気さくな店主がいる居心地のいいお店でランチをいただく
おいしいオムライスを食べたくなり、いいお店はないかと探していると、毎週火曜と水曜の2日限定でこだわりのオムライスランチをいただける店があると聞いて、早速新橋へ。
JR新橋駅烏森口を出て、おじさんの聖地ニュー新橋ビルを横目に見ながら徒歩3分のところに本日の目的のお店『隠れ家ダイニング なべや』がある。まさに路地裏の居酒屋激戦区のど真ん中だ。
階段を上ってお店に入ると、スタッフが元気のいい声で迎えてくれる。店名のとおり、まさに「隠れ家」のような空間だ。入り口から向かって左側にオープンキッチンとカウンター席。右側には4人用テーブルが4つ。テーブル席は椅子ではなく、ベンチタイプだ。
「この店を開いたのは2009年です。それまでは高級フレンチや日本食のお店で料理長をやっていました」と店主の渡部栄さん。スタッフや常連客からは親しみを込めて“なべさん”と呼ばれているそう。店名は、なべさんのお店だから『なべや』。
「以前勤めていたお店では厨房で調理していたため、お客さまとお話をする機会もほとんどなかったんです。自分のお店ではお客さまとコミュニケーションが取れるようにオープンキッチンにしました。客席も私が直接見ることができる席数にしているんですよ」となべさん。ランチタイムの間もお客さんとなべさんの笑い声が絶えない。なべさんの人柄を慕って通う常連さんも多いそう。
なべさんと話していると、この激戦区で10年以上もお客に支持され続けている理由がわかるような気がする。フレンチや和食の経験を活かしたこだわりの料理というだけではなく、なべさんの気さくな人柄も人気の理由のようだ。
火曜と水曜のみ! 洋食ランチでこだわりの料理をふるまう
ランチの営業は毎週火曜と水曜の2日のみ。メニューは定番がなべや特製焼ハンバーグ980円とオムライス 煮込みハンバーグ付き980円、他に週替わりメニューが1つあり、あわせて3種類を用意。
オムライス好きの筆者が注文するのはもちろん、オムライス 煮込みハンバーグ付き980円。早速注文し、オープンキッチンでなべさんがフライパンを振る姿を眺めながら出来上がるのを待つ。
テーブルに届いた途端、つい「おいしそう!」と声が出てしまったが、それを聞いたスタッフさんが「はい、すべて手作りなんで、とてもおいしいんですよ」とニコリ。ハンバーグが乗ったオムライスと、そこにたっぷりかかったデミグラスソース! オムライスとハンバーグの組み合わせは、洋食メニュートップ2の黄金コンビだ。
さっそくいただく。オムライスはたまごかた焼きのしっかり食感。ケチャップご飯はしっとりして程よい甘み。たまご焼きとご飯との食感のバランスが、さすがベテランシェフの腕を思わせる。ハンバーグにかかっているデミグラスソースをからめていただくと、おいしさが倍増する。
ハンバーグは牛肉と豚肉の合挽き肉を使っている。「ハンバーグのデミグラスソースはフレンチレストランで作っていた時と同じもので、赤ワインも贅沢につかっているんですよ」となべさん。本格的な深みのあるデミグラスソースだ。
具がたくさん入った味噌汁や自家製ドレッシングのサラダにも大満足。付け合わせにもひと手間をかけたこだわりを感じる。
おなじみの洋食メニューのオムライスとハンバーグ。どちらもフレンチの経験を活かし、ワンランク上の一品に仕上がっている。それぞれがそれぞれの味を引き立てていると言ってもいいだろう。そんな2つの料理を一緒にいただける幸せを感じた。
ランチの営業を週に2日のみとしている理由を聞くと、「忙しいので、できれば夜の営業のみとしたいんですが、お昼に来てくださるお客さまとのつながりも大切にしたいので」。ランチタイムに来る客は、ほとんどが常連客だそう。お客さまとのコミュニケーションを大切にしているなべさんらしい答えだった。
うちは居酒屋ではなくお客さまが食べたいものを出す“台所”
『隠れ家ダイニング なべや』は、居酒屋ではなく“台所”だそう。普通の居酒屋のようにメニューから料理を選んでもらって作るのではなく、店主自らが選んだ旬の素材で作った料理をふるまうスタイルだ。お客さんが食べたい料理があれば、要望に合わせて作るという。まさに“なべさんの家の台所”のような店なのだ。
夜は味と値段にこだわったコース料理が中心。なべさんが厳選した日本酒も楽しめる。食べたいものがあれば相談してみよう。なべさんならきっと答えてくれる。
ランチタイムでは洋食メニューがメインだが、夜は和・洋のメニューをいただける。フレンチと日本料理、どちらにも精通するなべさんならではの幅ひろいジャンルの料理が楽しめる。次回はおすすめの日本酒をいただきながら、ゆっくりと楽しみたいと思った。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎