日本酒にこだわるお店は多いが、燗酒にこだわるお店は少ない
店主の清水さんは、とにかくお燗をした日本酒が好きなのだと語る。清水さんは3店舗を経営しているが、いずれも燗酒を前面に押し出している。他の2店舗は、お通しにお燗した日本酒を出すという徹底ぶりだ。
「日本酒にこだわるお店は多いんですが、燗にこだわっているお店というのは少なくとも船橋ではあまり見ません。ですから燗酒が好きな人や、興味のある人たちが来店してくれるのではないでしょうか」
駅から離れた立地にも関わらず、遠方からのお客さんも多い理由をこう分析する。もちろん冷酒の注文も受け付けるが、仕入れる日本酒は燗に合うものが多い。燗酒といえば冬のものというイメージだが、夏の燗酒もおすすめとのことだ。小口の蔵からの仕入れも多く「日本酒が好きな人は、飲む銘柄が決まっていることが多いけれど、ぜひお話をしながら新しい味をみつけてほしい」と清水さんは微笑む。
日本酒に詳しくなくても、清水さんに聞けば好みの銘柄を一緒に考えてくれる。メニューには『飲み比べ3種セット750円』もあるので気になる銘柄がいくつかあるときは試してみるといいだろう。お勧めの3種を選んでもらうこともできる。
料理は燗に合うものを提供する
『ゆる燗酒場 煮りん』は、外観・内装も和風居酒屋のテイストだが、提供する料理が和食ばかりというわけではない。料理も「燗に合うもの」という基準で選ばれている。今回はさごち焼霜700円、鰹の瓦煮480円、おばん菜盛680円、日本酒は鯉川うすにごり一合750円を燗でいただいた。
さごち焼霜700円は、あっさりとしつつも肉厚でかみしめるほどにジューシーなうまみがにじみ出る。すだちを絞ればさらにさわやかさが増し、隠された風味があふれ出てくる。
鰹の瓦煮480円は、とてもずっしりと身のしまった肉厚の鰹にしっかりと味が染みこみ、噛み応えも抜群。
人気のおばん菜盛680円は、内容が固定されていないので毎回楽しみにして注文する常連さんも多いという。一度でさまざまな味を楽しめるし、ボリュームもあるので人気も納得だ。
どれもおいしく、燗酒に合う料理にこだわっているだけあってぬる燗の鯉川うすにごり一合750円によく合う。
魚は天然もののみを仕入れており、地元船橋で仕入れた野菜も自慢とのこと。
年間を通して燗酒を楽しむのなら『ゆる燗酒場 煮りん』へ
『ゆる燗酒場 煮りん』は日本酒、特に温めた日本酒にこだわるという少し珍しい居酒屋だ。仕入れる日本酒もお燗しておいしくなるのかが基準となっているし、料理も燗酒に合うものを選んでいる。お燗する温度も、お酒ごと、合わせる料理ごとに絶妙に調整して提供するという徹底ぶり。特に『ゆる燗酒場 煮りん』は清水氏が経営する3店舗の中でも大衆感があり気軽に入れる雰囲気だ。
日本酒が好きな人や、興味を持ち始めた人も、おいしくお燗したお酒を試してみたいと思ったのならぜひ『ゆる燗酒場 煮りん』に立ち寄ってみよう。
取材・文・撮影=かつの こゆき