釣り船や屋形船が停泊する「品川浦の船だまり」のほとりに立つ古民家群は、1930年ごろの建築。第二次世界大戦の際にほぼ焼け野原となったこの界隈で、奇跡的に残った一角だ。このうち5棟が昨年、「SHINAGAWA1930」として生まれ変わった

5棟には、日本酒の古酒・熟成酒の専門『いにしえ酒店』、個性的な店長たちが日替わりでメニューを提供する『ソーシャルカフェPORTO(ポルト)』、ママパパたちのための交流とくつろぎのカフェ&コワーキングスペース『Mama Plus(ママプラス)Cafe』、そして建築会社のオフィスが入っている。なんだか意識が高そうだが、どんな属性の人でも入りやすいオープンな雰囲気だ。

お店として利用するだけでなく、随時開かれるイベントに参加してみるのもいい。日本酒セミナーやクラフト教室、ピラティス教室や料理教室など、きっと何かしら気になるイベントがあるはず。また、『ソーシャルカフェPORTO』の2階のフリースペースを借りて、企画を催すこともできる。

クラウドファンディング、内装工事など立ち上げから携わる事務局の山中資久さん。
クラウドファンディング、内装工事など立ち上げから携わる事務局の山中資久さん。

さまざまな関わり方ができる点が、ありきたりな再開発の飲食街とは一味違う。
「食を媒介に、人と人をかき混ぜる空間を実現させたかった」とは、事務局の山中資久(たすく)さん。オープン時は、クラウドファンディングで100人以上から寄付を集め、200人以上が内装工事を手伝った。工事中からの常連さんもいる。今後は、コロナ禍でできなかった全体イベントも企画中とのこと。コミュニティー拠点の本領発揮に期待!

フルリノベーションで天井も外して広々した空間に。壁の漆喰はみんなで塗った。
フルリノベーションで天井も外して広々した空間に。壁の漆喰はみんなで塗った。

SHINAGAWA1930【北品川】

住所:東京都品川区北品川1-21-9,10/アクセス:京急電鉄本線北品川駅から徒歩4分。

いにしえ酒店

琥珀(こはく)色の古酒の世界へ

琥珀色の酒瓶が古民家の雰囲気にマッチ。
琥珀色の酒瓶が古民家の雰囲気にマッチ。

店内には約150種類の古酒・熟成酒が揃う。最古は1968年のもの。
店主の薬師大幸(ひろゆき)さんの「古酒の世界を知ってほしい」との思いから、すべてが有料で試飲可能。一杯200円から4万5000円まで! 2階では、日本酒講座や熟成酒のペアリングイベントも開催。

●16:30~19:30(土・日は11:00~18:00)、月休。

店主の薬師大幸さん。
店主の薬師大幸さん。
初めての人には入門的なお酒を進めてくれる。好みを伝えて飲み比べてみよう。
初めての人には入門的なお酒を進めてくれる。好みを伝えて飲み比べてみよう。

ソーシャルカフェ PORTO

隠れた達人たちの台所

客と店主の距離が近い店内。長椅子もある。
客と店主の距離が近い店内。長椅子もある。

店舗を持たずに活躍する食の達人たちが曜日替わりで営業。木の11:00~15:00は、『タイごはんPHAiROT』。金の11:30~16:00は、『お好み焼き&カフェ 暁月』。土の11:30~16:30は『久芳(くば)焙煎所』&『やさしい発酵食堂』。日(不定期)の11:00~16:00は『PORTOカレー』。ランチを提供する仲間、募集中。物販や壁面を利用した展示も行う。

『久芳焙煎所』のコーヒーと、『やさしい発酵食堂』のランチ。
『久芳焙煎所』のコーヒーと、『やさしい発酵食堂』のランチ。
貸し出し可能な「ポルト図書館」。
貸し出し可能な「ポルト図書館」。

Mama Plus Cafe 品川店

もちろんパパもOK

ママたちの社会参加をサポートする「ママプラス」が運営。子育て中においしいものを食べて息抜きしたい時や、PCを広げたい時に。親子向けイベントも開催。

●10:00~14:30LO・17:00~20:30LO、日・月休。☎03-6712-9395

取材・文=鈴木紗耶香 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2022年7月号より