新しい「荻窪」を担う店、続々
「昔ながら」といった言葉が似合う荻窪だけど、新注目スポットも続々登場中。象徴的なのは2023年2月にオープンした『The Top BeatClub』だろう。現役ミュージシャンMr.PANさんがプロデュースしたハコだ。「高円寺や吉祥寺にはロックのイメージがあるけれど、その間の荻窪だからこそ伸びしろがある!」とMr.PANさん。ここから四面道交差点を渡ると『SHUN RAKU』の芋ネオンが見えてくる。ソフトクリーム、蜂蜜に焼き芋とストロングポイントが多いスイーツ店は、早くも地元民の憩いの場となっている。
駅のほうに歩いていくと、2023年6月にできたてホヤホヤの『榛名』を発見。長崎の料理を気軽に楽しめる店で、穴子の生簀(いけす)もある。「うちの親族は食べ物関係の店が多いの」と和菓子店の『榛名屋』出身の女将は笑う。
南口に移動し目指すは『ゆきもの』。盆栽に興味津々だっただけに、こんな素敵な店が荻窪にあったとは驚いた。世界的にも人気という盆栽鉢を多数揃えている。また南口ではコーヒー専門店もチェックしたい。すずらん通りを抜けた場所にある『cafeshima』はコーヒー好きにはたまらない店だ。自家焙煎のうえ目の前で豆を挽き極上の一杯を作ってくれる。テイクアウトでこんなハイレベルのコーヒーをいただけるとは!
荻窪さんぽの締めは、こちらも開店したばかりの『酒と肴 ててて』。断言しよう。この店、近く荻窪中、いや中央線沿線の居酒屋好きに愛されることになる。シンプルにいい店だ。町中華「虎林」の場所を継ぎ、当時の木材をリサイクルした。「いいものを残してくださったので、それを使わせていただいている。新しいけれど味のある店にしたい」と中田夫妻。今回お話を伺った店はそれぞれに、荻窪という街へのリスペクトが詰まっていた。昔から続く文化に対する想いがBrand-New!な荻窪を生み出している。
荻窪の街に新しいビートを刻む『The Top Beat Club』
90年代から活躍するバンドTHE NEATBEATSのギター・ボーカル、Mr.PANさんがプロデュースした音楽の総合娯楽施設。レンガ造りのホール、カフェ、レコード店が一体となった夢の空間だ。早くも音楽好き以外にもファンを獲得している。
・カフェは12:00~23:00、月休。
・☎03-6913-5433
甘いものと甘いものの出合い、正義『SHUN RAKU 荻窪店』
2021年7月にできた青梅街道沿いの店。無農薬の牧草で育つ北海道ジャージー牛の生乳100%のソフトクリームは「濃厚で後味さっぱり」と店主。店の名物である蜂蜜、焼き芋、季節のフルーツと見事にマッチ。蜜芋ブリュレ680円。
・11:00~18:00(土・日・祝は~21:00)、不定休。
・Instagram:@shun.raku
緑ある暮らしを育む場所『盆栽鉢ストアゆきもの』
とても珍しい盆栽鉢の専門店。もちろん盆栽も取り揃え、初心者も気軽に立ち寄れる。「鉢にちょっとこだわるだけでもサマになる、盆栽は誰でもできるんです」と店主の笠井有紀子さん。ハードルが高そうな盆栽の入り口になる店だ。
・11:00~19:00、水・木休。
・Instagram:@yukimono_store
長崎のおいしいもんが荻窪に集結『穴子と酒と五島うどん 時々天ぷら 榛名』
店主・溝口雄士さんの出身地・長崎名物を提供するが、店名は女将・さち子さんのご実家である教会通りの『榛名屋』から拝借。2人のルーツが合わさり、荻窪に新風を吹かせる。穴子天ぷら1200円、ざるうどん700円。
・11:00~14:00・17:00~21:00、水休。
・☎03-6915-1506(変更の可能性あり)
環八に漂うコーヒーの豊かな香り『cafe shima coffee roaster』
代々木八幡で同名のカフェを営業していた店主・島田健吾さんが、荻窪南口に作ったアトリエ兼焙煎所。自分のための一杯を丁寧に淹れてくれる店で、なんと好みに合わせブレンドすることも可能。当時5歳の姪が描いたイラストが目印。
・13:00~18:00、月・火休。
・☎070-4461-3386
中田夫妻の料理とやさしさに酔う『酒と肴 ててて』
つねに30種以上用意している日本酒は食事に合う食中酒。牛すじ煮込み800円などの料理が酒を、酒が料理を引き立てる。互いの腕をリスペクトし高め合う中田浩司さん、成美さん夫妻と同じで、どちらも店の主役だ。
・17:00~23:00(土・日は15:00~22:00)、月休。
・☎03-6279-9016
取材・文=半澤則吉 撮影=佐藤侑治
『散歩の達人』2023年8月号より