まるでショットバーのような店内
店内に一歩入ると、そこはショットバーのよう。木や黒を基調にし、ラックにはウィスキーが並べられていてとてもラーメン屋には思えない。鼻孔をくすぐるのは、スープではなくスモークの豊かな香り。
メニューを見てもラーメンのほか、一品料理が並ぶ。2種類あるライティングボードのひとつもおすすめの一品料理で、ラーメンのライティングボードのほうが小さい。
ちょっと気が引けたが、メニューに初めての方はこちらがおすすめとあった「くんそば醤油」800円と「くんたま」150円を注文した。
店主の住田敬介さんは「ラーメンだけを食べる人もいますし、お酒とつまみを頼む方、締めにラーメンを食べる方と、いろいろなお客様がいます」と話してくれた。
くどくない優しいスモーキーさがたまらない
運ばれた丼からはまず燻製の香りが漂う。かえしは燻製した醤油とオリーブオイルなどを使用。スープを一口飲んでみると、スモーキーな風味が口いっぱいに広がる。麺は中細ストレート麺で、するっとしてのど越しがよく、燻香のあるスープの旨さを麺が増幅してくれる。
脂の甘みと肉の旨みが強い肩ロースのチャーシューや、シャキッと歯ざわりがいいメンマももちろん燻製。素材の旨みにプラスした薫香がたまらない。くんたまは、熱の通り加減を調整して2日間かけてスモークするという。豊かな香りが染み込んだ白身と、トロリと濃厚な黄身は絶品だ。
かつて、燻製をウリにしたラーメン屋に行ったことがあるが、そのときは燻製の香りが強すぎて、後半には飽きてしまった。ここでは、そんな印象が払拭できた。決して燻製が弱いわけなく、ほどよい香りが後を引き、麺やスープ、トッピングが一体となった味も素晴らしい。
卓上にはスモークしたオリーブオイルとコショウなどが用意されている。途中で加えることによって、さらに燻製の香りが強くなり、どんどんと箸が進んでしまう。
燻製とベストマッチのウィスキーもぜひ楽しみたい
店の奥には大きな燻製機がある。スタッフの山本国幸さんは「今日はチャーシュー、明日には卵など、曜日によって毎日何かを燻製にしています。チップは、調味料は桜、豚や鶏はホワイトオークというように燻製するものによって変えています」と話してくれた。
ウィスキーについて住田さんに聞いてみたところ「燻製とウィスキーは相性がよく、私が好きだったこともあって当初2種類ほど提供をしていました。しかし、お客様からの要望でどんどん増えていき今では400種類ほどあります。今ではウィスキーを楽しむ人が多いため、お客様の滞在時間が長く、席に着くまで時間がかかることがあるので、来店前に一度ご連絡をいただければと思います」。
燻製づくしの新しいラーメン。醤油のトッピングは肩ロースだったが、塩にはベーコン、味噌には鶏ももと、スープによって異なり、週替わりのラーメンも登場する。スモーキーなラーメンと、樽で熟成されたウィスキーの組み合わせは思った以上のよく合う。燻製の一品料理も気になるし、さまざまなウィスキーと楽しんでみたい。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン