シックな雰囲気で非日常を体感できる浴室
シックで落ち着いたトーンの壁面に、薄暗い照明。他の銭湯とは一線を画す雰囲気が『改良湯』の特徴だ。
かつては、男性は水色で女性はピンクを基調とした、「いわゆる銭湯」という感じだったと大和さん。
続けて、「温泉地に来たような、非日常的な雰囲気を作りたいと思ってこのようにしました。ゆったり入ってもらうには暗めの方がいいですよね」とのこと。
確かに、こちらで湯に浸かって目を閉じると、夢うつつにいるように意識がスーッと心地よいポイントに着地するのがわかる。そこに水音が耳をくすぐり、癒しの効果は抜群だ。
湯温は2種類。炭酸泉は37~38度で、中温風呂は41度。どちらもゆっくりとお湯を堪能できる温度だ。
そのお湯について、大和さんにこだわりを聞くと「軟水器を導入して、浴槽のお湯もシャワーも軟水にしました。化粧水のようにトロンとして肌触りがいいお湯になっています」とのこと。
軟水は、新陳代謝が活性化されるため湯冷めしにくく、刺激が少ないので敏感肌やアトピーの方にも優しい水。
石鹸やシャンプーの泡立ちもよく、湯あがりの肌や髪のきしみが少ないことで好まれている。
アウフグースを毎日実施!人気のサウナ
2018年のリニューアルで大きく変わったのがサウナ(別途450円)。2022年2月に広さをアップデート。約14人という男性サウナの収容人数は都内(しかも渋谷という都心)の銭湯ではかなり大きい。
女性用サウナは遠赤外線で温めるため、体を芯から温めることができて、入室から数分で大量の発汗が期待できる。男性用サウナは、対流式で20分に1回オートロウリュが出て体感温度がグッと上がる。
さらに、こちらも都内の銭湯では珍しく、アロマ水のロウリュとアウフグースが“毎日”実施されているのが嬉しい。ゲリラ的な開催なので、その時間に当たればラッキーだ!
アウフグースにはスタッフの人手も取られるので、実施に踏み切れないという銭湯もある中、大和さんは「銭湯は一度作ると、施設としては固定されますが、こうしたサービスなどのソフト面でさらに喜んでいただけるように、工夫しています」と話す。
サウナを出ればもちろん水風呂。チラーという機械で、冬場は約11度、年間平均15~16度としっかり冷やされてキリッと引き締めてくれる。
小さな箱のような作りになっているため「閉じ込め感」が心地いい。
押し入れや2段ベッドの下の段に寝るときに感じる、「いい狭さ」と「外界との程よい遮断」で陶酔感がブーストされていく。
都会のど真ん中、渋谷で心地よい外気浴を
水風呂から上がったら外気浴。サウナと水風呂は、外気浴のためにあると、豪語するサウナ付きも多い。
大和さんもそれを熟知していらっしゃるようで、こだわりを聞かせてくれた。
「渋谷で外気浴ができるのは珍しいと思います。近所から見えないようにするのには、かなり工夫が必要でしたが、浴室に椅子を並べるのではなく、外気浴をなんとか作りたかったので頑張りました」
渋谷のど真ん中からはやや離れたこの場所は、喧騒からも遠く落ち着いた外気浴が味わえる。ビルや住宅が林立するこの街で、外気を浴びながら外からの視界を遮断するには、大変な工夫を要したはずだ。
そんな苦労に「ととのい」の中で感謝する。
湯上がりはロビーで一休み。ドリンクは定番のものだけでなく、珍しいクラフトサイダーが取り揃えられていて、選ぶだけでも楽しくなる。
リニューアルで大きく変わったことで、古くから来ていた常連さんが離れなかったのか、大和さんに聞いてみた。
「入り口から浴室まで、極力段差を少なくしてバリアフリーを心がけて作りました。そのため、近所の方は以前よりもたくさん来ていただけるようになりましたよ」(大和さん)
また、『改良湯』という特徴的な店名についても聞くと、リニューアルで地元の人が離れたのではないかという心配は無用だということがわかった。
「明治以前の銭湯は、蒸し風呂のような施設でお湯も浴びるようなスタイルだったようです。それが大正時代になって、今の銭湯のスタイルに変わってきました。それが『改良風呂』と呼ばれていたようです。うちもその時代に開業して『改良湯』としました」
つまり、「これがトレンドだ!」と新しさを表現したのが、こちらの始まりだったのだ。
トレンドの先端をいく渋谷で、新しく変化をし続ける『改良湯』、是非体験してもらいたい。
取材・文・撮影=Mr.tsubaking