コリアンタウン新大久保で本格日本料理ランチならここ!
コリアンタウンとして有名な新大久保には韓国料理はじめ、さまざまなアジアンエスニックのお店が並ぶが、そんな異国の雰囲気あふれる街に店主こだわりの和食ランチをいただける店があると聞いて、さっそく新大久保へ向かった。
今回の目的のお店『日本料理 吉の』は、新大久保駅から大久保通りを徒歩7分。路地を入ってすぐのところにある。このあたりは韓国料理店が多く、チェーン店を除いて日本食のランチをいただけるお店はほとんどない。
店に入ると、厨房を囲むようにカウンター席が12席。道路側は大きなガラス窓となっていて、ランチタイムには光が差し込み店内を明るくしている。
「調理学校を卒業した後、日本料理店や寿司店で調理の修業をして、2008年にこのお店を開店しました。現在は閉店しましたが、父もこの店の近くで長年日本料理店を営んでいたんですよ」と教えてくれたのは店主の吉野太郎さん。
ランチタイムは太郎さんと奥さまの宏美さんのお2人で切り盛りしている。子育てが一段落した2023年からランチ営業を開始した。「食材から調理方法まで、夜のメニューと同じ、こだわりを持った料理を出しています」と太郎さん。
調理へのこだわりが強い太郎さんと、社交的な宏美さん。ランチメニューは必ず宏美さんが試食してから出すそう。“食べる人”としての宏美さんの舌を信頼しているのだ。「お互いが得意なところと不得意なところを補いあって、うまくいっているんですよ」と話す太郎さんと横で笑いながら聞いている宏美さんを見ていると、とても和やかな気持ちになってくる。
マグロが絶品! 店主自慢の刺身定食を堪能する
太郎さんにランチのおすすめを聞くと、ぜひとも刺身定食を、とのこと。長年付き合いのある問屋さんから厳選した魚を仕入れている。マグロは特に自信があるそう。太郎さんがそう言うなら、と刺身定食1200円を注文。
ランチが出来上がるのを待っている間に、カウンター越しに太郎さんが調理する様子を見ていると、その真剣な眼差しに、先ほど聞いた調理へのこだわりを感じることができる。出来上がるのが待ち遠しい。
それでは、マグロから一口。舌に乗せた途端、ほどよい脂の旨味が口の中に広がる。うーん、たまらないおいしさ。太郎さん、ありがとう。次にカンパチ。コリコリ食感とあっさりとした味わい。アジは厚みがあって、脂の甘みと生姜のバランスが絶妙だ。中落ちのネギトロはなめらかな食感を楽しめる。イカは新鮮でコリコリ食感。すべてが大満足の刺し身盛り合わせだ。
ご飯はコシヒカリ。「特別なことはしていないんですが、ご飯の炊き具合にはこだわっています」。ふっくら炊き上がったご飯はほのかな甘みを感じる。
小鉢の里芋はホクホクでほどよく味が染み込んだ絶妙な煮込み具合。きゅうりのぬか漬けも、上品な酸味を味わえる。出される一皿一皿すべてに丁寧な仕事を感じることができる、全方向に隙のないランチだ。
わざわざ食べにいく価値あり! 新しいおいしさを感じるもつ煮込み
ランチメニューではもつ煮込み定食1000円も人気だ。具材は牛白モツ(大腸)とネギ、豆腐だけという、いたってシンプルなもつ煮込み。一口いただくと、上品な甘みと旨味に驚く。うーん、おいしい。この上品な甘みは、牛白モツの脂によるもの。もつ煮込みの新しいおいしさとの出合いだ。
このシンプルで上品な味の秘密を伺うと、「モツを丁寧に時間をかけて下処理することが大切なんです」と太郎さん。寿司店で修業したときの下ごしらえの経験が活きているそう。腕利き料理人による丁寧な仕事が格別の“おいしい”につながっている。このもつ煮込みをいただくためだけに新大久保まで足を運ぶ価値はある(断言)。筆者にとって新大久保は韓国料理を食べにいくだけの街ではなくなったようだ。
新大久保でこんなにレベルの高い和食のランチをいただけるなんて。大満足でした。ごちそうさまでした。
本格的な日本料理をいただけて、吉野さんご夫婦の和やかな雰囲気も楽しめる、コリアンタウン新大久保のオアシスのような『日本料理 吉の』。このお店を知った今、新大久保という街への認識を改めることになりそうだ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎