにあるため、カフェを目当てに訪れる人は『Chou de ruban』で、花を売っていることに気がつかない人も多いようだ。
ランチはフランス・ブルターニュ地方の郷土菓子、クイニーアマンを使ったサンドイッチを
ランチタイムのおすすめは、クイニーアマンを使ったサンドイッチのセットだ。クイニーアマンは、フランス・ブルターニュ地方の郷土菓子で、パティシエによる自家製だ。あまじょっぱい味に、やはり塩気の効いたサーモンとの相性がいいと圧倒的に人気。生地が詰まっていて、ザクザクした食感なので食べ応えもある。
朝8時オープン。時と場合によって変わる店の顔
オープン時間は朝8時と早い。「花を仕入れたあと、市場から帰ってきてそのままお店を開ければいい」というのも理由だったが、独立前にフランスで触れた朝の風景も後押しした。
「花を勉強するためにフランスに滞在していたときは、よく朝の街を歩いていました」
まだ動き始めていない街の風景を見るのが好きだったという川本さん。パリの人たちがパン屋でバゲットを買って、エスプレッソと一緒に食べる様子が印象に残っていた。その光景をもとに準備したチーズトーストやクイニーアマンなどのモーニングメニューも店を特徴付けている。
モーニングはもちろん、ランチ、カフェタイムとさまざまな人がお店を訪れる。特に週末ともなると、同じ店とは思えないほど時間帯によって店内の雰囲気が変わるという。
「週末のお昼前後は若い方が多いです。SNS等を見て遠方からもいらっしゃいますが、夕方になると近所に住むご夫婦などが来店されて、落ち着いた雰囲気になりますよ」
実はテーブルのディスプレイを目当てに訪れる人が少なくない。テーブルの上に、頼んだメニューとお気に入りのタレントの写真や人形を並べて、写真を撮る人が多いのだとか。そのお供に選ばれることが多いのが、3種類用意されているタルトだ。キュートで高さがないところが、写真に収まりやすいのだとか。
花屋を兼ねたカフェとして営業する『Chou de ruban』だが、実はブライダルや誕生日用のオーダーケーキの製作や企業向けにパーティーケータリングも行っている。特にケータリングでは、川本さんが描くイメージに基づいて、テーブルに花とパティシエが作ったお菓子類を飾りつける演出が好評だ。
同時に注文が多いのは、精巧な技術で作られるアイシングクッキーだ。ウェディングのプチギフトとしても引っ張りだこなのはもちろん、お店に置いてあるとちょっとしたプレゼントとして買い求める人が多い。
カフェと花屋を拠点としながら、事業を展開する川本さん。『Chou de ruban』では、今後もっと花屋としての顔を充実させ、出身地の茨城県で栽培される農産物を取り入れたメニューも展開、ますますお店を充実させていくそうだ。
取材・撮影・文=野崎さおり