シンプルかつ究極!双麺らーめん醤油
「うちに来たらまずはこれを食べてほしい!」
そうマネージャーが話すように、『双麺』といえば、双麺らーめん醤油880円だ。
このラーメンには『双麺』の理念がすべて詰まっている。豚バラのチャーシュー、メンマ、海苔、刻み玉ねぎ、カイワレ大根と、洗練されたビジュアルだ。
見た目はよくある中華そばだが、レンゲでスープを掬うとその“異常さ”にすぐ気が付くだろう。粘性が少し高く、ひと口味わうとキリっとした醤油感とともに、濃厚な魚介の香りが鼻から抜けるのだ。香りの正体は“煮干し”。
「スープには大量の煮干しを使っています。煮干しはじっくりと数時間かけて煮込み、一番出汁といわれる部分だけを使用しています」
そうマネージャーは話す。なんて贅沢なんだ。上質な出汁だけを抽出した後、その煮干したちはサヨナラなのか。実際、味わいにもその原価率の高さは滲み出ている。
スープを飲み進めると、醤油の塩分や濃厚さを強く感じるようになり、煮干しのザラザラ感も増していく気がした。レンゲが止まらない。どんどん味が変わっていくのだ。
提供時の温度も風味に影響しているのだろう。スープ表面に浮かぶ油によって最後まで温度が維持されるので、底から引き上げた麺は常に熱々だ。
ラーメン作りのオペレーションに抜かりはない。完璧にコントロールされた温度だった。
スープに合うよう計算された特注麺!
麺はスープに合わせて作られた特注麺。
「お客さんが麺に求めるのは2つの要素。1つ目はツルっとした口当たり。2つ目は咀嚼したときの噛み応え、パツパツ感」
マネージャーが語ったこの言葉は、しっかりと『双麺』の麺に反映されている。
やはり素晴らしい麺だ。持ち上げるとしっかりスープも持ち上がる。
麺が唇を通過するときはツルっとしているが、嚙み始めるとパツパツとした食感とともに、鼻から抜ける小麦の風味も感じられた。
チャーシューはホロホロと崩れるバラ肉だ。脂身と赤身のバランスがよく、少しオイリーでこってりしている。
食事の中盤「少しこってりなモノを口に入れたいな」と思いはじめるタイミングでドンピシャなチャーシューだった。
「好きなようにラーメンを楽しんでほしい!」
マネージャーがそう話すように、ラーメンを味変できる調味料も豊富。酢やコショウなどの卓上調味料だけでなく、是非ともコールしてガーリックチップと自家製海老ラー油も試してほしい。
特にフライドガーリックは醤油と相性抜群だ。一気にジャンクになり、最後までラーメンを楽しめる。
さまざまなジャンルの飲食店を経験し、ラーメン業界に飛び込んだ
「ラーメンは1つの作品でありアートである。丼ぶりのうえで何かが欠けていても、何かが多くてもいけない」
そう話すマネージャーの田儀さんは、さまざまなジャンルの飲食に携わってきたオールラウンダーだ。
そんな彼は2020年ごろに、社長の人柄に感銘を受け、ラーメン業界に飛び込んできた。
「(他の飲食の業界とラーメン業界は)別世界だった」
そう振り返った田儀さん。ラーメンの難しさに驚きを隠せない日々だったそうだが、現在ではスープや麺の原材料の比率が緻密に計算されていることをはじめとした、ラーメン作り特有の面白さに、完全に虜になっている様子だった。
実際に『双麺』のラーメンを食べた筆者としては、田儀さんの発言すべてが腑に落ちる。
ラーメンのビジュアル、味のバランス、すべてが絶妙なバランスで構築されていた。
チャーシューの枚数は1枚、ネギではなく玉ねぎ、3本のカイワレ大根、まさに引き算の美学で作られた逸品はアートそのものだった。
コンセプトはたった1つ「お客さんが喜ぶことをやる」
こんなにも素材や仕込みにこだわり、美味しいラーメンを提供しているにも関わらず、田儀さんは謙虚にも「ラーメンは1つの商品。私たちのコンセプトはたった1つ『お客さんが喜ぶことをやる』です」と話す。
最後に、そんな『双麺』の掲げるコンセプトを象徴した店内を見てほしい。
1階と2階のギャップに驚いた。
リニューアルオープンによって、2階はお洒落な居酒屋スタイルにパワーアップしたのだ。昼間は2階もランチ用として解放されており、夜はお洒落な居酒屋に変身する。
ライトダウンされて、落ち着いた雰囲気の中で、お酒やアラカルトメニュー、ラーメンを楽しめる。
『双麺』が提供するのは1杯のラーメンではなく、楽しめる空間と時間だ。
錦糸町の駅近くで、お洒落な雰囲気とともにお酒を楽しみ、〆でラーメンを食べて帰る。
気さくな店員たちとともに『双麺』で最高の一晩を過ごしてほしい。
取材・文・撮影=KijiLife