名物は特製の生麺を使ったパスタ料理
下北沢駅から徒歩1分。『CITY COUNTRY CITY』は、下北沢南口商店街に面したビルの4階で営業を行う。店内に足を踏み入れると、奥の座席スペースまで続く大きな窓に目が留まる。その窓に沿うように陳列されているのは販売用の中古レコード。ポップやロックなど、ジャンルごとに並んでいる。座席スペースまで続くそれらは、まるでインテリアの一部のように違和感なく共存していた。
レコードの買い付けを担当するのは平田さん。自身が好きだという70年代のファンクやソウルといった海外のダンスミュージックを中心に、日本のロックやシティポップなど幅広く取り揃える。店内にはお客さんが自由に使用できるレコードプレーヤーも設置しており、気になる一枚があれば視聴することも可能だ。
そんなレコードショップと飲食店が融合したこの店の名物は、特製の生麺を使用したパスタ料理。ペペロンチーノやカルボナーラ、ナポリタンなど王道メニューも多く並ぶ中、平田さんがイチオシするのは明太子パスタだ。
この店の明太子パスタは、よくある明太子ソースをあえただけのものではない。キャベツにトマト、大根おろしと、野菜を合わせた具だくさんな一品である。いただいてみると、もっちりとした食感のパスタに濃厚な明太子ソースがからまり、キャベツやトマトとの相性も抜群。大根おろしが良い仕事をしており、そのさっぱりとした後味がひと口、またひと口とクセになっていく。
フードメニューはそのほかに、チーズケーキやガトーショコラなどスイーツも用意。さらに、バーとして酒やおつまみも揃っているため、休日には昼からビール片手にメロウなひと時を楽しむのもいいだろう。
“音楽好きのたまり場”ができるまで
学生時代からレコードに触れ、DJの経歴も持つなど、レコードには人並みならぬ思い入れがある平田さん。ゆくゆくはレコードに携わる仕事ができたらと思っていた20年近く前、当時DJとして参加していたクラブのパーティーで、後にこの店の経営パートナーとなる曽我部氏と出会った。「以前からサニーデイ・サービスはよく聞いていて、好きなバンドだったんです。だから、あの日パーティーで曽我部さんと会えた時、ファンじゃなくて友達になりたいと思って声を掛けました」と、平田さんは当時を振り返る。
その後、2人は互いに仲を深めていき、2004年に曽我部さんが自身のレーベルを立ち上げたことを機に、一緒に店をオープンしようという話が本格化したのだとか。「自分たちでDIYしながら、この店をつくり上げていって。2006年のオープンから15年以上が経ち、だんだんと壁も変色したり、味が出てきました」。
オープン当初は、お互いの友人が集まれるような店をイメージしていたことから、今のようなカフェ形態の営業ではなかったという。レコードとドリンクのみを扱い、音楽好き達を迎えていたこの店は、時を経て少しずつ営業スタイルを変化させていった。けれども、仲間や音楽好きが集う店という原点は変わらない。
最後に平田さんは、こんな想いを語ってくれた。「この店からどんどん人との繋がりが生まれるような場所でありたいと思います。下北沢はいろんな夢を追える街だと思いますし、これからも若い人たちに気軽に利用してもらえたら」。
憧れだった人と今では一緒に店を経営している平田さんだからこそ、その言葉にはより実態が伴い、響くものがある。この店に通い続けたら何か変わるかもしれない……。そんな期待すら感じるようだった。
『CITY COUNTRY CITY』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英