オープンから10年を超え、働く人や学生、地元で暮らす人々に愛されるラーメン店
2011年にオープンした『肉汁らーめん 公』は、大通りの交差点にあり、黄色い看板がひときわ目立つ。方向音痴の筆者でも遠くから店を確認でき、安心して向かうことができた。店に着いたのはランチタイムが落ち着いた15時ごろだったが、パラリパラリとお客さんが入ってくる。そんななか、店長の常信智睦さんが話を聞かせてくれた。
関西出身の常信さんは、大学進学と同時に上京。学生時代はずっと飲食店でバイトしており、卒業後も飲食の仕事がしたいと、『肉汁らーめん 公』を運営する現在の会社に入った。さまざまな業態での勤務経験があったが、ラーメン店は初めてだったため、入社後は当時の店長や先輩にラーメンの仕込みをイチから教えてもらったという。
「そんな僕も経験を積んで2017年、店長に就任しました。この店のコンセプトは『お腹いっぱい食べられる』。店内のメニューはすべて野菜・ニンニク・アブラ増し、濃いめなど好みに応じてたくさん召し上がっていただけますよ」。
平日はサラリーマンや学生、土日はファミリー客がほとんど。品川駅前とは違い飲食店はまばらだ。「京急本線の新馬場駅とりんかい線の天王洲アイル駅の真ん中くらいにあるので、ランチタイムを逃したサラリーマンがよくいらっしゃるんですよ。モリモリのラーメンなのですが、けっこう女性のお客様も多いんです!」。通し営業のため、遅めでもランチが食べられる救世主としても地元ではありがたがられているようだ。
まかないでも大人気! こっくりとした旨味と香りのバランスがいい特製中華そば
店内にあるメニュー写真を見ながら今日はどれにしようかと考える。定番のらーめんや味噌らーめんを選び「全マシで!」と言ってみたいが食べ切れる自信はないし、ラーメンではなくカレーも食べてみたいあまのじゃくな心もムクムクと湧いてきた。いかん、いかん!
ええと……、常信さんは個人的にどのメニューが好きですか?
「僕はもちろん全部好きですよ(笑)。うちの店はヘビー系の印象が強いですが、特製中華そばはあっさりめなのでバイトの子たちに人気なんですよ。トンコツと鶏がベースのスープに、魚粉を加えているので旨味があり風味がよくてうまいですよ!」とおすすめしてくれた。どれにしようか迷った時、「まかないで人気」という意見はかなり頼りになる。「迷わず行けよ、行けばわかるさ」と筆者の中のアントニオ猪木も拳を突き上げている。よし、今日は特製中華そばにしよう!
準備をしている間店内を見回すと、製麺室を発見した。自家製麺ですか。ほほう、これは楽しみ!
「うちのメニューは太麺が基本で、つけ麺と焼きラーメン以外は太麺から細麺に変更が可能です。特製中華そばだけは細麺がデフォルトです」と常信さん。
そして、特別に熱気を帯びた厨房に入れていただいた。
ほどなくして特製中華そば1100円がテーブルに届けられた。丼から立ち上る蒸気が「早く食べろ」と発破をかけてくるが、筆者にはおいしさを伝える責任がある。特製中華そばどの、しばし待たれぇい!
では、いただきまーす。豚の旨味がたっぷりで濃厚な醤油のスープだが、鶏油のコクや揚げネギ&生の長ネギの香りも加わり後味はまろやか。ストレートの細麺がするすると喉越しよく吸い込まれていく。
中華そばはシンプルなので物足りなさを感じることもあるが、1cmはありそうなぶ厚いチャーシューや、半熟の味玉もボリュームがあり満足度も合格点だ。
お肉好き食いしん坊たちが熱視線。チャーシュー1本分を乗せた爆盛りメニューも!
『肉汁らーめん 公』には、攻めたメニューもある。お肉好きの食いしん坊たちに注目されネットでも話題にのぼっているのはらーめん豚一本1600円。サイズは中と大があり、がっつり食べたい時は冒頭でも触れたように野菜やニンニクなどを増して爆盛りにもできる。
「以前、チャーシューを6枚乗せたメニューがあったんですが、お客様の『もっと食べたい!』という声から豚一本を開発しました。肉屋さんから仕入れる時に、ネットに包まれて届くので、それを1本ラーメンやカレーに乗せちゃおう、と(笑)。だいたい1本400gはありますよ。僕はちょっと食べ切れる自信はないです(笑)」と言いながら、常信さんはまな板にチャーシューを乗せてくれた。
これは大きい! ただでさえ1枚のチャーシューがひと口では収まらない厚切りだから、食べ応えは十分だ。テイクアウトして家族や友人とシェアしたら盛り上がるかも。
もうひとつの独特なメニューは焼きラーメン中930円。いわゆる汁なしラーメンだ。こちらもらーめんと同じように無料トッピングが可能だ。
「茹でた太麺を鉄板の上で焼くのですが、スープやかえし、具材もらーめんと同じものを使用しています。これも人気がありますよ」と、常信さんが店内のPOPを指差す。
これまた珍しいメニュー。スープやかえしなど汁ありラーメンと同じものを使用して作るので、焼きそばのような感覚で食べられるそう。
ちなみに店内のすべてのメニューはテイクアウトが可能。使い捨て容器もあるが、「自宅からお鍋を持ってくれば、持ち帰り用に調理しますよ! おうちでもラーメンを楽しんでください!」と常信さんは語る。
次は特製らーめんに野菜とニンニク増しにしてみようかなー? なんて考えている。ああでも、こうでもと自分的100点の味覚に合わせることができるのは実験のようで楽しい。常連の気持ちがちょっとわかった気がした。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢