違いは一目瞭然!丁寧に取った自家製鶏油のきれいなオレンジ色を見よ
ラーメン店ではおなじみの油「鶏油」。作り方は簡単だ。鍋で鶏の皮を焼き、油が湧いてきては取る、湧いてきては取るを繰り返す。単純ではあるものの手間のかかる作業なので、市販の鶏油を使う店も多いというが、この店は店内で手作りする。「すっきりと雑味のない味を出すために、国産の鶏皮を使い、じっくり腰を据えて油を取る」と店主の加藤さんは話す。これまで鶏油は薄い黄色と思っていたが、この店のものは透き通ったきれいなオレンジ色。食材や手の掛け方で、こんなに違いが出るものなんだな〜。
ツヤツヤの油をまとったモチモチ平打ち麺。油そばなのに軽さを感じる一杯
そんなこだわりの鶏油をぜひ堪能したい!との思いから、看板メニューの鶏油汁無しをオーダーすることにした。醤油と塩のどっちにするかでかなり悩んだが、鶏油汁無し醤油をチョイス。
待つこと数分。きれいに盛り付けられた丼が到着した。「油そばでそぼろがのってるのは珍しいなあ」などと考えていたのは一瞬のこと。次の瞬間は、豪快に丼の底から混ぜるべし!混ぜるべし!!すると醤油ベースの返しと鶏油に包まれて麺がつややかに輝き出した。間違いない。これはもう食べ頃だ。ひと口すすると、中太の平打麺がツルツルっと軽やかに口の中に入ってきた。返しの醤油が香ばしく鼻の奥をくすぐる。角がしっかり感じられる主張の強い麺にタレがよく絡む。噛むごとにモチッモチッと反発する麺の弾力もいい。あー、うまいな!この麺。
実のところ、油そばって脂っこいからちょっと苦手……。なのだが、この店の鶏油汁無し醤油は全然OK。鶏から出た風味が豊かでくどさがないし旨みもたっぷり。醤油主体の返しは甘みよりも塩味があり、鶏油との相性が抜群だ。刻みタマネギのシャリッと感や、かいわれ大根のさわやかな辛味もいいアクセントになり、するすると食が進む。
トッピングは鶏むね肉のそぼろと豚バラチャーシュー
豚バラのチャーシューはしっとりで、大きめのサイコロ状のため食べごたえも満点。なんといってもいい脇役なのが鶏むね肉のそぼろだ。麺と混じり合って、全体にプチプチとした歯ごたえと凝縮した旨みをプラスする。そぼろの活躍はこの後もまだまだ続く!
最後は追い飯でおいしさ丸ごと食べちゃおう
プラス50円で追い飯も行ってみよう。ご飯を入れてもらったら、またしても混ぜて混ぜて……。
そぼろとチャーシュー、メンマ、ネギが入ったおいしい混ぜご飯のできあがりだ。油を吸ったご飯と具が絶妙にマッチする。ここでもそぼろの歯ごたえがたまらない。なんとなく店主が食べ切れる量のご飯を入れてくれたような気も。たくさん食べたい!という人は店主に一言伝えてみたらなんとかなるかも……。
週ごとと季節ごと。常に2種の限定メニューが楽しめる
常に2種類の限定メニューを用意する。このときは、週替りの限定メニューが醤油つけ麺、季節替わりがつけSOBAだった。週替りのメニューは月曜から切り替わるのだが、試作に悩んで月曜の朝ギリギリでできあがることもしばしば。「開店当初は出来上がらなくて、月曜休みにしたこともある」とのこと。加藤さんのこだわりの強さを感じる。
定番を食べ慣れたリピーターや常連が多いため、半数以上の客が限定メニューをオーダーするというのも驚きだ。定番のほか、毎週欠かさず限定のためのスープと麺を作り上げるのはかなり大変なのでは?と思うが、加藤さん曰く「本当に面倒で大変。だけど、お客さんが食べてるのをそ〜っと覗き見て、おいしそうだと『勝った!』って感じでね」とニヤリ。
ラーメン屋というより料理屋。海外進出も視野に
加藤さんは、初めて食べたものでも食材や調理方法はすぐ理解できるという。このスープなら麺はこの太さ、油がこれなら塩味はこれくらいと、求める味を表現するのがとても巧みだ。通常ラーメンで使う食材かどうかは関係なく、思い切った発想を限定メニューにアレンジすることも多いため、ワタリガニやムースなどといったラーメンではあまり見かけない味ができあがるが、どれも客からは好評。ラーメン屋というよりも、なんでも作る料理人でありたいと話す。海外での出店も検討中なので、数年先は違う空の下、まだ見ぬ味に挑戦しているかもしれない。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン