元寿司職人が営む魚介系ラーメン店
“俺の出番”と書かれ、男らしく掲げられた暖簾(のれん)をくぐると、威勢よく「いらっしゃいませ!」の声が響き渡る。店主の涼やかささえ感じる雰囲気に、ラーメン屋はこうでなくてはと再確認。壁面には写真入りのメニューや、木の短冊メニューが掲げられている。とにかく数が多いのも驚きで、中には期間限定くり~む麺やイタリー麺、うまとろ豚カレーといった変わり種メニューもある。
店主の福島康友さんは元寿司職人という異色の経歴だ。「大塚で父と一緒に寿司屋を営んでいました。まかないで作ったラーメンをお客様に出したところ評判となりまして、そこでラーメンづくりにはまっていったんです」と話す。寿司屋の客に出すだけにとどまらず、現在の店舗を借りて、昼はラーメン、夜は大塚の寿司屋と二足のわらじをはきながら営んでいたという。
「和風ベースのスープにこんな味が合うんじゃないかとか、お客様からも今度こんな味を作ってよという感じでメニューが増えていきました」と福島さん。
寿司屋で培った仕入れルートを使い、和食の技術を基本としたラーメンは、「いつ食べても体が喜ぶ飽きのないラーメン」を目指している。
素材選びからぬかりなし。自家製を徹底した1杯
基本となるスープは、厳選された産地直送の魚介系、カニや甘エビ、アゴ、カツオ節、煮干し、サバ節など10種類以上を使用し、動物系は国産丸鶏やゲンコツを合わせたWスープだ。仕入れた魚介は、-60℃の冷凍庫で保管することで、鮮度を失うことなく保管できるという。これも寿司屋のころから続けているワザの一つ。
香味油もラードにエビ、ショウガ、ニンニク、シイタケ、ネギ、厚削りなど5種類を合わせたものや、味噌ダレには自家製の合わせ味噌など、ラーメンに使うものはすべて自分で作る。
トッピングのチャーシューももちろん自家製で、国産の極豚肩ロースを使っている。しっかり血抜きして下処理をした上で、1時間煮込み、1時間タレに漬け込む。こうしてじっくりと中まで火を通すことで、豚肉の旨みを閉じ込めたチャーシューを作ることができるのだという。最後に焼くことで、旨みが強いチャーシュー麺には太麺、ほかのラーメンには味に合わせて細麺、中太麺を使い分ける。味のバリエーションに合わせて作る1杯は、どんなラーメンが出てくるのか、ますますテンションがあがってくる。
まろやかで香り高い和風ラーメン
この店で味わうならまず第一に「和しお」をおすすめしたい。スープのやさしい風味と、カツオ節、ユズの風味が加わって、さわやかな飲み口で飽きの来ない1杯だ。塩ダレが基本のスープに深みを与え、コクのある仕上がりとなっている。
全体的にやさしい味で、スープの最後の1滴まで飲み干してしまった。三つ葉やネギ、ワカメやメンマなどのトッピングもシンプルながらも食べごたえがあり、上品な1杯となっている。
自家製秘伝味噌も大人気!
熟成みそや、うまとろ豚カレーも人気メニューなので、紹介する。
熟成みそは、基本スープに自家製の秘伝味噌ダレを加え、フライドガーリック、一味、ゴマ、コーンなどをトッピングしたコクのある1杯。だが、一口飲むとさらりとした感じで、しつこさは全くないのであっさりと食べられてしまう。
うまとろ豚カレーは、トッピングに豚バラ肉、焼き半熟玉子、コーンなどを合わせている。そば屋のカレー南蛮のようなあっさり感で、ピリリとした刺激がありながらも、玉子や豚バラ肉の旨みでまろやかだ。
メニューが多いので、これ以外にも気になる味も多数。次回足を運ぶのもまた楽しみになった。
取材・文・撮影=千葉香苗、構成=アド・グリーン