四川料理の達人の火鍋専門店こだわりの旨辛ランチ
2017年、五反田に誕生した『ファイヤーホール 4000』は、四川料理の達人・菰田欣也氏がプロデュースする火鍋専門店。店頭のガラス窓にでかでかと貼り出された“火鍋”や“燃麺”が辛いもの好きたちの興味を引く。
立て看板に目をやると、火鍋ラーメンなどの辛そ~なメニューが並んでいる。
定食はすべて限定もので、なかでも“激辛”を謳う肉団子定食がめちゃくちゃ旨そう! こちらは限定15食、まだありつけるだろうかと急ぎ店に入ることにした。
ちなみに、名物の火鍋とはどんな料理なのだろう? 筆者の問いに答えてくださったのは、料理長の石原洋介さん。店の立ち上げからかかわり、五反田の地に火鍋の魅力を根づかせた陰の立役者だ。
「うちの火鍋は四川省や重慶のもので、海鮮や野菜などの具材をスープで煮込み、豚肉をしゃぶしゃぶで召し上がっていただきます。スープは辛味の強い中国産の赤唐辛子や四川山椒を使用した麻辣豆板醤スープと、生薬を配合した肉骨茶(バクテー)スープの2種類で、香り・辛味・旨味の3拍子そろった自慢の味です」。
ランチメニューの火鍋ラーメンと火鍋肉団子定食は、麻辣豆板醤スープを麺や白飯に合うようにアレンジしているのだそう。営養薬膳師である菰田氏がこだわり抜いた極旨スープをランチでもいただくことができるのはありがたい!
ヒーヒーするほど激辛&激ウマ肉団子がたまらない!
「“激辛”と書かれているものは、期待を裏切らない本格的な辛さに仕上がっていると思います」と石原さん。火鍋肉団子定食を注文し、いざ激辛にチャレンジ!
熱々の土鍋に盛られた肉団子入りの火鍋には赤唐辛子が丸ごと何本ものっていて、見るからに激辛っぷりを彷彿とさせる。
真っ赤なスープをひと口すすると……かかか、辛~ッ! ピリリと刺激的な辛味と絶妙なしびれを感じると同時に、すかさず口の中いっぱいに深い旨味がじわ~っと広がる。麻辣豆板醤スープの辛さと旨さの無限ループを存分に堪能し、肉団子をパクリ。
この肉団子がまた激ウマで、なんとも口あたりのいいやわらか食感。ふわふわなのにねっとり感もあって食べ応え抜群! 旨辛スープがたっぷりしみ込んでおり、お肉自体の甘みと旨味がものすごく感じられる一品だ。しかも、とてもひと口では食べきれないほどの大きさで、土鍋の中にぎっしり詰まっている。
「火鍋のしゃぶしゃぶ肉や肉団子に使用しているくちどけ加藤ポークは、菰田がほれ込んだ群馬県産のブランド豚です。しっとりとした肉質で甘みがあり、ぼくがこれまで食べてきた豚肉の中でもトップクラスのおいしさです」と石原さん。
あまりに辛くてヒーヒー言いながらも、この旨辛スープとふわとろ肉団子でご飯がガツガツすすむ。
「火鍋肉団子定食は具だくさんで食感もさまざまなので、一人鍋感覚でお楽しみいただけると思います。ぼくはご飯をガッツリほおばる中華が大好きなので、しょうが焼きや照り焼きのように白飯を何杯でも食べたくなる味にしたくて、火鍋よりも濃いめの味つけにしています。煮込んだ後のおいしいスープで白飯をかっこみたくなるような感じです。この味でお客さまのお腹を満たすことができたら料理人冥利に尽きますね」。
なるほど、この止まらぬ旨さはまさに鍋のシメ! ご飯のおかわり、お願いします!
火鍋のおいしさを日本で広めるために……
10年もの間、赤坂の一流料理店や渋谷の高級ホテルで修行を積んできた石原さんは、菰田氏や職人仲間とともに『ファイヤーホール 4000』を盛り立ててきた。
「専門学生の時に実習先の中華料理店で感銘を受けて、中華料理人の道を選びました。ちょうど30歳の時に菰田に声をかけられて新たな一歩を踏み出してみようと決意し、店の立ち上げからかかわっています。修行時代に自分の限界を伸ばしてもらった経験が、今の料理人としての自信につながっているように思います」。
あらゆるジャンルの飲食店が競合する五反田で、新たに火鍋のおいしさを広めてきた石原さん。「菰田は本場の火鍋の味をそのまま日本に持ち込んだのではなく、日本人が食べやすいように落とし込んでいるんです」と説明する。
「場所が変われば、人の性質や好みも変わります。味だけでなく香りや辛味も日本人好みのバランスを考え、独自に生薬を配合しています。例えば、自家製豆板醬は中国の調味料と日本の麹を使うなど、本場の食材となじみのある食材を組み合わせています。本場の火鍋ももちろんおいしいのですが、火鍋の魅力を広めるためにはお客さまが“求めている味”も大切にしています」。
その味は今や、五反田の名店の1つに数えられるほど好評だ。「おかげさまで常連のお客さまも増え、五反田の街に受け入れてもらえてほっとしています」と石原さん。「これからも火鍋のおいしさを広く伝え、さらなる高みを目指したい」と話す。
「うちの店の火鍋をきっかけにして、次は本場の火鍋にもチャレンジしてみようと思ったり、中華料理をもっと好きになったりしていただけたらいいですね」。
今度は店自慢の火鍋、食べに来ます!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ