韓国生まれ、東京育ちの4シーズンデザートカフェ
JR新大久保駅を出てすぐにあるにぎやかな交差点。そこから1本入った路地裏に、2018年9月にオープンした『CAFE BINGGO』がある。
店で迎えてくれたのは、鄭訓民(ジョン・フンミン)さん。「もともとは韓国にあったブランドを日本に持ってきて展開しています。ここ新大久保が本店なんですよ」。ほかにも大阪の道頓堀と鶴橋、福岡に姉妹店がある。
「日本の人はよくサツマイモを食べますし、かき氷も定番の人気だから、日本にも韓国式の焼きいもとかき氷があればウケがいいんじゃない? という発想からここをオープンすることになりました」と鄭さん。
ちなみに、韓国語でサツマイモのことを「ゴ」という。オープン当初からあるメニューのかき氷(ビンス)とサツマイモ(ゴ)で『CAFE BINGGO』という店名になった。2020年ごろからワッフルも定番メニューに加わり、現在はこれらの3つがメインになっている。
旬のフルーツが山盛り! 牛乳氷のビンスでひんやり
レジ横にはフルーツが山盛りになったカラフルなビンスの食品サンプルが並んでいる。見た目も華やかで、ボリュームもあっておいしそう。
「原材料が高騰していても、弊社では日本産の生の果物にこだわっています。これまでも何度も値上げがありましたが、本体価格はこの店がオープンした2018年から値上げしてないんですよ。それは『利益は大切だけど、お客様が喜んでくれるなら』という社長の心意気ですね」と、鄭さんがついついアツくなる。
使用する果物は毎日、市場やオークションなどから仕入れているという。企業努力が利益を産んでいるのだ。鄭さんは、スタッフとともに荷捌きをしながら「仕入れ先も自分たちで探すので毎日ものすご〜く大変です。それでも手軽で安い冷凍ものではなくて、生にこだわっているのはやっぱり香りも味も段違いにいいからです」。
取材当日の旬は桃。大好きなモモをたくさん食べられるとあらば、生ももかき氷1340円をオーダーしない手はない。
さっそくいただいてみましょう。ベースは牛乳を凍らせて作るふわふわのミルクかき氷で、その上に角切りのモモ、さらに自家製のピーチピューレがたっぷりかかっている。ピュアなミルクにモモの甘さや香りがベストマッチ。トッピングのバニラアイスもよく混ぜて食べたほうがおいしさが増すかも。なーんてゆっくり味わっているとどんどん溶けていく。
そう思ってガンガン食べていたら、頭がキーンと痛くなってこめかみを抑えた。イテテ……この感覚、久しぶりだ。夏を満喫しているみたいでなんだかうれしくなる。ところが鄭さんが「かき氷が好きな人は季節は関係ないみたいですね〜。うちのかき氷は冬でもよく出ますよ」という。冬は冬で、暖房が効いた部屋で食べるかき氷は格別なんだろうなあ。
オリジナリティあふれる韓国式焼きイモと、生地だけでも絶品のワッフル
かき氷を食べていたら、キリキリとお腹が冷えてきた。すると鄭さんが「かき氷だけだと冷えすぎてお腹を壊しちゃうので、温かい焼きサツマイモと一緒に食べる人も多いんですよ。人気のワッフルもぜひ食べてみてください」という。おお、それは名案ですね。
オーダーしたのはチーズサツマイモ940円と生いちごワッフル900円だ。日本の秋のごちそう、焼きイモが韓国式だとどうなるのか楽しみだ。ちなみに「鹿児島に自社農園があり、そこで育った紅はるかを使用しています。毎日、店内にある専用のマシーンで焼いているんです」というこだわり。
焼き上がったサツマイモの中身をすべて取り出しペースト状にして再び皮の中に詰め、その上にたっぷりのチーズをかけてオーブンで焼いている。ペースト状のサツマイモはトロリとなめらかでシロップを混ぜたかのような甘さだが、何も手を加えていないというから驚きだ。そこへチーズの塩味が加わって、イモのうまさを引き立てている。焼きイモといえば“ホクホク”じゃないの⁉ これは日本にはない味と食感だな。
「焼きサツマイモには4種類の味があるんですよ。もっと甘〜いメープルハニー、ちょっと辛いもの好きな方のためにチリソースをかけたサツマイモチリも。それからモッツァレラチーズとベーコンを入れて焼いたものもあります」。
『CAFE BINGGO』には食事メニューがないのだが、これを食事の代わりにする方が多いらしい。わかる! 1/3くらい食べてお腹にずっしりと迫ってきたもの。
日本では焼きイモにチーズを合わせることはないのでちょっと驚き。「チーズを乗せるのは最近の食べ方ですけど、韓国では昔から焼きサツマイモの上にキムチとかはちみつをつけて食べてたんですね。私はキムチが絶対においしいと思うんですけど、まだ商品化はしていません」。えっ、焼きイモにキムチってどんな味⁉ 期間限定でいいからいつか食べてみたい。
続いてワッフル。とにかくクリームがてんこ盛りで持ち上げることができず、まずはクリームを少し食べてみることにした。
「新大久保で同じようなワッフルを出している店はいくつかありますけど、うちは生地が違います! 焼きサツマイモと同じイモを生地に混ぜているからそのまま食べてもすごくおいしいんですよ」。
どれどれ。ひとくちちぎって食べてみたら、しっとりとしてほんのり甘く、サツマイモの香りがフワッとする。「砂糖は入ってないんですけど甘みがあるんですよね。何も乗せないで食べたいっていう人もいるくらい」と鄭さん。ホットケーキを何もつけずに食べるのが好きな筆者としては、ちょっとわかる気がする。
いつ来ても生のフルーツが乗ったかき氷や焼きサツマイモが味わえる『CAFE BINGGO』。素材のおいしさを活かしたカフェスイーツだから子供からお年寄りまで楽しめそうだし、量が多いからいくつか頼んでシェアするのも楽しそう。鄭さん激推しのキムチを乗せた焼サツマイモを食べられるのはいつの日か。今後も目が離せない。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢