「ドリンクとフード、両方美味しい」を目指して
清澄白河駅からほど近く、川を渡った先の静かな住宅街の中で営業を行うカフェが『iki ESPRESSO』だ。平日の午前中にも関わらず、多くの客が入れ替わり立ち替わり訪れる。店内は、コンクリート打ちっぱなしのシンプルで落ち着いた印象。カウンターのガラスケースの中には、マフィンやケーキなどの焼き菓子がずらりと並んでいる。ニュージーランドのカフェスタイルを取り入れているだけあって、海外のカフェのような雰囲気を随所に感じる。
まず店を訪れたら、カウンターでオーダーと会計を済ませるのがこの店のルール。これも、ニュージーランド流だ。メニューはフード・ドリンクともに充実しており、どれもニュージーランドのカフェでは一般的なラインナップがそろっている。自社焙煎のコーヒー豆を使用した本格コーヒーと焼き菓子でカフェタイムを楽しむのはもちろん、ワンプレートディッシュなどでモーニングやランチを取るなど、幅広い使い方ができるのが魅力だ。
フードはオールデイメニューとなるため、営業時間中はいつでもオーダーできるのだが、ランチ時に特に人気なのは「エッグベネディクト」だそう。この店では、イングリッシュマフィンを使わず、ハード系のパンを使用しているのが特徴で、その上にスモークサーモンとポーチドエッグ、そしてオランデーズソースで仕上げる。サーモンの塩気に、半熟卵と濃厚なソースが絡み合い、ひと口で何層もの味わいが楽しめる一品だ。スモークサーモンのほかにスモークベーコンが選べるほか、ベジタリアンメニューにアレンジすることも可能。
オーナーの原瀬さんは、生粋のラガーマン。学生時代をラグビーに費やし、大学卒業後はラグビー強豪国のニュージーランドに渡ってプレーを続けてきた。そんな海外生活の中で、身近な存在だったというカフェ。20代後半でラグビーを引退し、その後の人生プランについて考えていた時に、日本にもニュージーランドのカフェスタイルを広めたいと考え、馴染みの街だった清澄白河にこの店をオープンした。「ドリンクとフード、どちらも本格的でおいしい」という、ニュージーランドのカフェの特徴にこだわり、本場に負けないクオリティを目指してきた。昨年9月には、2階に本格料理とクラフトビールやニュージーランドワインが楽しめるダイナー『little iki』をオープンし、ニュージーランドスタイルをさらに広める場としている。それは、現在もニュージーランドに拠点を置く原瀬さんだからこそできるリアルな店づくりなのである。
この店を訪れる客層は幅広く、老若男女、さらには人種を問わず、さまざまな人が満足そうに店を利用している姿が印象的だった。“地域密着”を目指して、地元の人からも愛される店づくりを心掛けているという。時折、店員さんがお客さんに気さくに声を掛ける光景を目にして、コミュニケーションを大切にするところにも海外のカフェらしさを感じた。
『iki ESPRESSO』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英