おでんに用いられるとうもろこし
収穫期となる6月から9月にかけて旬を迎えるとうもろこしは、夏野菜を代表する存在だ。茹でてもよし、焼いてもよし、豊かな甘みを存分に楽しめる人気食材だ。また、米、小麦に並ぶ世界三大穀物のひとつで、主食にしている国も多い。
とうもろこしは収穫から時間が経つごとに糖度が落ち、味が悪くなっていくので、お店で「朝穫れとうもろこし」として売られているものを見かけたら手に入れておくといい。皮の緑色が鮮やかなものは新鮮で、ヒゲの先端が褐色なものが熟しているといわれる。
東京のおでん種専門店では2種類のとうもろこしが手に入る。ひとつは切ったままのとうもろこしを鍋で煮たもので、荒川区にある『九州屋蒲鉾店』などで販売している。
もう一方はとうもろこしを具材とした揚げ蒲鉾だ。「コーン揚」などという名称で販売されている。尾山台の『武田惣菜店』、吉祥寺の『塚田水産』、『佃忠』各店(亀有、向島、田端、池袋)、戸越の『後藤蒲鉾店』のほか、製造販売しているお店は非常に多い。
コーン揚はとうもろこしの甘みとすりみのうまみが見事に融合している。おでんにせずとも軽く炙ってお酒のお供として味わったり、子どものおやつにしてもいい。
おでんのとうもろこしの調理方法
さて、ここからはおでんのとうもろこしの調理方法について紹介していこう。調理方法といっても煮るだけの簡単ステップだ。
ネットなどで調べると、下茹でしてからおでん汁で煮る方法と、下茹でせずに直接おでん汁で煮る方法があることが分かった。今回は両方を試して味や食感の違いを確かめてみたが、結論から先にお伝えすると大きな違いはみられなかった。
とうもろこしを茹でる(省略可)
まずは下茹でする方法から紹介していこう。おでんにする場合は必ずしも茹でる必要はないが、おでん以外の料理にも役立つので覚えておくといいだろう。
とうもろこしは皮付きのものを使用する。皮をむいて薄皮だけ残し、鍋に入るように根元の茎部分は切り取る。
鍋にとうもろこしを入れたら水を張る。このあと火にかけるのだが、水から茹でる方法と沸騰してから入れる方法の2通りがある。
水から茹でる場合は沸騰間際に火力を弱め、15分から20分茹でると甘みや香りが深まるという。一方、沸騰した後に入れる場合は沸騰した状態で5分ほど茹でると、しゃきしゃきとした歯触りになるという。
この2通りの方法で茹でて違いを調べてみたが、筆者の正直な感想でいうと「そう言われればそうなのかな」と感じる程度だった。舌に自信を持つ方であれば、ぜひ試してもらいたい。なお、おでんにしない場合は茹でたあとに塩を加え(水量に対して2〜3%)、4分ほどつけておくと甘みをより引き出せる。
とうもろこしを煮る
次におでん汁でとうもろこしを煮ていく。火が通れば完成なので、弱火で5分から10分程度煮ればいい。
今回は茹でたとうもろこしと生のものを同じ時間煮て、味や食感に違いが出るか試してみた。また、水から茹でたものと沸騰してから茹でたものの2種類を用意した。
おでん汁は一度煮立たせたら弱火にし、とうもろこしを入れる。ほかのおでん種への影響はないので、一緒に煮てかまわないだろう。
上の写真は数分経って取り皿に移したもの。左から水から茹でたもの、沸騰してから茹でたもの、生のままおでん汁で煮たもの。外見の違いはまったく見られない。
味や食感に関しても目立った違いは感じられなかった。調理の手間を考えると、生をそのまま煮る方法を選択するのがよいのではないかと思う。
冷やしおでんにする場合は、表面を焼くひと手間を加えてみるといい。焼きとうもろこしのような見た目が夏らしさを演出し、香ばしさもプラスされる。冷やしおでんの作り方は「佃忠(田端)のおでん種で冷やしおでんをつくる」という記事を参考にしてほしい。
とうもろこしをおでんにすると、粒の隙間におでん汁をたっぷり含み、芳醇な甘みが一層感じられる。食したことのない方はぜひチャレンジしてほしい。
取材・文・撮影=東京おでんだね