ベーカリーのイートインスペースで提供されているコーヒーや、カフェのパンメニューで、「(ご近所の)『〇〇』のコーヒー豆(パン)を使ってます」という説明をよく見かけないだろうか。地元の付き合いもあるだろうけど、プロが選ぶのだから、たいてい味に間違いはない。ここで新しいパンやコーヒーに出合うこともある。
『NORIZ COFFEE』がオープンしたとき、『中田ベーカリー』の中田さんは「素敵なカフェができた!」とわくわくしたそう。その後、地元つながりから交流がはじまり、『NORIZ COFFEE』で中田さんのパンを売っていたことも。
また、『Boulangerie Django』と『Single O Hamacho』は、コラボメニューをつくったり、お客さんを呼び合ったりして、新しい相乗効果が生まれていた。カフェのあとにパンを買いに行くお客さんも多く、その逆も然り。2つの店を行き来する人が増えれば街も盛り上がるし、散策するのも楽しくなるし、いいことずくめだ。
今までの経験からぼんやり感じていたけれど、あながち間違いではなかった。皆さんもぜひ“なかよし”目線でチェックしてみて。まだまだほかにも名店コンビが見つかりそう。
パン屋『中田ベーカリー』 × 喫茶店『NORIZ COFFEE』[武蔵境]
お客さん思いのやさしさに癒やされる
パン作りの原動力はお客さんの笑顔『中田ベーカリー』
「おいしかったって言ってもらえるだけで十分」と話す店主の中田良子さん。脱サラでパン修業をはじめ、吉祥寺のパンイベント「パンイチ!」の主催などを経て、2022年6月にここをオープン。見るだけでも楽しめるように、ベーグル、総菜や菓子パン、ソフトからハードまで約30種類が並ぶ。「種類が豊富なら、どれか好きなパンが見つかるかもと思って」と、とにかくお客さんへの愛があふれている。
いつも変わらない空間は温かく心地よい『NORIZ COFFEE』
店主の田中宣彦さんは武蔵境在住。仕事帰りに立ち寄れるカフェがなく、「だったら自分で作ろう」と一念発起して開業。一年を通し、酸味と苦みを抑えた飲みやすいブレンドを含む7種の豆と、妻・遥さんが作るケーキを用意している。「いつ来ても同じ場所に同じものがあると思ってもらいたいんです」と田中さん。ほっとくつろげるのは、「いつもの空間」がやさしく迎えてくれるからなのだ。
パン屋『Boulangerie Django』 × 喫茶店『Single O Hamacho』[日本橋浜町]
コアなファンをもつ2軒が浜町エリアに人を呼ぶ
ここに来ればいつも新しい発見がある!『Boulangerie Django』
ビーツのフレッシュさが際立つパン、サクサクしっとりのアップルサイダードーナツなど、個性あふれるパンが話題。店主の川本さんが海外のレストランやベーカリーを巡る中で蓄積されてきた情報が自由な発想の源だ。最近では、ご近所の縁で『Single O Hamacho』のコーヒー豆を使った「エスカルゴ」が仲間入り。もっちり生地もおいしく、コーヒー風味と渋皮煮の絶妙なバランスもさすが!
スペシャルティーコーヒーを10秒で!『Single O Hamacho』
オーストラリアの人気カフェ『Single O』の日本における旗艦店として2021年10月オープン。本国と同様、タップの下にカップを置くとコーヒーが出る「コーヒーオンタップ」がおもしろい。豆は専属のバイヤーが農園から仕入れ、ベストな甘みが現れるタイミングに合わせて焙煎されている。奥行きのあるクリアな味わいにはファンが多く、『Boulangerie Django』の川本さんも常連客の1人だ。
パン屋『AOSAN』 × 喫茶店『niwa-coya』[仙川]
共通点はカラフルエプロンとわくわく気分
気遣いと丁寧なパン作りが人気の秘訣『AOSAN』
開店前にずらりと並ぶ人たちのお目当ては、角食。軽やかで口どけがよく、毎日食べても飽きない味だ。しかも1斤280円! 毎日の生活の中で当たり前のようにパンを食べてほしいという店主・奥田充央(みつおう)さんの思いが表れている。奥田さんが自宅で使っていたというアンティークの棚に、素朴なパンから総菜パン、ハード系が八百屋のようにぎっしりと並ぶ空間も、楽しくてわくわくする。
個性豊かな作品と遊び心あふれる空間が楽しい!『niwa-coya』
ご夫婦が営むギャラリーカフェ。ポップな内装やギャラリースペースに、わくわくする手作りの作品と世界の雑貨が並んでいて明るい気分に包まれる。カフェでは野菜たっぷりのお膳やカレーのほか、『AOSAN』のイギリスパンを使ったメニューを提供。笠原文代さんは、「使い勝手が良くて、いろんなものを塗っても負けない味なんです」と絶賛。この店に来たらイギリスパン派になる!?
取材・文=井島加恵 撮影=山出高士 加藤熊三(NORIZ COFFEE)
『散歩の達人』2023年2月号より