店主は世界を跨いで活躍してきた元DJ。レコードを置いて牡蠣の殻を回す!
北品川駅から北品川商店街に出て右に曲がって歩いていくと、「人生で一番おいしい北海道の牡蠣あります。」と大きく書かれた店がある。ここが『北海道海鮮市場 がんがん。』だ。店に入ると店主の三上徹朗さんが大きな笑顔で迎えてくれた。
もともとはDJとして世界各国のクラブで活躍してきた三上さん。知人から飲食店をやってみないかと声を掛けられたのをきっかけに2016年、フランチャイズの牡蠣専門店『カキ小屋 厚岸水産』としてスタートしたそうだ。「魚の名前なんて全く知らないので、当時は築地市場に通ってイチから勉強しました」。
そして2年後に転機が訪れた。それは北海道出身の奥さんと里帰りをしたときのこと。地元の魚介類のおいしさに驚き、魅せられた三上さんは、北海道の魚介類を中心に展開する独自の店舗『北海道海鮮市場 がんがん。』をオープンした。
「店のコンセプトは、『道民が“美味い!”と唸る海鮮料理と日本酒の店』です。いちばんの売りは牡蠣で、豊洲から直送する新鮮な魚介類だったり、独自に市場などで買い付けしたり。もちろん北海道の漁師から直送されるものもあります。それから利き酒師の資格も取ったので酒と料理のマリアージュをご提案しています。お気軽にお問い合わせくださいね」と三上さんは笑顔で答えてくれた。
ウニ、イクラに本マグロ、贅沢三昧の新・海鮮丼 最高!
最近、新鮮でおいしい魚介類に飢えている筆者。今日のランチは新・海鮮丼だ。価格は上、特上、最高の3段階があり、トッピングによって値段が変わる。せっかくだから今日は新・海鮮丼 最高1800円を奮発しちゃおう!
2022年夏にリニューアルした海鮮丼。魚の美味い土地へ行っては海鮮丼を食べて来た三上さんだったが、「どこで食べてもだいたい同じだな」と感じており、この店独自の海鮮丼を生み出したいと考えていた。そこで、ひと口でいろんな魚介類が味わえる丼はどうかとひらめき、半年間かけて開発したのがこの新・海鮮丼。
「味や素材はもちろんのこと、青いお皿にもこだわりました。青は食欲が減退する、なんて言われていたりもしますが、海をイメージする色でもありますし、うちの海鮮丼に映えると思って、兵庫県の杉山陶房にある窯元・涓々窯(けんけんよう)の食器を使っています」と三上さん。
茶めしの上にカニをちらし、本マグロ、北海道産白身魚、数の子、ミル貝、ツブ貝、など10種ほどの魚介類を混ぜたものを釣鐘型にこんもりと盛りつける。さらにその山肌にイクラが流れ落ち、頂きには北海道産ウニが澄まし顔で鎮座。
芸術的に盛り付けて、ついに完成。さあさあ、お楽しみの時間です。海鮮丼にはお吸い物とガリ、岐阜県産の少し甘みのあるだし醤油が付いてくる。
「“醤油をかけなくてもおいしい海鮮丼”というコンセプトでメニュー開発しました。でも、お好みでわさび醤油をかけて召し上がってもおいしくいただけますよ」と三上さんが食べ方をレクチャーしてくれた。
「まずはそのままで少し食べてみてくださいね。素材本来のおいしさがわかると思うので。そのあとご飯、魚介類、ガリもすべて混ぜて、お好みでわさび醤油をかけてもいいです」。
三上さんのアドバイスを受け、まずひと口。ねっとりした本マグロのトロ、シコシコとした歯応えの白身魚、プチプチの数の子。いろんな魚の味がするし食感も面白い! ネギやキュウリの薬味も風味アップに一役買っている。全部混ぜると茶飯と具材がよくなじんでまた違った味わいになる。
ランチ時も牡蠣と楽しめる日本酒とのマリアージュ
お客さんのすすめで日本酒にハマり、利き酒師の資格まで取得してしまった三上さん。ランチ時にも生牡蠣とお酒の提供ができるので時間とお金に余裕があるなら、自慢の日本酒とともに試してみたいものだ。
「平日のランチにいらっしゃるお客様はサラリーマンの方や、近所に住む奥さまたちが多いですかね。お仕事があるときはお酒まで楽しむのは難しいと思うので、ディナーにいらしてゆっくり召し上がっていただきたいです」と終始親切に対応してくださった三上さん。
三上さんいわく「お客様がうちで食べたり飲んだりすることで、活力を与えられる存在になりたい」という。その言葉通り、「なんか元気ないから『がんがん。』へご飯を食べに行こうか〜?」、そんな会話が北品川界隈で聞こえていそうだ。次はがんがん焼きをぜひ食べたいっすね〜!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢