近年整備された公園も増えた池袋だけど、街っ子はデパートの屋上を目指す。『西武池袋本店』の空中庭園の華やかさと『鶴仙園』に並ぶサボテンと多肉植物の、日差しを浴びて輝く水滴の美しさを、家でも味わいたい。目白の『切手の博物館』の隅っこにある『サボテンLABO』に行くと、今度は、瓶や貝殻で息づく多肉の寄植えに心ひかれる。
『京王百貨店 新宿店』屋上の『グリーンギャラリーガーデンズ』は、部屋を緑だらけにしてくれる観葉植物の宝庫。にわか庭師は、西新宿を背景にした屋外の花の苗も気になって仕方ない。
ゆるり味わう花と緑の山手線
小腹が空いたおじさんは、原宿駅の竹下口を降りて『ローランズ原宿』のオープンサンドを目指す。スタッフさんがブーケを作る様子を眺めつつ、女子ならインスタに上げるに違いない一皿をいただく。オシャレついでに目黒の東京都庭園美術館。旧朝香宮邸や展覧会を見る前に、『Café TEIEN』でデザートを。甘みを抑えたスタイリッシュな自家製ケーキが、都心とは思えぬ豊かな自然と共に、心にしみてくるなぁ。
五反田から大崎にかけて、目黒川沿いや、足をのばして御殿山の桜並木と公園の植栽もたずねたい。日本の緑を見たら和菓子でしょ。田町の『秋色庵(しゅうしきあん)大坂家』の秋色最中をば。上野の山の桜を詠んだ句がきっかけで生まれた、春にこそふさわしい甘味なのだ。
山手線は東京駅へ。復活したヤンマービルがおじさんはうれしい。農業だって植物が相手。吹き抜けを彩る植栽は、令和の緑という現代性を感じる。いかすトラクターに乗ってみたい。農業の次は林業に。御徒町駅はひねって木工家具の『WOODWORK』で、樹木の第二の人生を愛でる。目の前の御徒町公園を借景に、美味なるコーヒーを。都内でも珍しい盆栽の常設販売所がある、上野の『グリーンクラブ』。今や盆栽は若者も外国人もファンが多い。ビギナー向けの小品あたりから始めたい。華奢な山野草もいいなぁ。
山手線園芸巡りも大団円。谷中霊園で我らが牧野富太郎博士の墓に参り、ソメイヨシノ発祥の駒込で先人の創意工夫に思いをはせ、ゴールは大塚駅のペンギン横丁。園芸おじさんお手製のあじさい通り。今年はどうかなぁ?
非の打ちどころのない庭園から道端の雑草まで、見どころ歩きどころはまだまだいっぱいある山手線沿線。乗れば乗るほど園芸愛は深まっていく、相思相愛かどうかはわからないけど……。
【池袋】西武池袋本店 食と緑の空中庭園
駅直結のボタニカルガーデン
季節感あふれる花々に囲まれた睡蓮の池を中心に、バラエティ豊かなフードとゆったり配置の椅子とテーブル。日没後のロマンチックな照明の中での散策も格別。都心とは思えぬ気分に浸れる、豊島区民の憩いの場。
・10:00~20:00(季節により変動)。
・☎03-3981-0111(大代表)
【池袋】鶴仙園
質量共に群を抜く老舗の底力
サボテンと多肉植物一筋に90年の老舗の3代目、靍岡秀明さんが経営する支店。千葉にある自社の栽培ハウスから次々入荷する、圧倒的な品揃えは壮観だ。屋上に注ぐ豊かな日差しに、サボテンたちもうれしそう。
・10:00~20:00、不定休(西武池袋本店に準じる)
・☎03-3981-0111(大代表)
【目白】サボテンラボ
小品豊富でビギナー大歓迎
長年多くの植栽プロデュースを手掛けてきた関口旻(あきら)さんが、『切手の博物館』内で営む、サボテンと多肉植物の専門店。博物館のイベントに合わせ、寄せ植えワークショップなど、初心者にも楽しく親しんでもらえる講座も多く催している。
・10:30~17:00、月休。
・☎070-1424-1166
【新宿】グリーンギャラリーガーデンズ 京王新宿店
異色の借景で緑を楽しむ
2021年リニューアルした店内は、観葉植物や多肉植物であふれたグリーンスポット。一歩外に出ればガーデニング向きの苗や寄せ植えが所狭しと並び、その先には西新宿の高層ビル群。正にアーバンジャングル!
・10:00~20:00、不定休(京王百貨店に準じる)。
・☎03-5321-5353
【原宿】ローランズ原宿店
植物に愛でられてひとやすみ
花を身近に感じてほしいとフラワーショップが始めた、見て楽しく食べておいしいカフェ。食用の花を使ったメニューを、秘密の花園のような店内で。オープンサンドは見た目よりボリューミー。
・11:30~17:30LO(お花屋さんは~19:00)、無休。
・☎03-6434-0607
【目黒】東京都庭園美術館 Café TEIEN
美しい庭園は最大のごちそう
東京都庭園美術館内にあるモダンなカフェ。展覧会のコンセプトに合わせたオリジナルケーキを、手入れの行き届いた庭園を眺めながら、コーヒーや日本茶とともに。テラス席ファンが多いのも納得の心地よさ。
・10:00~17:30LO、月休(展覧会会期中のみ営業)。
・☎03-6721-9668
【田町】秋色庵大坂家
和菓子は季節の贈り物
元禄年間創業の和菓子の老舗。日本橋小網町に店を構えていた江戸時代、13歳で桜にちなんだ名句を詠んで人気となった当家の娘「お秋」の俳号を由来に作られた秋色最中200円は、小倉、黒砂糖、栗の3種類。
・9:00~18:00、日・祝と第1月休。
・☎03-3451-7465
【東京】YANMAR TOKYO
八重洲口で農業の明日を考える
2023年1月オープン。お米や農業の魅力を発信する米ギャラリーやレストラン、全国のこだわり米のショップ、地方の物産やグッズ販売店などで構成されている。イベント会場にもなる地下のフリースペースから2階まで吹き抜けの壁面を、人工育成の緑が囲んでいる。
ヤンマー米ギャラリー
入館料無料。10:00~17:00、月休。
【御徒町】WOODWORK
台東区生まれのモダン家具
明治創業の老舗材木店は、若き職人たちの腕とセンスが生み出すモダンな注文家具店に。そんな空間に似合う観葉植物たちも販売。併設のカフェの芳醇なコーヒー&スコーンで、自宅のイメチェンでも考えるか。
・11:00~18:00(カフェは~16:30LO)、火・水休。
・☎03-3833-2797
【上野】上野グリーンクラブ
都内屈指の盆栽販売店
百年近い歴史を持つ『日本盆栽協同組合』の本部があり、多くの展示会や講習会を開催している。小品や山野草から大きな盆栽、道具や鉢、書籍まで扱う常設売店には詳しいスタッフも常駐する、都内では貴重な存在。一隅には盆栽神社も。
・9:00~17:00、不定休。
・☎03-3821-5193
園芸さんぽのおすすめ道具
やや大きめノートなら書くだけでなく、絵心ある人はスケッチを、押し花を挟むのにも使える。種を拾った時のビニール袋や観察用のルーペ、採寸するためのメジャーも携帯したい。ハサミを使う時は、公序良俗に従うようにね。近頃はカメラを向けるだけで花の名前を教えてくれるスマホアプリもいろいろあるので、使い勝手の良いものを探して。
撮影=高野尚人
『散歩の達人』2023年4月号より