パリッとした生地が美味! 手土産にも人気のミニデニッシュ
店内にある6つのテーブルに加えて、テラス席がありカフェとしても人気のパン屋さん『トラスパレンテ 中目黒』。
カウンターに並ぶパンは実に種類豊富だ。小さいサイズのものが多いので、イートインでは一度に複数の種類を食べる人が多い。
いちばん人気はミニデニッシュのガッティ。ひと口サイズで、中央にイチジク、オレンジ、アプリコットなどフルーツが美しく鎮座している。デニッシュ生地はパリッと軽く、印象的な食感が楽しめる。味の良さはもちろん、食べやすいので、手土産にまとめて買う人がいるというのもうなずける。
ランチにぴったりなのは、イタリアの焼きサンドイッチ、パニーニ。イートインでは半分に切って温めて提供してくれる。定番のゴルゴンゾーラとベーコンとじゃがいものパニーニは、ボリュームのある具材にピザソース入り。プレスされてパリッとしたパン生地の中から、コクのあるチーズとピザソースが噛むたびに口の中に広がる。
ひと目でチーズたっぷりとわかるビアンカは、チーズ好きにはたまらない味。少し温めるとチーズがとろける。幅広い年齢層に人気で、テイクアウトで買う人からも、温めて欲しいという希望が多いとのこと。
住む・働く・遊ぶ。中目黒での過ごし方に応える
オーナーシェフの森さんは、18歳で中目黒のレストランで働いた経験から、20歳のころにはいつか中目黒でお店を持つことを目標としていた。当時から、店名も現在のトラスパレンテにしたいと考えていたとのこと。その理由を「音の響きがいいことと、お客様に向けてクリアな気持ちでモノづくりをしたかったから」と話す。
当初は料理人志望だったが、ホテルに就職して、パティシエの道へ。その後、3年半イタリアに滞在して、パンとケーキを修行。念願だった中目黒でパン屋として独立した。
「イタリアでは、パンとケーキの垣根がないことがいいと思いました。どちらも扱うカフェでは、エスプレッソにクロワッサンを合わせて朝食にし、ランチはパニーニを食べる。そのそばで、ショーケースにはケーキがたくさん並んでいます。ひとつのお店で朝、昼、夜のニーズにあう、パンとケーキのお店をやりたいと思いました」
『トラスパレンテ中目黒』は朝9時から営業していて、古くから近所に住む人が食パンを買いに来たり、ランチにはオフィスビルで働く人がランチを食べに来たりする。もちろん遊びに訪れる人も、カフェとして利用している。
現在は『トラスパレンテ 中目黒』の隣にあるテイクアウトの洋菓子店『アトリエ トラスパレンテ』を設けている。そこで作るケーキはカフェでイートインも可能。お昼過ぎには店内のショーケースに並ぶ。まさに森さんがイタリアで気に入っていたお店の形が実現されているのだ。
『トラスパレンテ』では、なるべく国産の素材を使って、さらに少量ずつ多品目を数回に分けて焼き上げるようにしている。それも森さんがイタリアでの経験から生まれた方針だ。
「たとえばジェラート屋さんも、売り切れてから、また補充されるようなお店の方がおいしいと感じました。決まった時間に効率的に作るよりも、1度に作る数は少なくても1日に何度も回転させるように作る方がおいしさを保てると考えています」
13のお店が持つそれぞれの特徴。中目黒店はほんわか
都内だけでなく、神奈川や静岡にも店舗があるが、パンはすべて店舗で粉から手作りしている。そのことを逆手にとって、『トラスパレンテ』では、店舗ごとに品揃えを変えているというから、他のお店にも足を運んでみたくなる。
お店作りには各店舗の店長の意向が反映されている。例えば中目黒店は、販売スタッフのユニフォームに頭に巻くヘアバンドが取り入れられている。中目黒店の店長、吉岡しおりさんは、15年前のオープンから3カ月目にスタッフに加わったという古株。
「休みの日には他のパン屋さんに行くんですけど。同じようにワクワクしながら、来てもらえるようなお店にしたいと思っています」と笑顔で話す。丁寧なパン作りとほんわかした雰囲気が味わえるお店は、中目黒の癒やしスポットにもなっているのかも。
取材・撮影・文=野崎さおり