リニューアルで都内随一の大きな銭湯に
最寄駅は、山手線の鶯谷駅。渋い居酒屋ひしめく北口を出て徒歩3分。2017年にリニューアルされた建物は近代的で、建物の中も清潔感がある。
ビル型の銭湯で、1階から入店し2階が受付と食事処。大浴場は3階に男湯、4階に女湯とそれぞれワンフロアをたっぷり使っている。
この作りには、店主である長沼雄三さんの思いがあった。
「リニューアルする時に、とにかく広い銭湯を目指していました。私は24歳から、上野の『寿湯』という銭湯をやっていて、経営努力が実ってお客さんがたくさん来てくれるようになったんですが、施設自体のキャパシティの限界を迎えてしまって、混んでいるから帰ってしまわれるお客様もいて悔しい思いがあったんです」
浴室に入ると、そんな長沼さんの思いがひしひしと感じられる。まず、メインの浴槽は20人は入れるほどの広さ。マッサージ風呂や電気風呂を備えていながらこれだけの広さを持つ銭湯は、都内でも随一。
隣には、熱めの43度に設定された薬湯があり、こちらも10人ほどが入れるビッグサイズになっている。
都内の人気銭湯では、週末には洗い場が全て埋まってしまう状況が発生することもしばしば。しかし、『萩の湯』は洗い場が37席も設置されていて、「洗い場行列」が発生することもないという。
しばらく居ると、ここが公衆浴場として登録された銭湯ではなく、スーパー銭湯なのではないかという気さえしてくるほど、とにかく広い。
また、多く人が入浴すれば汚れたり散らかったりするのが普通だが、長沼さんにはここにも一つのこだわりがあった。
「清掃は徹底的にやります。まず朝は10人くらいの大人数をかけています。さらに、巡回も徹底して『何時に来ても開店と同じ状態に』を心がけています。人の手も目も人件費もかかりますが、そこは抜けません」
おかげで、射し込む陽光がキラキラと輝く綺麗な状態がいつも保たれていて、全身を預ける私たちも安心して入ることができる。
炭酸泉で水質の良さを堪能しよう!
人気の炭酸泉も広い。壁面には海から富士山を望む壁絵。さらに、入浴した目線の近くには、都内のいくつもの銭湯を、イラストと文章で紹介する掲示物が。37度ほどの人肌なので、ゆったり長めの時間入って居ることの多い炭酸泉でも、飽きさせない心配りがグッとくる。
『萩の湯』で使われて居るのは井戸水で、長沼さんによると「この辺りの土地は地盤が固くてしっかり浄化されるので、いい水が出ます。ここから100mくらい先に、『笹乃雪』という有名なお豆腐屋さんがあったんですよ、そこでも同じ水脈の水を使ってお豆腐をつくっていました。そのくらいいい水です」とのこと。
ゆっくり浸かって、その水質をじっくりと体感してほしい。
筆者の個人的オススメは露天風呂。例によって、都内ではなかなか見られないほど余裕のある広さだが、夏は36度で冬が40度(季節によって変化)という低めの設定も好みだ。
実はこの設定にできるのも、広さのおかげだという。「湯温が低いと、お客様がゆっくり入られるので、回転が悪くなるという経営上のデメリットはあります。そうした意味で、都内の銭湯では露天風呂の湯温を高めにしているところもあるようですが、うちはそれも含めて、大きな露天風呂にしたので、ぬるくてゆっくり入っていただけます」(長沼さん)
また、浴槽内の一部に小さな子供向けに浅めに作られた部分もあり、小さな子供がいなければ、サウナ後の外気浴に腰から下だけ入るのもオススメだ。
サウナの狙い目は早朝!?
30人ほど収容可能なサウナはまさに、銭湯のレベルを超えている。3段あるスタジアム型で下段と上段では温度が10度近く違うので、好みやコンディションによって座る位置を変えられるのもいい。
筆者が感じている魅力の一つは6:00~9:00・11:00~25:00という営業時間。銭湯としては珍しく、早朝営業が毎日あるのだ。「朝活」や「エクストリーム出社」といった言葉で、出勤前の朝の時間を充実させることに注目が向けられているが、平日の朝にちょっと早起きをして、『萩の湯』のサウナを一発決めてから、仕事に入ると頭もキレッキレで作業がものすごく捗る。
しかも、平日早朝は人も多くないので、『萩の湯』の広さと大きさをこの上なく体感できる時間帯だと言えるだろう。
湯上がりのお楽しみとも言える食事処も広い。
「私自身も、スーパー銭湯が好きで家族と行くことが多いんですが、お風呂と食事がひとつの施設でできるのがとてもありがたいなと思っていたので、単なる休憩スペースではなく食事処をつくりました」と長沼さん。
食事メニューも和洋中と揃っていて、全国各地のローカルなサイダーや、クラフトビールの品揃えもよく、乾いた喉を潤すバリエーションも豊富で、選ぶだけでもワクワクできる。
コロナ前は、この広い場所を使って「夏の怪談話ナイト」やスポーツの講演会も開催されていた。人が集まるコミュニティとしての機能もしっかり備えられている。
「あぁ、銭湯行きたいなぁ」が、いつの間にか「『萩の湯』行きたいなぁ」になっていること間違いなしの、満足を得られる大きな銭湯、休日だけではなく平日も含めたお出かけプランに加えてみてはいかがだろう。
取材・文・撮影=Mr.tsubaking