ビュッフェか単品か。お腹の空き具合に合わせて選べるランチ
目黒駅近辺は本格的なアジアの料理が食べられる店がいくつもある。権之助坂途中にある『バンコクオリエンタル』もそのひとつだ。
コンビニの脇にある階段を上がると、そこに鎮座するのは亀に乗った神様だ。やや険しい表情の神様に、小銭を置く人が後を絶たないようだ。
『バンコクオリエンタル』は1380円のランチビュッフェが人気。グリーンカレーやガパオ、カウマンガイ、生春巻きなどの日本人にもお馴染みの料理にサラダやデザートやフルーツも合わせて20種類程度が食べられる。
しかし意気込んでビュッフェを食べるほどは、お腹が空いていないという人のために単品のランチメニューが用意されている。880円から910円という手頃な値段で、トムヤムクンラーメン、ガパオライス、パッタイなどが食べられるのはありがたい。
単品メニューでもビュッフェでも、日本のタイ料理好きにいちばん人気はグリーンカレーだ。
香りのいいカレーソースの中には鶏肉やシャキシャキ食感のタケノコがたっぷり。彩りの赤パプリカとスイートバジルの葉が映えるカレーソースはピリッと辛く、ココナッツミルクのまろやかさは軽くアシストしている程度。日本人に合わせて辛さは少し控えめだと店長を務めるワンナさんはいうが、辛いものを食べたという満足感が充分にあり、繰り返し食べたくなる。
国内で栽培されているフレッシュハーブを使用
『バンコクオリエンタル』で出しているのは、バンコクで食べられている料理がメイン。しかしタイは日本の約1.4倍もの面積を持ち、南北にも東西にも広い。『バンコクオリエンタル』でも東北部や北部の料理も提供している。だから、とてもメニューが多い。
しかも店のオーナーは、タイ食材のスーパーも経営しているタイ人。そのため、日本ではあまり見かけないようなさまざまな食材が手に入りやすいという。中でもタイの味を提供するために欠かせないのはハーブ類だ。
バジルやレモングラス、こぶみかんの葉、唐辛子などを千葉や茨城で生産している農家から仕入れている。中にはタイ人が栽培している農家もあるとのこと。おかげで1年中、冷凍ではなく生のハーブを使っている。
鶏肉のバジル炒めとも言われるガパオなど、炒め物にはホーリーバジルが使われる。それ以外にはスイートバジルが使われることが多く、グリーンカレーに入っているのもスイートバジルだ。
「鶏肉のバジル炒めをスイートバジルで作ると、ガパオとは呼びません」とワンナさん。そんな違いがあったとは。スイートバジルを使った鶏肉のバジル炒めはたまにビュッフェに並ぶこともあるので店を訪れたらチェックしたい。
日本では珍しい食材とタイらしいインテリアが外国人にも人気
目黒近辺にはタイ大使館やインドネシアの教育機関のほか、グローバル企業の日本支社も多い。訪れる人の80%は日本人だというが、タイ大使館のスタッフや、近隣の企業に勤める外国人や、週末も外国人客が家族やグループでちらほら訪れるという。
「日本にあまりないアヒルを使った料理があります。丸焼きやバジル炒めもあります。アヒルの料理はタイ人と中国人に人気です。インドネシア人やフィリピン人は魚料理が好きですね」とワンナさん。
一般的なレストランでは見かけない食材を使った料理があるとことが東京に住む外国人の間で知られているようだ。
お店のインテリアに、社長の信条に基づいて様々な縁起の良いものが飾られているのも、タイやアジアが好きな人には見逃せないポイント。店のロゴになっている蓮のモチーフが彫刻やイラストになっていたり、タイで国の動物とされているゾウのモチーフが飾られていたり、また社長の干支がサルとのことで、サルを描いた絵画も飾られている。煌びやかさの中に上品なセンスが光っている。
本格的な味のタイ料理をタイの雰囲気の中でいただける『バンコクオリエンタル』。タイ好きなら一度は訪れたい店だ。
取材・撮影・文=野崎さおり