宮崎の食文化、辛麺を全国区にすべく東京・目黒に進出
辛麺とは九州、宮崎のご当地麺だ。発祥は1980年台後半。宮崎県の中でも延岡市で生まれたといわれている。特に繁華街でお酒を飲んだあとや、飲食店で働く人たちが夜遅い仕事終わりに食べるヘルシーな麺として好まれてきた。
そのため、夜に外出する機会が多い人にはそれなりに知られた存在だった辛麺だが、宮崎県内での知名度が上がったのは東国原英夫氏の知事任期中だった2000年台後半のこと。宮崎の食文化がさまざまなメディアで取り上げられ、辛麺の知名度も一気に上がって、一躍ブームに。郊外にも専門店ができて、家族連れが食事として楽しむようにもなった。
そんな宮崎の辛麺文化を全国区にしたいと東京に進出したのが『辛麺屋 一輪』だ。東京での第1号店、目黒店は2017年にオープンした。
目黒駅西口からほど近い場所にある。鮮やかな赤と白を組み合わせたインテリアは、清潔感がある。店内は壁に向かって座るカウンター形式になっていて、1人、または少人数で食事をするのにも向いている。気負わず入れる雰囲気だ。
ヘルシーで、元気が出るホットな一杯
『辛麺屋 一輪』の辛麺には2つ大きな特徴がある。1つは麺がこんにゃく麺、中華麺、うどんの3種類から選べること。他に例をあまり聞かないこんにゃく麺は、見た目がこんにゃくに似ているだけで、こんにゃく芋から作られているわけではない。
原料はそば粉と小麦。実は盛岡冷麺と同じ麺で、盛岡から仕入れられたものが使われている。そもそも辛麺が誕生したとき、盛岡冷麺をあたたかく食べようという発想から生まれたという説もある。東北のご当地麺が宮崎で予想外の変化を遂げ、新たなご当地麺として発展したようだ。
そしてもうひとつが辛麺の名前の通り、辛さがポイントということ。『辛麺屋 一輪』では、韓国の唐辛子を3種類ブレンドして使っている。レベルは唐辛子なしの0から25、そしてマグマという最高レベルまで。唐辛子の赤い色にインパクトがあるが、お店ではレベル3でキムチと同程度の辛さと説明。唐辛子なしも可能なので、辛いのが苦手な人や子供でも美味しく食べることができる。辛いものが好きな人は、マグマを頼む人も多いそう。
麺にはこんにゃく麺を選び、辛さはレベル5にチャレンジした。他の麺類にはない独特のコシがある麺の食感も楽しい。辛さはもう少しレベルをあげても、おいしく感じるかもしれない。辛い物が好きな人はどんどんレベルアップして、辛さレベル25や最高のマグマに行き着くそうだが、ハマる人の気持ちが想像できる。スープは鶏ガラで取っていて、塩気はしっかりしているが、すっきりしていて食べやすい。
基本の具は、卵、ニラ、合い挽き肉と、どれも元気が出そうな具材ばかり。トッピングが豊富に用意されていて、トマトとチーズ、パクチーが特に人気がある。辛さはもちろん、どの麺を選び、トッピングを何にするか。好みの辛さと麺を見極め、さらにトッピングで味変もできるので、組み合わせはほぼ無限大だ。
残ったスープに、ライスとチーズを入れてチーズリゾットのようにするのも人気の食べ方。目黒店は平日のランチタイムはライスをサービスしていて、しっかりお昼を食べたい人の気持ちにも応えている。
辛さと共に旨味を感じられるようにスープも丁寧に
東京でも宮崎でも女性客が多い。そのいちばん理由はこんにゃく麺。カロリー控え目、さらに食物繊維も多く含んでいて、ヘルシーだから。特に宮崎のお店は繁華街にあり、飲食店で働く女性たちが、遅い時間の夜食として食べに来たり、出前を頼まれたりすることが多いそうだ。深夜を過ぎた時間に、重たい食事は避けたいし、カロリーも気になる。でも仕事後の疲れた体に栄養もちゃんと取りたいというニーズにぴったりなのだろう。
宮崎での立ち上げから『辛麺屋 一輪』の味を作る中別府史郎さんによると「ただ辛さを追求しているだけではありません。鶏ガラをメインにしているスープも丁寧にとっていますし、旨味を感じられるような唐辛子のブレンドを目指しているので、そこを楽しんでもらえたらと思います」と胸を張る。
カップ麺がスーパーやコンビニでも売られるようになって、全国での知名度を上げている辛麺。目黒の『辛麺屋 一輪 目黒店』で、ヘルシーでおいしい宮崎の麺を楽しんでみてはどうだろうか。
取材・撮影・文=野崎さおり