中国茶専門店の先駆けとしてオープン

表参道駅から歩くこと約3分、スタイリッシュなロゴがあしらわれた真っ白な建物が目に留まる。ここ数年、日本では中国茶や台湾茶の人気が加速しているが、ここ『YouCha』は、日本の中国茶専門店の先駆けとして1997年にオープンした。

中国茶専門店、しかも歴史がある店だと「知識のある人だけが入れる店」といったイメージが先行してしまうが、カウンタースタイルの店内では、一人一人に寄り添って知識豊富なスタッフが茶葉の種類や楽しみ方を丁寧に教えてくれる。

つまり、お茶を普段飲まない、初心者でも大歓迎ということだ。

オーナーの藤井さん。中国茶と出合ったときに、思わず「ほとんどの日本人がこの魅力を知らないなんて損だ!」という気持ちが働いたという。
オーナーの藤井さん。中国茶と出合ったときに、思わず「ほとんどの日本人がこの魅力を知らないなんて損だ!」という気持ちが働いたという。

店をオープンしたのはオーナーの藤井真紀子さん。藤井さんが中国茶と出合ったのは、香港や北京で10年ほど生活していた期間。とある中国茶を飲んだ際の、味わいや香り、そして追って知ることになる歴史の深さに衝撃を受けたという。そこから「中国茶の世界をもっと知りたい」という知識欲が駆り立てられ、それと同時に自分が惹かれた中国茶を「日本人にも知ってもらいたい」と思い、帰国後に『YouCha』をオープンした。

しかし、当時の日本では中国茶の存在はまだまだマニアック。さらに、お茶に対する扱いも中国とは大きなギャップがあった。

「中国ではお茶に対してしっかりとお金を払う文化が根付いていましたが、当時の日本では、お茶はオフィスやサービスエリアの給茶機などで“無料で飲めるもの”というイメージの方が大きかったように思います。そんな中で、お値段のはる茶葉を売るのはすごく勇気がいりました」

オープン当時は文化や意識の違いに苦労しながらも、「どうやったらお茶の価値がわかってもらえるだろう」と試行錯誤を重ね、茶葉の販売やお茶の教室などを通して少しずつお茶の価値や魅力を伝えていった。そうした藤井さんの積み重ねや時代の変化とともに、近年では日本でも「良いお茶にお金をかけて生活を豊かにする」という概念は広まりつつある。

店に来るお客も、最初はいわゆる年配の人や“通”がほとんどだったが、最近では若い人やお茶初心者の人たちがふらりと立ち寄ってくれることも増えたそうだ。

約70種類の茶葉からお気に入りを見つける

藤井さんは中国茶について「ハードルが高く感じてしまう方も多いですが、実は中国茶ほどラフに淹れられるお茶はないんですよ」とニコリ。「もちろんおいしい淹れ方のポイントはありますが、どのように淹れても中国茶にはそれぞれのおいしさがあるんです。個人の好みは幅広いので、色々と試してみてその方にあった淹れ方を見つけてほしい」とも。

茶葉からお茶を淹れるときは、どうしても「正しい淹れ方をしないとおいしくないのではないか」「お作法があるのではないか」と心配してしまうが、藤井さんのお話を聞いていると「今日からはじめられるかも」と気持ちが軽やかになってくる。

中国茶の茶葉は形も色合いもさまざま。眺めているだけでも面白い。
中国茶の茶葉は形も色合いもさまざま。眺めているだけでも面白い。

『YouCha』の店内では、烏龍茶や花茶、プーアール茶など、常時60~70種類ほどの茶葉を販売している。その中から、それぞれの茶葉の名前や特徴が書かれた手元のリーフレットを読みつつ、スタッフのアドバイスをもとに自分にぴったりの茶葉を選んでいく。

スタッフに相談するときは、中国茶に限らず、今まで自分が飲んできたお茶を基準に「渋味があるものよりも甘みがある方が好き」といった味わいの好みや「オフィスで毎日飲みたい」「休日に週一回だけゆっくりと飲みたい」など、お茶を飲む頻度やシチュエーションを伝えることで、それに適した茶葉を提案してくれる。お茶の経験が少ない人でも、頼もしいスタッフに相談すればきっとお気に入りが見つかるだろう。

また、最近ではオンラインショップを事前にチェックして、店で茶葉を“指名買い”する人も多いのだとか。

蓋碗(がいわん)、茶海(ちゃかい)、飲杯(いんはい)が中国茶を楽しむための基本セット。
蓋碗(がいわん)、茶海(ちゃかい)、飲杯(いんはい)が中国茶を楽しむための基本セット。
コロンとしたフォルムが愛らしい茶壷(ちゃふう)は各7700円。茶葉ごとに使い分ける人が多い。
コロンとしたフォルムが愛らしい茶壷(ちゃふう)は各7700円。茶葉ごとに使い分ける人が多い。

そして中国茶を本格的に楽しむなら、まず揃えたいのが茶器。『YouCha』では、茶葉だけではなく現地で買い付けたこだわりの茶器も種類豊富に取りそろえている。中でも職人によって手作りされたこだわりの茶器は、価格は少々高めだがお茶の時間を彩ってくれること間違いなし。

難しいことは考えず、まずは見た目の好みから入ってみるのもいいかもしれない。

実はカウンター奥の階段が茶器のコーナーに。ゆっくりと眺めてお気に入りの茶器を見つけてみよう。
実はカウンター奥の階段が茶器のコーナーに。ゆっくりと眺めてお気に入りの茶器を見つけてみよう。

中国茶を日常に取り入れる。ギフトにもおすすめのチャトル

お湯を注ぐと、華やかな香りとともに茶葉が徐々に開いていく様が美しい。
お湯を注ぐと、華やかな香りとともに茶葉が徐々に開いていく様が美しい。

「もっとカジュアルに中国茶を楽しみたい」という人には、『YouCha』のロングセラー商品であるChattle®(チャトル)がおすすめだ。チャトルは、創業当時に開発されて以来、改良を重ねて進化を続けるボトルタイプの茶器。ボトルに茶葉と熱々のお湯を注ぐだけで中国茶が気軽に楽しめる、忙しい現代人にぴったりのアイテムだ。

そして一煎目を飲み切ってしまっても、熱湯を継ぎ足していけば二煎目、三煎目と長く楽しめるのも魅力。オフィスでもテレワークでも、一日中デスクの傍らで仕事のお供をしてくれる。一煎目以降は味が落ちてしまいそうだが、むしろ中国茶は二煎目以降に味と香りのバランスが整っていくという。そのため、時間の経過とともに味わいの変化が楽しめるというわけだ。

お湯の中で茶葉が開いていく様子を眺めながら、ボトルから立ちのぼるフレッシュなお茶の香りや味わいを堪能する時間は、きっと日常をより豊かにしてくれる。

チャトルは1本2600円。ポーションパックとのセットも(5種入4575円、7種類入5275円)。
チャトルは1本2600円。ポーションパックとのセットも(5種入4575円、7種類入5275円)。

また、チャトルは大切な人やお世話になった人へのギフトにもぴったり。数種類の茶葉が3gの小分けになっているポーションパックとのギフトセットなら、その日からすぐに中国茶を楽しんでもらえる。

自分が中国茶デビューを果たしたら、その楽しさを誰かにおすそ分けしてみるのはいかがだろう。

また、茶葉は「ライフスタイルに合った楽しみ方をしてほしい」という想いから茶筒に入ったもの、手軽に飲めるティーバッグタイプ、伝統的な餅茶など、驚くほど多種多様なスタイルで販売している。「茶葉からじっくりと淹れてみたい」という人から「まずは手軽にはじめたい」という人まで、さまざまなニーズに応えてくれるのがうれしい。

こうした自分の生活に合わせて背伸びすることなく取り入れられるところも、中国茶の大きな魅力だろう。「ハードルが高い」と思われがちな中国茶の世界が、この店に足を運べばきっと身近なものに感じられるはず。

日常に新しいアクセントがほしいと感じている人は、『YouCha』に立ち寄れば新たな発見が見つけられるかもしれない。

住所:東京都渋谷区神宮前5-8-5/営業時間:12:00~18:00/定休日:水(祝日の場合は営業)/アクセス:地下鉄表参道駅から徒歩3分

取材・文・撮影=稲垣恵美