のびのび暮らせる環境がDIY精神を育む

まず北口を出ると、タワーマンションや今どきの商業施設が目に入る。整備されたニュータウンだなぁと思いながら北へ5分ほど歩くと、畑の面積がどんどん増えてくる。その規模に圧倒されていたら、「夫が子供時代の農地は、こんなもんじゃなかったそうです」と、『サニーサイドラボ』のオーナーの関なをみさんが教えてくれた。確かに、畑と畑の間に真新しい一軒家が並ぶ宅地が点在しているが、以前はそこも畑だったのだ。

年々農地は減っている一方、ここ数年で清瀬野菜の注目度は上がっている。そのきっかけの一つが、関ファームの関健一さんが仕掛けた「清瀬ベジフルパーティー」だ。“東京の野菜を東京に住む人へ”をモットーに若手でグループを作り、市場を通さない直売に力を入れている。「一生懸命農業に取り組んできた先輩方の影響もあって、やる気のある若手農家が多いんです」。実家が農家の土屋圭緒理さんが始めた『いちご農園tucci』も、「周辺の農地が減っていくのを見ていて何かできたら……」と、ぼんやり考えていたそう。同じく、農園の使われていない土地にオープンしたのが『サニーサイドラボ』。セキ園芸に嫁入りした関さんの、清瀬暮らしをもっと楽しく!という思いが動機だとか。

南北で正反対の雰囲気が面白い

再開発された町並みとのどかな畑のギャップに驚きながら南側へ向かうと、またガラリと景色が一変。商店街のふれあいど〜りには、懐かしい昭和風情が残されている。通り沿いでネーミングにひかれた『みんなのタコ公園』は、食堂だけど公園のようなお店。清瀬出身の店主・長谷川達人さんが、「地元の人たちが好きなことで遊べる場所にしたい」と、2019年にオープンした。すぐ近くの住宅地では、2020年に地元の工務店・相羽建設による『a-soko』が始動。交流の場として、つながりがつながりを呼んでいるそうだ。

そういえば、北口には開店から35年経ち、地元民の日常の一部になっている『Coffee Houseるぽ』や、子供たちのよりどころ的存在の駄菓子店『島田商店』も。新旧を問わず、「地域のために何かしたい、もっと居心地のいい街にしたい」という思いにあちこちで出合った。たまたま清瀬に住み始めたという『パンのみせ アンヌアンネ』の店主・安井健介さんは、「東京なのに東京っぽくないところが気に入ってしまって……」と話す。

同じように思う人が多いのか、新しい住宅も増えているように感じる。広大な畑や豊かな自然、整備された快適な町並み、レトロな商店街……。たくさんの表情を持つ景色にわくわくする。清瀬は住みやすい町の穴場ナンバーワンかも⁉

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サニーサイドラボ

清瀬ライフをみんなで楽しく!

セキ園芸の関なをみさんが開いたシェアキッチン&スペース。自慢の果物を使った自家製ジャムや手作り雑貨の販売のほか、ランチやスムージーなども提供。

・10:00~15:30(出店により異なる)、木・土(月は隔週)休。
・☎︎非掲載
・Instagram:@sunnyside_labo

暖かい季節は、大きなイチョウの木の下のちゃぶ台が気持ちいい。「日常の中でひと息つける特別な場所になるといいな」
暖かい季節は、大きなイチョウの木の下のちゃぶ台が気持ちいい。「日常の中でひと息つける特別な場所になるといいな」

関ファーム

トマトと農業と清瀬を盛り上げる!

「データの力と第六感でトマトを極めます!」
「データの力と第六感でトマトを極めます!」

江戸時代から続く老舗農園で、関健一さんが17代目。統合環境整備システムで養液栽培される「COCO TOMATO」は甘みがまろやかで、深い旨味に感動! 清瀬の農業を盛り上げるための活動にも積極的。

・直売所は9:00~売り切れ次第終了、水・日休。
・☎︎非掲載

市内に農産物直売所は約50カ所も。軒先の小さな売り場も合わせたらもっとあるかも。
市内に農産物直売所は約50カ所も。軒先の小さな売り場も合わせたらもっとあるかも。
畑の中の道も生活に欠かせない。
畑の中の道も生活に欠かせない。

パンのみせ アンヌアンネ

地元食材への愛情あふれるパンがずらり

自慢はふわモチの角食324円とジューシーなレーズンパン453円。清瀬野菜をトッピングしたタルティーヌやピザなど、一つひとつ手の込んだパンが並び、昼時は約80種類も。店先で清瀬ベジフルパーティーの野菜も販売。

・10:00~19:00、日・月休。
・☎042-495-4090

創作和菓子 ほのか

清瀬の手みやげには和魂洋才の和菓子を

店主の橋本喜明さんは和&洋菓子と日本料理の経験あり。「くりきんとんしょこら」やチーズと小豆、カステラを合わせた「清瀬」など、洋風和菓子が面白い。いちご大福は定番とミルクあんの2種類。

・10:00~18:00、月休(祝の場合は翌休)。
・☎︎042-493-5534

みらい清瀬新鮮館

わが街自慢の野菜や加工品が集結

地元農家のとれたて野菜や加工品が並ぶ。清瀬市役所の屋上で作られたハチミツのジェル976円やおなじみのニンジンジャム453円のほか、清瀬市内の酪農家「増田牧場」の自家製アイスクリーム380円も発見。

・9:00~16:00、日・祝休。
・☎042-491-4500

a-soko

この場所でつながったみんなの暮らしを豊かに!

「みなさんのおかげで楽しい場所に成長中です!」
「みなさんのおかげで楽しい場所に成長中です!」

工務店の相羽建設が運営する会員制コミュニティースペース。作り手たちが出店する「倉庫にクラフト。」のほか、ソーイングの教室や不定期カフェなど多彩な企画があり、今後も楽しみ。

・☎042-395-4181(相羽建設内)
・スケジュールはInstagram(@a_soko.kiyose)を要確認

清瀬金山緑地公園

透き通った清流は地元民の努力のおかげ

市内最大の公園。脇を流れる柳瀬川は約40年前は汚かったというが、「川づくりの会」による定期的な清掃のおかげで清流が復活。河原では予約不要&無料でバーベキューが楽しめる。

けやき通り

個性豊かな屋外彫刻に注目

約200本のけやきの木が立ち並び、春の新緑と秋の紅葉は見もの。通りの両側に設置された24基の彫刻は、国内外の著名な作家の作品もあり、じっくり見て歩くのも楽しい。

【閉店】Coffee House るぽ

時間の流れがスローな心安らぐ別世界へ

のどかな風景の中に立つ三角屋根のクラシカルな洋館。ワッフルやケーキから食事メニューまで多彩に揃い、客層も幅広い。オーナーの森尻安夫さんいわく、「素敵な空間に育ったのはお客様のおかげです」。

・8:00~20:00(祝は~19:00)、日休。
・☎042-491-9020

いちご農園tucci

娘の熱意を受けて家族総出でイチゴ作り

会社員を辞め、イチゴの道へ。2022年12月にオープンしたばかりだが評判は上々だ。よつぼし、かおりの、紅ほっぺの3品種で、ハウスのほか、路上や実家の直売所で販売。3月頃からイチゴ狩りも開催予定。

・10:00~15:00、不定休。
・☎なし
・Instagram:@tucci_kiyose

「予想以上に大変だけどチャレンジしてよかった!」
「予想以上に大変だけどチャレンジしてよかった!」

みんなのタコ公園

“こんな場所があったらいいな”の思いをつめこんで

たくさんの漫画や遊び道具が置かれ、好きなことをしてOK。東映のアニメーターだった母親譲りで絵が得意な店主・長谷川達人さんが描く日替わりの黒板アートに注目! 毎週木曜には長谷川さん母のお絵描き教室も。

・11:30~23:00、火休。
・☎042-497-9420

「沖縄出身の妻が作るタコライスも自慢だよ!」
「沖縄出身の妻が作るタコライスも自慢だよ!」

島田商店

来るもの拒まず。いつでもおいで!

小学校が終わると、わらわらと子供たちが訪れる。店先のゲームや駄菓子のほか、店主の島田恵利さんとおしゃべり目当ての子も。「どこまで続けられるかわからないけど、できる限り頑張りたい」。

・14:00~18:00(土・日・祝は11:00~)、不定休。
・☎080-5177-5818

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開業100周年のイベントもお楽しみに

清瀬駅は2024年で開業100周年。(写真提供=清瀬市)
清瀬駅は2024年で開業100周年。(写真提供=清瀬市)

大正13年(1924)の開業当初は一日数十人の乗客だったが、街に病院が増えてからにぎわうように。写真は1953年の2代目駅舎。1971年に橋上化された。

取材・文=井島加恵 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2023年3月号より