肉のヤザワミートがプライドをかけた揚げ物料理店
黒毛和牛で有名なヤザワミートが運営する揚げ物料理店が五反田にあると聞いて、どんなとんかつをいただけるのか興味津々。早速、ランチタイムにあわせて五反田へ向かった。
お店に到着し、ガラスのドアを開けて店に入ると、オープンキッチンに向かい合うようにカウンター席が並ぶ。上品な作りのカウンターは、とんかつ店というより、レストランバーのような落ち着いた空間だ。
「当店は精肉卸業者ヤザワミートの直営店として2013年4月に開店しました。ヤザワミートとしては初めての“とんかつ”をメインとした揚げ物専門店です」と教えてくれたのは、店長兼料理長の丸山卓也さん。ハンバーグで人気の『ミート矢澤』やハンバーガー店『BLACOWS』などさまざまなお店で経験を積み、2015年から『あげ福』で腕を振るっている。
とんかつに使う豚肉は岩手産の岩中豚。赤身と脂身のバランスがよく、低温で火を通すと、ジューシーで肉自体の旨味を味わえるそう。多くの人に愛されているとんかつを、肉の質、鮮度、火入れにいたるまで一切の妥協なく、こだわり抜いて提供している。丸山さんの自信あふれるお話に期待が高まる。
あげ福自慢の揚げ物3点が勢ぞろいのランチをいただく
丸山さんにおすすめランチメニューを聞くと、ヤザワミートが自信を持って提供する鶏・豚・牛を一度で味わえる肉ミックス2400円がおすすめだそう。早速、注文して出来上がりを待つ。
「チキンカツ、とんかつ、メンチカツでそれぞれ揚げ時間と油の温度を変えています。とんかつは低温でじっくりと揚げ、チキンカツは高温でさっと揚げます。メンチカツはその中間くらいなんです。」と丸山さん。
3点を同時に出せるように、まず、低温油用の鍋でとんかつを揚げ始め、少し時間を置いてから中温用でメンチカツ、そして最後に高温用でチキンカツを揚げ始め、同時に仕上がるようにする。余熱で火を入れる時間を含め、一番おいしく仕上がるタイミングを逆算して調理する。まさに達人の技だ。
まずはヒレカツを藻塩でいただく。一口いただくと、ふわっとした衣の食感とヒレ肉のやわらかさに驚く。ヒレ肉の甘みと旨味が合わさって口の中に広がっていく。口当たりがまろやかで尖っていない淡路産の藻塩は、揚げたてのとんかつそのものの味を引き立てる。
このまま藻塩でいただきたいが、次は常連客に大人気という自家製ジンジャーソースでいただく。豚肉と生姜の相性がいいのは豚の生姜焼きで経験済みだが、このジンジャーソースは、しょうがの味わいと深みのある醤油ソースでとんかつのおいしさをさらに一段引きあげている。
次にメンチカツをいただく。ジンジャーソースをかるくかけ、一口いただくと、あふれる肉汁と牛肉の風味に驚く。そして黒毛和牛の上品な旨味とジンジャーソースの旨味が合わさって口の中に広がる。玉ねぎの食感も味わいを引き立てる。
メンチカツの残りは特製とんかつソースでいただくことにする。あげ福特製とんかつソースはもちろん無添加。黒酢と黒砂糖を使い、酸味と辛味を抑えた何でも合う万能ソースだ。この特製とんかつソースは販売もされている。
これがササミ?と驚くチキンカツ。こだわりの詰まった絶品揚げ物定食を堪能
次に一口チキンカツをいただくと、しっとりしたやわらかさでジューシーな食感。さらに高温で揚げているため旨味がしっかりと閉じ込められている。今までのササミのイメージとはまったく違う食感と味わいだ。タルタルソースとの相性も言うことなし。
ご飯やつけあわせにもこだわりが満載だ。米は山形産のつや姫を店内で精米しているそう。しっとりとした甘みがあり、揚げ物のおいしさを引き立てている。
とん汁は4種類の味噌を合わせ、やや甘みのある深い味わいに仕上がっている。具は岩中豚の切り落とし、だいこん、ねぎ、ごぼう、にんじん、じゃがいもと充実している。
すべてが高い次元で1つになった肉ミックス。『あげ福』自慢の揚げ物を一度に味わえる定食は料理長のこだわり満載でもう何も言うことがありません。大満足です。ごちそうさまでした。
また近いうちに、ジンジャーソースをかけた揚げたてとんかつをいただきに来店するだろうと確信しながらお店を後にした。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎